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第353話 不死鳥


 記憶を消して、それで作った魔力を皆に分け与えた。


 全員に私の魔力が行きわたり、魔力が凄まじい程に強化される。


 フーリアとショナのような剣士は身体能力を強化する魔法、魔力付与することで能力を底上げする。


 ちなみにユウリには他よりも沢山の魔力を与えた。

 

 それを見ていた魔導王は悲しそうで……しかしとてつもない怒りを露わにしている。

 

「記憶を消した……?どうして……?」


 涙を流して悲しそうにしているのにどこか怒って居る様子で魔導王はものすごく取り乱していた。


 この人の狙いは前世の人がほとんど立ち入らない神社で前の私が声をかけたのがきっかけらしい。


 そこで祭られていた神様なのに一人に耐えきれず、ここまで私を連れてきた。


 この世界で一緒に旅をするために……もう少し違う形でなら仲間になれたかもしれないけど、1000年近く時間を使ってようやくこの世界に降臨できたんだから、旅は難しそうだよね。


 だからってこの世界の人達を不幸にして、無理やり世界に降臨するなんて許される事じゃない。

 

 それに今の私にこの神様との関係はない。


 覚えていることも、もう一人の私と会話したときのものだけ。


 先程まで急に入ってきた記憶なんかは全部消えた。


 しかしそれが魔導王は気に入らなかったみたい。


「あの人との記憶を消すなんて信じられない!!」

「そう……だけど事実よ。私のこの魔力を見てわかるでしょ?」


 もはや私の今の魔力量は魔導王を超え、その性質も別のモノへ変化していた。


 魔力だけで見ればおそらく別に見えているだろう。

 

 それだけ多くの記憶が宿っていたという事で……この魔導王にも少なからず関係があったはず。


 だけどもうそれはない。


 そんな私を魔導王は憎しみの目を向けて睨みつけている。


 先ほどまでの恋する乙女の表情は消え去り、まるで大切な人を殺されたような復讐の炎を燃やしていた。


 愛する人を奪われた恋人みたいに……。


「いいえ……まだよ、アナタを殺して、魂さえ確保できれば記憶を戻せるはず!!」

「魔力に変換したと言ったでしょ?」

「魔力はそんなに単純なモノじゃない!血には人の記憶が流れている……それは魔力のおかげ……あなたが生きている限り、まだまだ可能性はあるはずよ!!」


 魔導王が叫ぶと目の前に巨大な魔法陣が浮かび上がる。

 

「……魔法!!ユウリ、大樹を操る魔法で手を貸して!」


 私はユウリにそう指示をすると同時に炎の魔法を展開する。


 手のひらに赤い炎の魔法陣が現れる。


 しかしユウリは魔法を使うのを躊躇っていた。


「魔法はそいつに効かない……それに魔法を使うと魔力を奪われるかもしれないの!!」

「大丈夫だよ!ルミナと作った魔力を皆に付与したから」

「ルミナの……?」


 ユウリは拳を握り、自分の身体に巡る魔力を確認する。


 そこにはきっとルミナの気配を感じているはず。


 大切な仲間の魔力を感じて、先ほどまで弱気だったユウリの表情はみるみる明るくなっていく。


 そして一粒の涙を流す。


「ルミナ……あなたの意思を無駄にしないわ。行くわよルーク!大樹の怒り(アースクエイク)!!」


 ユウリは私の指示通り魔法を使ってくれた。


 多くの大樹がウネウネとウネリながら魔導王へ襲い掛かる。


 それを鬱陶しそうに見つめながら、魔導王は「白百合の盾」で防ぐ。

 

 当然それは予想通りで、私はその大樹ごと炎で燃やす。


 「白百合の盾」は水に強いけど、炎には弱い。


 それでも今まで突破できなかったのは私の魔力が足りなかったから、そして魔力が魔導王が作ったものだったから。


 もう既に魔導王の手を離れた新たな魔力は魔導王に致命傷を与えるはずだ。


 それでも倒せるか分からない、だから――


「皆もお願い!!」

「うっ……ごめんルーク、私はもう魔力が……」

「ユウリは魔体症だから仕方ないよ。それよりありがとうね!少し無茶までしてくれて」

「だ、誰かさん……はぁ……よりは……マシ……はぁはぁ…………」

「あはは、過去の記憶を無くした状態だとどうしてあんなことできたのか。謎だけどね……今思えば一人だけ死ぬのって怖いよ」

「その話は後でじっくりしようね……今更遅いから……この戦いが終わったら皆で説教……よ…………」

「ユウリ!!」


 魔体症だからルミナの魔力へ変換する時に過剰に使ってしまったみたい。


 沢山魔力は渡したけど、それらを使いこなすにはもう少し時間が掛かるかもしれない。


 しばらくユウリは動けない、でもユウリならこの寝ている間にこの魔力を自分のモノにできる。


 ユウリは私以上の魔導士だから!!


「行くよ皆!あの炎の中に今出せる全力をぶつけて!!」


「「「おーっ!!!」」」


「俺は斬撃だけにしておくけどな!」


 サツキは水をぶつけるわけにはいかないので斬撃の身、他はそれぞれが最大の技を使い、魔導王へ打ち込む。


 全員使う技の属性も剣と魔法という違いまであって、多種多様だ。


 津波のようなただの斬撃、雷を纏う剣、大自然を操る魔法、何もかも寄せ付けない暴風。

 

 それぞれが得意とする力を使って炎の中に焼かれている魔導王へ渾身の一撃を込めた。


 さらにここから……!!


 「付与魔法、ノヴァインフェルノ!死ぬまで爆裂魔法を受け続けなさい!!」


 炎の中でそれぞれの攻撃を受け、さらに爆裂魔法で常に爆発される。


 これを防ぐことは不可能だろう。


 確か一度、死者蘇生の魔法を使っていたはず、アレは生涯で一度しか使えないからここで何とか仕留められれば全ての片が付く!!


「やることのエグさは記憶が無くなっても変わらないのね……」


 フーリアはどこか遠い目で私の事を見つめていた。

 

 ここまでやれば倒せる――そんな私の期待はすぐに裏切られる。


 私達の全力を注いだ攻撃の中から美しい女性の声が響き渡る。


「小癪な子供達よ……この程度で神を殺せると思うなよ」


 私達の攻撃を掻い潜り、空に一羽の鳥が抜け出した。


 色んな攻撃の中を無傷で通り抜けたのは炎の鳥……。


「まさか聖獣⁉」

「その力をこの魔導王に付与したの!これが魔王教団が持っていた最後の聖獣、喜べ人間共、これが私の最後の一手。この空の頂きに立つ私を破る事が出来ればお前達の勝ちだ!!」

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