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第359話 最後の魔法


 魔導王は澱んでいる大地の魔力を使って、魔法の威力を上げていた。


 そんな状況の中、ユウリは私達に魔導王の時間稼ぎを指示していたという。


 彼女の作戦を信じて魔導王との苦しい攻防を続けているとユウリの作戦が始動する。


 その作戦というはこの淀んだ魔力を元に戻すため、近くに居る人達の応援を待っていた。


 私が渡した膨大な魔力を糸電話のように人々に繋いで魔力を供給してもらっていた。


 その糸は世界のどこまでも伸びているようだ。

 

 その魔力はアナ達や元々戦争に参加していた兵士、私の魔法で治癒されたルエリア国民、そしてミツキ達。

 

 大地の魔力が淀んでいた時、ルーフェ師匠がそれを元に戻したことがある。


 ユウリとマツバはそれを応援の魔力を使って再現しようとしていた。


 魔法の神が直接掌握している魔力なので支配を奪うのはとてつもなく大変みたいだけど、徐々に制御はこちらへ傾いてた。

 

 魔力供給をしている人達の中には一度魔導騎士(エーテルナイト)の薬を飲んだ人達なら魔力を扱えるだろう……けれど、負担は大きいはず……。


 ここは私がなんとかして魔導王の気を逸らさせる必要があるね。

 

 そんなことを考えているとまるで見透かしたようにユウリが叫ぶ。

 

「ルークがルーフェ様の魔法を受け継いだのは解ってるけど、私達だってあの方の弟子よ!!」

「これくらいやってやるから、サツキ達は早くそいつを倒せ!!」


 大地の魔力は応援の人たちの魔力で徐々に浄化されていく。


 たった2人に沢山の人達の膨大な量の魔力を流されて、目や口から血を吐きながらも大地に魔力を注いでいた。


「……あの娘の魔法か。せっかく聖域を作ったのに……」

「聖域……そうか、これほどの理不尽な力は淀んだ大地の魔力を使って再現していた。言わば神の所業。それが無くなれば!!」

「舐めるな、この程度の魔法……上書きしてあげるわ!!」


 魔法を魔法で相殺するため、大地へ自身の魔力を注ぐ魔導王。


 魔力を注がれた大地は再び侵食され、徐々に聖域の力を取り戻してしまう。


 ほんの少しだけ押し負けていた。

 

「させないわよっ!」


 魔法を中断させるためにフーリアが単騎で突っ込んでいく。


 それを鬱陶しそうに炎の魔法で散らそうとしているが、フーリアは風で防いだ。


 どうやら聖域の力が少なからず元に戻った影響で魔導王の力が弱くなったみたい。


 今まで軽い魔法で済んでいたからこそ、魔導王はフーリアを同じように防ごうとしていたが、この攻撃だけでは足らず、フーリアの攻撃を受けてしまう。


 風の刃が魔導王の頬を斬る。魔導王から初めて赤い血が流れた。


 その攻撃を受けて魔導王は大地の魔力への干渉をやめて、フーリアへ牙を剥く。


 フーリアから攻撃を受けたのが気に食わなかったのか、近づいてきたフーリアへ向けて特大の炎をぶつけた。


「フーリア!!」

「ルーク……!」


 助けに行こうとしたその時、後方のユウリが私をの名前を叫んだ。


 それによって彼女の方へ視線を向ける。


 ユウリは待って欲しいと目で訴えているようだった。


 するとそこへショナがフーリアへ向かって行く炎を剣で受け止めることで何とか防ぐことが出来た。


 しかしその直後に魔導王は2人を仕留めるために、超魔法を発動する。


 いくら聖域の力を奪い始めたとはいえ、神様が使う超魔法なんて誰も防げない。


 そこへ先程は私の動きを止めたユウリが大きな声を上げて叫ぶ。


「今よルーク、サツキ!!」


 ユウリは魔導王の超魔法を私たちに防げと……いや突破しろと言う。


 聖域なしでも超魔法クラスなら先程まで魔導王が使っていた魔法の比じゃないはず。


 そもそも魔導王は聖域がある状態で超魔法を使っていれば私たちをもっと早くに倒せた。


 すぐにそれをしなかったのは私を躾ける為だったけど、本気で殺しに来たということはもう余裕は無いということ。


 つまりこれをなんとかすれば相手に為す術は無い!!


 分かってはいるけど私たち二人で防げるとも思えない。


 しかし突然、なんの前触れもなく私の魔力が強化された。


 いやこれは……。


 浄化している大地の魔力が私に力を貸してくれている。


 そうか……浄化しているのはルミナの魔力。


 ルミナが私達に力を貸してくれている……!!


「ルーク……!!」


 サツキも同じ力を感じているみたい。それは彼の目を見ればわかる。


「行くよサツキ……!!」

「ああ!!」


 焔の剣と水の剣を構え、さらにルミナの魔力を注いだ。


 それを見た魔導王はフーリア達を特大の炎で焼き尽くそうとしていたのを止め、別の魔法へ切り替える。


「ちっ……仕方がないこのタイミングで使うとどうなるか分からないけど……超()魔法、転移の光!!」


 光の魔法……転移というからワープ系の魔法だと思ったら、とてつもない光で辺り一面を覆うモノだった。


 しかしその光は巨大な魔法陣を描き、横一線へ光の筒のようなものが伸びる。


 サイズはこの街を覆うほどのありえない魔法陣で、おそらく攻撃魔法……のはず、規模が大きすぎて魔法が何なのかイマイチ掴めない。


 フーリアとショナは先程の攻撃で一時動けないし、ユウリとマツバは常に大地へ魔力を注いでいるので加勢できないだろう。


 多分一瞬でも手を抜けばまだ大地の魔力を魔導王に奪われてしまうから……。

 

 二人で止めるしかない!!


「行くぞルーク!水神刀ワダツミ……大海割り!!」

「う、うん……!炎帝刀アマテラス……八咫ノ焔巫女ノ舞!!」


 焔と水が合わさった私とサツキの合体技が魔導王の超越魔法を迎え撃つ。


 私はこの時なんとなく直感していた勝っても負けてもこれがこの戦いの最後の魔法だと……。

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