第349話 ルーク?
神を殺すためにルミナは不意を突き刺すことに成功しました。
神を殺せばその創造物であるルミナも死んでしまいますが、これでルークが付きまとわれることは無くなる。
しかし神は倒れることなく、復活してしまった。
人としての身体で死ねば神であろうとも消滅してしまいますが、この世界の人として使える究極の魔法を使用されてしまう。
「死者蘇生の魔法……そんな魔法まで使えたなんて……」
「どうすんのよルミナ!!」
「……あの方を復活させてしまったのは妾……だけどもう妾ではあの方を倒せない」
「はぁ?それじゃあ一緒に戦いなさいよ!!」
「そうしたいが……おそらく、妾はあの方に消される」
「な……じゃあ逃げるとか…………」
「ふふ、妾の事が嫌いな其方がそんな心配をするとは思わなかった」
意外フーリアの心配にルミナは微笑む。
そんなことを言われてフーリアは照れる。
「ちょ……言ってる場合⁉」
意外にもフーリアに仲間だと思われていた事に驚くルミナ。
しかしどこまで逃げても自分を創造した物からは逃げられない。
世界の果てまで行っても女神が消えろと言えばその瞬間、ルミナの存在は消える。
この世界の人々は他の神様の力もあり、消える事はありませんが、完全に魔法の女神の創造物であるルミナは簡単に消せてしまいます。
「残念よルミナ。あなたなら、一年の一度くらいはルークに会わせて上げても良かったのに」
「織姫と彦星みたいですね?」
「ふふ、あれは恋人同士のお話でしょう?あなたはいつそんなに偉くなったのかしら?もうこのままお仲間に別れを言わせる前に消してあげましょうか」
「待って居てくださったのですか?」
「ええ、消す前の親の恩情よ」
「そうですか……それではその温情に甘えさせて頂きます!!」
ルミナはそう言うと身体に焔を纏った。
それを見た女神は驚きの表情を見せる。
それは恐れや怒りではなく、無駄なあがきを見せる愚かな狐に対してのモノでした。
「焔……まさかそれで私を殺す?でも私の作った魔法で私は殺せないわよ」
「よく見てください。この焔……あなたの作った魔力ですか?」
「は……?何を言って……。この気配まさか……ッ!!」
女神はルミナに流れる異様な魔力に気づいた。
自分が創造し、作った魔力とは違う力の混ざった新たな魔力は女神の制御を外れています。
この力があれば女神にすぐに消されることはありません。
しかしルミナはそんなことのためにこの新たな魔力を生み出したわけではありませんでした。
確かにこの焔をぶつけられれば火傷くらいは負わせられる――それしか無理なら、この焔をより大きく強くできるモノに託すせばいい。
そんなことを考えているとも知らない魔導王はその気配に心当たりがあるのか、独り言のようにつぶやく。
「まさか、アイツとアナタで魔力を作れるなんて……」
「これでもあなたの創造物ですので」
「でも魔力は探知できる。その程度の魔力では勝てないと思うけど」
「だから言ったでしょう?妾は自分が消える事はもう覚悟していますわ……!!」
ルミナはそう告げると次の瞬間――焔の塊となり、女神の方へ……は向かって行かず、ルークの下へ流れていく。
ルミナは自分の力だけでは女神を倒せないと判断し、作った魔力で魔法を作る。
自分の記憶や魔力、存在全てを使った蘇生と力の譲渡……。
「まさか……!!」
「この力の名前は妖魔力とでも言っておきましょうか。この力でルークを救う!!」
「やめろぉぉぉぉおおおおお!!せっかく安全に無力化したのにその妖魔力は私じゃ消せない。ルークが目を覚ませば私はまた彼を傷つけなければならないのよ!!」
「じゃあこれは反抗期とでも思ってください。あなたに作られた中身のない存在……それが仲間達によって感情を得た。妾だけの魔法……!!」
「……ッ!!せっかく……せっかく…………!!」
女神は悔しそうに嘆く。
しかし無情にもルミナの焔はルークを包み、妖魔力を与えた。
魔力を一瞬で消されて魔導士のルークは瀕死の状態でしたが、これで目を覚まします。
固く閉ざされ、もう二度と目を覚まさないと思っていた目が開く。
血のように赤いルークの瞳がフーリア達を再び映した。
「「「「「ルーク!!」」」」」
仲間達のその言葉にルークは微笑みを返す。
そして女神へ視線を移す。
その雰囲気や気配にフーリア達はどこか違和感を覚えていた。
「話は聞いてた。色々と想ってくれていたみたいだし、願いを叶えてくれた事には感謝している」
「……ルーク?いいえまさかあなたは……!!」
「眠っている時に記憶を全部思い出した。でも今は消えていった皆のためにお前を倒す!!」
「……どうして記憶が戻ったのに分かってくれないの?私はずっと孤独だった……だけどそこへあなたは私を見てくれる言葉をかけてくれた……だから!!」
「こんな形じゃなければ……もっと普通の人間同士ならありえたかもしれない。けどあんたの愛って奴は、俺の仲間を傷つけすぎたんだよ」
「そう……分かってくれないのね……それじゃあ仕方がない……。あなたを殺して私のモノにするしかない。永遠という長い時間を掛けて思い出させて上げる。私への愛を……!!」
突然そんなことを言われて思い出した記憶を辿っても自分から愛したとは一度も言ってないのは解っていた。
しかしあの時の言葉が大きく広がってしまったのも事実、ルークはその言葉を否定するようにつぶやく。
「そんなものはないけどな……」