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第354話 ユウリの号令


 炎の不死鳥、最後の聖獣であり、私のご先祖様が食べたという力を持つ……その炎は癒しと燃やす。


 対象を癒す、燃やすを選べる特殊な炎をあつかうことができる。

 

 聖獣は死んだら私の転生と同時に復活するんだっけ……。


 先祖が食べた後に私が転生して、食べられた聖獣もこの世界に戻ってきた。


 どうやらそれを捕まえて、ずっと魔王教団が保有していたみたい……魔王教団が保有していると言っていたのはこの子だったんだ……。


 魔導王はその捕獲しておいたフェニックスと同化した。


 私とルミナの同化みたいに聖獣の身体を手に入れてしまう……あの力、人間の私を遥かに超えるモノを与えてくれたんだよね。


 てことは魔導王はそれだけの力を得た……真っ黒な超巨大な炎の鳥は空を覆い、太陽の光を遮る。


 炎が黒いせいで明くない。


 私達の真上には炎があるのに、黒いせいで不気味な夜のように足元が良く見えない。


「皆!大丈夫?」

「うぎゃっ⁉」

「ショナ!?」

「ご、ごめん……何も見えなくて転んじゃった」

「そ、そう……」

 

 相変わらず大袈裟だけど……何事も無くてよかった。

 

 それにしても既に夕暮れ時とはいえ、太陽はまだ出ていたはず。


 ここまで暗いのは空を跳ぶ黒い炎を宿し、フェニックスと同化した魔導王のせいだ。


 あと街の街灯などの光が一斉付いていないせいだろう。


 私は視界を少しでも明るくするために、そしてついでに焔で魔導王に攻撃を仕掛ける。


 手に出した焔の灯りで皆の姿がよく見えるけど、それは相手も同じ。


 私の居場所を見つけると魔導王の身体から黒い炎で作られた魔物が現れる。


 街を覆う程、巨大な鳥の身体から何百の魔物が作り出されていた。


「あれは……ダインスレイブ師匠の魔法を応用して作った炎の魔物と一緒……」

 

 放った私の焔の魔法を拡散させて、頭上に落ちてくる魔物だけでも対処する。


 向かってくる魔物は焔と相殺出来たものの、焔が消えてまた真っ暗になってしまう。

 

「焔纏い!!」


 炎を身体に纏う事で身体強化をしつつ、辺りを照らす。


 フーリア達は明るい私の所まで駆け寄ってきて、皆で背中を預け合う。


 空から降ってくる炎の魔物を相手にそれぞれ構えておく。


 炎で出来た魔物はそれほど強くないけれど、あまりに数が多すぎる。


 ただでさえ、今生成されている魔物だけでも多いのに、まだまだ空から降ってきている。


 ずっと私達の頭上を覆っている漆黒の鳥は不敵に笑い声を上げる。


「あはは!!!!!あなた達を殺すのは簡単……だけど、ルーク。あなたには躾が必要なの……もう二度と逆らえないように仲間を一人ずつ殺して絶望させてあげる」

「それ……愛する人にする事かな……?」

「黙れぇ!あの人の記憶が無いお前なんて……私の愛する人じゃないッ!!記憶を代価にしたことを後悔させてやる……絶対、絶対にぃぃぃぃいいいいいい!!」

「い、言ってること違くない……?」

 

 魔導王は平静を装っているモノの、取り乱しているみたい。

 

 怒らせてしまったせいか、炎の魔物の生成量が増えて、若干強めの魔物が3匹ほど放たれた。


 実質大切な人を殺されたようなモノ……その怒りは計り知れない程だろう。


 だけどこっちだけ記憶を代価にしないと死んでいたんだから仕方ないじゃない!!


 迫りくる魔物の大群、何より強めに作られた3匹の魔物が強力で私達は追いこまれてしまう。


「ちょっとどうするのよ!これ!!」

「で、でも頑張れば倒せるよ!」

「こんな奴ら倒すのは簡単よ。問題は数……あの3匹だけならどうにかなるけど、まだまだ増えるでしょ?体力が持たないわ!!」


 今出ている100匹の魔物を倒すのはできる。


 それは同意見だけど、これが200、300と増えていくのなら勝てない。


 というか、100匹でもうきつい……。


 魔力はまだあるけど、ずっと魔法を使い続けていると限界を迎える。


 考え事をしていると頬に液体が滴り落ちる感触に気づく。


 手で拭うと血が付いていて、それが自分のものだとわかる。


 出てきている魔物は炎で出来てるので、血は出てこない。


 これは私の血だ……目から涙ではなくて血が流れていた。


 魔法の使いすぎ……これを長く続けるのは得策じゃないわね。


 炎の魔物よりも上にいる魔導王を倒すことを考えた方が良さそう。


 だけどどうしよう……相手ははるか上空を停滞している。


 炎でブーストして脚力を上げて殴ることはできるかもしれないけど、そこから先は無防備になる。


 一撃で決められるのならそれでいいけど……。


「あの巨体を1発で倒すのは不可能だよ……」


 魔導王のあまりの大きさに私は絶望していた。


 ルエリアの首都エステリアを覆うほどの巨体がずっと頭の上を飛んでいるんだ……仲間が居ても不安だし、怖い。


 だけどもう命を使って(いのち)を燃やすことは出来ない。


 命を使う魔法は人生で一度きり、もうあれに頼れないなんて……横で戦っている仲間達を自己犠牲で守ることすら出来なくなったことで、とてつもない不安に襲われる。


 今まで私には最終手段があったから、冷静で居られた。


 最悪私が命を使えばいいから……だけど今はもうそんな余裕は無い。


 みんなに指示をして、いつも通りに戦うことすら出来ない……!!


 そんな停滞している状況の中、一人の少女が声を上げた!!

 

「それなら私が道を開くッ!!」

「ユウリ何する気だ?」

「植物を操ってあの鳥までの道を作るの、それでルーク達を運び、あの鳥を倒す……ようやく魔力になれたし」

「そんな簡単じゃないし、それにあそこまで届く植物を維持するのは……」

「私の寿命を使う」

「それはダメだ!!」

「それなら手を貸してよマツバ、みんなを運ぶ道を作るの」


 いつものマツバならそんな願いは聞かない。


 しかし、ユウリの力強い眼差しを見て止めることが出来なかった。


 その様子を心配そうにショナは見ている。

 

「ちょちょちょ、そんな無茶な……」

「長く維持しなければ大丈夫よ。だからショナ……手加減してないで本気であの鳥を落としてきてよ」

「本気……?私はいつも全力なんだけど!!」

「違うでしょ、まだその先があるはず……親友のショナにこんなこと言いたくないけど、私も命を賭けるんだから、ショナも賭けて……これが私のあの鳥を落とす作戦」

「それ……作戦じゃな――もーっ!そんな目で見られたら断れないじゃない……ずっと怖かったけど、本気で剣を振ってみる」


 私が焦っている間にユウリはそんな作戦を立てていた。


 作戦はともかく、ユウリは人を動かす言葉を的確に言える……確かに私なんかよりも優秀な子かもしれないわね。


 しかもショナならあの鳥を落とせると信頼しているみたい。


 あの鳥を落とすなんて無茶だけど、ユウリの目なら信用出来る。


「ルークとフーリアとサツキでショナを上まで護衛して!時間が無いからすぐ行くよ、禁忌魔法大樹創造!!」


 ユウリの号令と共に地面からうねる植物が空へ上って行く。


 それに乗って私達は魔導王の所まで駆け登るんだ……!!

 

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