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第356話 紅蓮の華


 私とショナの攻撃で空を飛ぶ炎の鳥の背中を叩く、この子の身体はほとんどが炎なので、中に入ったとしても炎を浴びないように魔法でカードすれば何とかなる。


 そしてその後は身体を突き抜けて、魔導王よりも高い上空へ行ける。


「ここから落下……魔力的にあの背中に本体がいるよ」

「……剣先を下に向けさせてたのは落下の勢いで落とすため?それくらい普通に言ってよ……」

 

 血のように赤い焔と黄金色に輝く雷が降り注ぐと、魔導王が徐々に地面へ近づいていく。


 魔導王が炎の聖獣を吸収したから馬鹿みたいに巨大になったけど、今の私達なら地面へ落とすのは不可能じゃない。


 そう思っていたら、魔導王は再び羽ばたき始める。


 私達が攻撃を加え続けていてそれを押し返している感じ。


 力は僅かに魔導王の方が上みたい……。


「くっ……このままだと押し返される」

「こんの……もっともっと、雷を身体に纏わせる!!」

「ちょ……筋肉に雷を通す奴だよね?小さな身体にそんな強い雷を流したら……」

「だったら!このままユウリ達が燃やされるのを待つの?私は絶対に嫌!!絶対に……絶対に……あの子も皆も私が救う……ッ!!」


 ショナはとても勇敢で雷が自分を蝕み、想像を絶する痛みを与えて来ても剣の力を解かない。


 それどころか雷を強くする。


 身体が壊れても激痛で苦しくても関係ないと言わんばかりに雷を強める。


 強く……身体の筋肉の隅々まで……心臓が止まってしまうんじゃないかと心配になるほどの雷を身体に宿らせる!!


 するとショナの剣はまるでそれに応えるように赤い光を放つーー。


『この雷に耐えられる精神……これを待っていたぞ!!ショナァァァァァァァアアアアアアア!!!』


 とても元気な男性の声がショナの剣から発せられる。


 本来精霊の声は他人には聞こえないのに、私の方にも聞こえる強力な精霊があの剣には宿っている。


 もしかしたら私のアマテラスよりも凄い精霊かも……。


 ユウリがショナを信じていた理由……それはもしかしたらこの剣の真の力に気づいていたからかもしれない。


 雷がより纏うようになったことでショナは別の心配を口にする。


「これ……このまま落としても平気なの?」


 こんなバカでかい鳥が地面に落下すればただでさえ壊れている街はもう復旧不可能になるだろう。


 私はもうそれしかないと考えていた。


 街を犠牲にして、魔導王を討伐する……それくらいやらないと勝てない相手なのは解っていたから。


 しかしそこで地面から一人の男性の声が響き渡る。

 

「俺が何とかする……お前達はお前達のやりたいことをやれ!!」


 それは紅蓮の言葉だった。


 何とかする……最強の剣士のその一言で私達の迷いは吹き飛んだ。

 

 次の瞬間――ショナが叫ぶことで意識を自分の刀へ向ける。


 今は炎帝刀アマテラスに力を込めて、この鳥を落とすことを考える。


 ショナの赤い雷を纏った刀が激しくバチバチを音を立てた瞬間に合わせる!!


「八咫ノ焔巫女ノ剣!!」

「雷竜滅剣!!」


 赤い焔と赤い雷が同時にとてつもない力を発揮する。


 するとさすがの魔導王もそれに驚き、力強く羽ばたくものの、私達2人のパワーに押される。


「小娘共……こうなったら下に居るお前達の仲間を巻き添えに……」

「そうはさせない」

「お前は……紅蓮……!!」


 紅蓮は落ちてくる魔導王を剣で受け止めて、そのまま街の外まで散らそうとしていた。


 しかしそこで急激に紅蓮の身体から力が抜ける。


「うぐっ……これは……」

「馬鹿め!お前はルークからルミナの魔力を受け取っていない……その魔力は私が受け取った!!」

「……そうかよ。じゃあくれてやる……ただし、俺の炎はお前の魔力を焼き尽くす!!」

「その姿……魔法と剣と融合した……まさか!!」


 紅蓮は赤い鬼の姿へ姿を変え、魔導王の身体を引き裂く勢いで剣への力を込めた。


 魔力は奪われているのに力をずっと入れ続けている。


魔導騎士(エーテルナイト)の最終手段……か!くっ……剣の力と混ざって我が魔力が……。こ、こうなったら聖獣フェニックスを犠牲にして、お前を殺す!!」

「……ふ、願ってもないな……ルーフェ!お前の弟子にあとは託すぞ!!秘儀、紅蓮華(ぐれんか)不倶戴天!!」

「忌々しい……フェニックスフレイム!!」

 

 ドォーンッ!!


 2人の炎はぶつかり合い、魔導王は地面に落ちて炎の身体が散る。


 魔導王を落とすことは出来たけど、紅蓮の姿が無い……。


 なんとなく解っていたけど、こうするしかあの状況を打開できなかった。


 紅蓮の死を悼む暇は残念ながらない……。


 すると背後からサツキ達の魔力を感じた。


 振り返ると地面がプクリと膨れ上がり、そこから水の膜に覆わられたサツキ達が出てきた。


 炎に呑まれた後、水の膜に覆われる事で焼けてしまうのを防いだのね。


 だけどサツキ1人ではあの炎を防ぐのは難しかったのか、ユウリの魔力を借りて強度を上げていた。


 ショナは無事だった皆の方へ駆け寄っていく。


「大丈夫!?」

「魔力……ちょっと寿命を使っちゃったかも……」

「えぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!?そんな……」

「多分2年くらい縮んだ」

「うーんー……それくらいなら!あ、でも2年早く死んじゃうんだ……なんか悲しいかも……」

「いや、もしかしたらまだもう少し削るかも」

「え……?」


 ユウリにあまり無茶はさせたくないんだけど、まだ戦いは終わっていない。


 紅蓮が命を賭けてフェニックスから魔導王を剥がしてくれたけど、街の中央には魔導王の魔力が停滞している。


 私とショナの攻撃ですぐには動けないみたい。


 このまま畳みこんで倒せたら楽なんだけど……。


「うっ……」

「ショナ……!!」

「ライリュウの力にまだ慣れてない……」

「というかそれ刀なんだな……」

「サツキは前世の記憶まだあるもんね?この形の剣、そういえばルークとフーリアと一緒だ!!」

「もしかしたら2人と同じ剣が良かったとか?聖剣以上の剣は持つものに相応しい形に変化する」


 フーリアの刀も私に影響されたものなら、ショナの剣も同じように変化したのも頷ける。


 そんな話をしながら、私はショナを治癒の魔法で癒していた。


 そして……魔導王もまた動き始める。


 多分これが最後の戦いになる……ルミナや散っていった人達のために負けられない!!

 

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