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第360話 神の願い


 転移の光、それは神が作る次の世界への道標。


 魔法の神はその光を使って、ルークを次の世界へ送り出すことを決めた。


 もうこの世界でルークを手に入れることは困難だと考えて次こそは仲間なんて居ない孤独の中で魔法の神、自らが手を貸すことで愛を育んでいくつもりみたいです。


 しかしまだ転移先の世界は不完全……タイミングが悪い。

 

 今、魔法の神はそんなことを妄想しながら、転移の光を放った。


 ルークとサツキはその光に負けないほどの渾身の一撃を放ったものの、面白いくらいに力は拮抗している。


 神を相手に人間2人が力で押し負けていない。


 その理由は魔法の神の力をいかんなく発揮できる聖域を奪われたこと、そしてそれに等しい力をユウリが2人に送っているから。


「逆にそれだけして、あの子が転移の光で押し負けてないって言うのもおかしいですが……やはりこの世界は魔法の神の力が強いですねぇ……」


 ここまで私はそんな光景を眺めながら、その行く末を見守っていました。


 ずっと今までそうしてきた……そしてようやく決着が着きそうです。


 その時、私の背後から足音が聞こえてきた。

 

「……やはりお前だったか、アイツを唆したのは……」

「あら?海の神……なんのこと?」

「とぼけるなよ。ルーク達の動向を読まれ、山では待ち伏せをされ、ルミナを狙うようにダインスレイブを使ったのはお前だろ愛の女神……!!」

「ふふふ」


 愛の女神は不敵な笑みを浮かべながら下界を見下ろす。


 それはここまでの状況を作り出した黒幕のゲスな笑み――ではなく、まるで恋を手助けするキューピットのようだった。


 魔法の女神にそんな視線を向けている愛の女神を海の神は否定する。


 それでも愛の女神はここまでやってきたことは間違えじゃなかったとこの光景を見て確信していた。


「愛の神が、愛している人を手に入れようと頑張っている子を応援しない訳にはいかないじゃない」

「限度がある。それに魔法の神、あいつは危険だ。ルールを躊躇いなく破る邪神だ」

「危険でも何でも愛に嘘は無いの。……でもまあ当然私は愛を求めている子の味方……あの子ばかりに力を与えるのも違うわね」

「何をする気だ……?」


『愛した人に振り向いて欲しくて、その人を次の世界で愛すると決めた乙女と愛がめぶきそうな2人……どれを選べなんて難しい。

 だから最後は想いに賭けましょう。魔法らしくね』


――


 超越魔法と女神剣のぶつけ合いは力が拮抗していて決着が着かない。


 だけど終わりはある……魔力が切れたら負け。


 ここまでユウリが私に魔力を温存させたのはこういう場面を想定していたのかもしれない。


 まったく……あの子の方が作戦を考えるのが上手いわね。


 だけど自然と劣等感は感じない、それは恐らく友達だから、一緒に戦う仲間が強い方が安心できる。


 魔力量もまた拮抗しているけど大地の魔力を掌握しているこちらの方が有利なはずだ。


 このままを維持すれば勝てる!!


 そんなことを考えていた直後だった――魔導王の魔力が比較的に上昇した。


 まるでどこからともなく誰かが彼女に力を与えたような……突然の出来事に最悪な未来が頭の中を過る。


 突然与えられた力に魔導王は嬉々として叫ぶ。


「ハハハッ!やっぱり最後は私に力を貸してくれるのねぇ……愛の女神ぃ!!」

「愛の女神⁉まさかあのお方が……?」


 まさかの魔導王の協力者を知って驚愕する。


 あの方まで敵だったなんて……ただでさえ力が拮抗していたのに、これで相手の方が1枚上手になった。


 ここままじゃ押し負ける……と思っていたその時、次はサツキの力が上昇する。


「おわぁっ⁉なんだこれ……力が溢れてくる!!」

「魔導王と同じ奴……?愛の女神の力ってこと……?」

「ああ……どうやら、 ……なるほど力と一緒に意思が流れ込んでくる。力比べをしろと……その……ど、どっちの愛が大きいか見せてって……」

「どいつもこいつも見る側なんてずるいわね……!!」


 最後の最後まで誰かに試されるのは納得いかないけど、魔導王だけに力を渡されるよりは遥かにマシだ。


 てかさ……。

 

「愛の力ってなに!?」

「…………………………さぁ」

「なんか、解ってる間だったけど?」


 こんなことを言っている私だけど若干頬が熱かったり……。


 いやいや炎の魔法を使っているせいよきっと……。


 愛の女神は愛する者を助ける。


 あの魔導王が記憶がある過去の私が好きだったから、ずっと力を貸していたのか。


 愛の女神なんだし、私達を裏切ったというよりは神としての役割を果たしていたと考えるべきね。


「くっあの女……!!私にだけ力を寄こせばいいモノを……!!」


 魔導王は怒りの声を上げながら、与えられた力を使って魔法の強化した。


 魔法の勢いが増したけど、サツキもそれに負けず、愛の女神から貰った力を使って私達の合体技を強化する。


 こうなったら先程と同じ結果になる……そう思っていたら、ここでサツキと魔導王の身体に変化が起きる……。


 身体から大量の血が噴き出し、今にも身体が壊れてしまいそうに……。


 それでも2人は力を込めるのを止めない……2人の譲れない想いを感じ取ってしまいやめて欲しいと言えなかった。


 魔導王は過去の私との約束をただ果たしたかっただけ……そのやり方はとても悪い方法だったけれど、純粋な気持ちだったはず、そして千年近い時間を掛けて、人間界へ降臨した。


 だけど私は……申し訳ないけどその想いには応えられない……。


 愛の力が強い方が勝つのなら、今の私……ルーク=バレンタインの答えは――。


「サツキ!わ、………………わわわ私は…………あ、ああなたが好き、理想の人とか、大好きな要素とか正直あまりないけど……この人生を歩むなら貴方と一緒がいい……!!」

「なっルーク……私との約束を果たしてくれないというの……!!」

「過去の記憶は全部消しちゃったけど、口に出した言葉は覚えてる。前の私が過去にあなたと一緒に旅をしたいと言ったこと」

「そうよ……だからこの攻撃で死んで!そして次こそは……」

「その時は、私が天寿を全うした時まで待って欲しい。さすがに恋愛感情まではないけど、いつか約束を私に果たさせて欲しい……だから今はここで諦めて!!」

「なっ……そんな我儘な……!!」

 

 我ながら凄いエゴだけど、魔導王も沢山の人を不幸にしたんだし、少しは我慢して欲しい。


 絶対にいつか、世界を旅する約束は果たすから……!!


「神の焔と神の水……そして愛の女神の力を合わせて……超越魔法八咫鏡発動!!」


 焔と水は形を変えて巨大な鏡を作り出し、魔導王の転移の光を反射する。


「そんな……100年も待つなんて……ああああああああああああっ⁉」

 

 魔導王は転移の光を受けてあっさり姿を消した。


 転移の光というわけだし、多分死んだわけじゃない……。


 おそらくアレは次の世界への道標、私を次の世界へ持って行くことで目的を果たそうとしていたみたいだけど、私は今の仲間と一緒に居たい。


 だってこの世界で大切な人達はこの子達なんだから!!

 

「まあでも、ちょっと待っててよ。必ずその願いも叶えるから……」


 魔導王が消えてしまった空を見上げて、私はサツキの隣で小さく呟いた。

 

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