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第351話 代価の魔法


 魔導王が魔力の質を変えて、不機嫌そうにしているが、俺達はそんなこと関係なく、攻撃の手を緩めない。


 サツキの津波のような水の斬撃、フーリアの何でも斬り割く風の刃、ショナの触れれば体内にまで侵入し身体の機能を奪う雷、そしてルークのなんでも破壊し癒す焔。


 それらを絶え間なく浴びせ続けた。


 その様子を少し離れてユウリとマツバが見守っている。


「私も皆の助けに……!!」

「ダメだ!魔法の神に魔法は通用しない……。近づけば魔力を消されて死ぬぞ!!」

「だけど皆戦ってるのに……!!」


 2人はこの戦いに参加出来ない事を悔やんでいた。


 もし魔導王の標的にされれば、魔導士は全員魔力を失って死んでしまう。


 さらに魔法では絶対に倒せないというおまけ付き……。


 ()が命を賭けても倒せなかったんだから、命を使う魔体症でも倒しきれないだろう。


 あくまで今の()にはルミナが作って託してくれた魔力があるから戦えているだけ。


 マツバは剣も使えるけど、魔法の方が圧倒的に得意だから、この戦いについていくのは難しいと判断してユウリの側にいる。


 マツバの事だからいざという時は自分がユウリの盾になるつもりだろう。


 ずっとユウリの事を気にかけてここまで付いてきてくれたから、最後の最後まで守るために動いている。


 俺達にできるのは魔導王の敵意をユウリ達へ向けないようにすることだ。


 幸か不幸か、俺の隣にいるサツキとフーリアにターゲットを絞っているので2人が狙われることは無さそうだ。


 ムーンくらいの嫌がらせをしてくるのなら2人を狙ってきそうだけど……怒りで我を忘れているみたい。


「あなたの攻撃だけ受け止めて上げたいのに……無駄な物がばかり飛んでくる…………あぁ、忌々しい忌々しい!!」


「白百合の盾」で防いでいるせいで俺の攻撃を受け止める事が出来ないから怒っているらしい……。


 本当にイカレているというか、今の俺なら魔導王に魔法でダメージを与えられるというのにそれでも受け止めたいみたいだ。


 魔導王いわく、痛みもまた愛らしいが……それは本当に分からないな。

 

 だがそれがお望みならくれてやればいい!!


「皆、一度俺だけで攻撃は任せてくれ」

「……そうね、なんだか受け止めるとか言っているし、今の貴方の実力を見せてよ」

「ああ、任せろフーリア」

「――ッ!う、うん……なんか声低くなっててカッコいい!!」


 なんだかフーリアから可愛らしい声が聞こえてきた。


 まるで恋する乙女のような声に驚きつつも、魔法を展開する。


 爆炎の焔を使って攻撃を仕掛けると魔導王は言っていた通り「白百合の盾」を解いて、受け止めた。


 焔に焼かれて、肌が黒く染まる。


 それを「不死鳥の炎」で癒して、元の綺麗な肌に戻した。


 小さくとも膨大な魔力を込めた焔だったから、それをあっさり治癒されてしまうなんて……思わなかった。


 せめて、数分は時間を稼げたら良かったんだが、やっぱり俺一人では無理か。


 だが、魔導王は俺の攻撃しかまともに受けてくれない。


 おそらくどんな攻撃も通さない「白百合の盾」で他の攻撃は防がれてしまう。


 サツキの水の攻撃は使うわけにはいかないのでそれだけでこっちの火力は大幅に落ちていた。

 

 唯一俺の攻撃を受けてくれるというのにそれだけでは決定打に欠ける。


「クソッ!!」


 思わず出てしまった言葉。


 それを聞いた魔導王は微笑んでいた。


 俺が追い詰められているのがそんなに嬉しいのか……。


 いや、愛だの何だの言われているし、遊ばれているだけかもしれない。


「ちょっと」


 せめてこの油断されている好機に全てを終わらせる。


 最後の敵の隠された力とか、最終形態とはそんなものを見るつもりはない。


 今の油断しきったあの状態の魔導王を倒して終わらせる!


「ちょっとってばっ!!」

「なっ……あ、フーリア。どうした……の?」

「……言葉遣いが男なのか女なのかはっきりしたら?」

「それを言うためにわざわざ?」

「なわけ無いでしょ!!魔力で強化してよ。そろそろ私も暴れたい」

「だけどあいつは俺……私の攻撃しか受けてくれないし」

「……本当に口調が定まらないわね、まるで薬で魔導騎士(エーテルナイト)になった人達みたい」


 そう言われてしまうと確かにそうかもな。


 不自然で違和感だらけだと思っていたそれを今の俺がやっているなんて笑いものだ。


 口調や考え方をどちらかに偏らせる必要は正直ない。


 ただこれを治す方法としては過去の記憶を消すか今の記憶を消すか。


 正直、()は邪魔者だから消えるなら過去の記憶だ……これを消してアイツに勝てるなら俺は消えていい。


 だがそんな事……。

 

『それなら、ありますわ』


 そんなことを考えているとどこからともなくルミナの声が響き渡る。


 辺りを見回してみるがどこにもあの子は居ない……。


 周りに皆も突然俺が振り向いたことで奇異な目で見てくる。


 ルミナの声が聞こえれば皆、同じような反応をするはず……まさか聞こえていないのか?

 

 それもそのはずだ……あの子はもう居ないのだから。


 魔力となって俺の中に……。


 俺の中……まさか本当にルミナ……なのか?


『そうですわ』


 何か方法があるみたいだったけど教えてくれないか……?。


『記憶を代価にするのはどうでしょうか』


 

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