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第341話 最後の焔


 遂に恐れていた最悪の敵が復活してしまった。


 私をこの世界に連れて来て、私を手に入れるために、私の身体を模倣したルミナの力を奪い取った女神。


 この世界には10柱の神様が居て、今回復活してしまったのは魔法の神様。


 魔法の女神がこの世界に降臨したことで今まで保たれていたバランスが崩れてしまう。


 この世界は後、百年未満で魔力や剣の力が失われていく運命だった。


 それでもこの世界が滅ぶのは気が遠くなるほど先の話みたいだけど、それを止めるために魔王教団は女神を復活させた。


 一件やっている事は正統性のある行いに見えるけど、それまでの過程や各々の思考は容認できないものばかりだった。


 メフィストのように私利私欲で実の弟を簡単に利用するような奴らしかいない。

 

 こんな教団に魔法の女神様の力を奪われたら、世界は滅ばなくても教団意外の全ての人間が苦しむことになる。


 それだけは避けたかったのに……。


 しかし魔法の女神は私達のそんな焦りを気にも留めず、自分の……私を模倣した身体を抱きしめ続けている。


「あはっ!これがあの人が使っていた身体!!あの人の魂が入っていて、あの人の好みの女の身体……やっぱり理想の身体に生まれ変わらせて良かった。ついに手に入れたわぁ!!」


 一応私と同じ身体なので若干気持ち悪いんだけど……というか多分、あの人って私だよね。


 凄くゾッとするんだけど!!


 まさかあの時、私をこの身体に転生させたのはこれが狙いだったの……?


 前世は男だった私が好きなタイプの女の子にして、その身体を手に入れて惚れさせるため?


 愛の重さが尋常じゃない気がするんだけど……というかそんなのに捕まりたくない。


 皆のためにも文字通り全力で抵抗するしかないか……。

 

 そんなことを考えていると女神は私の方を見て微笑み返してくる。

 

「また会えたわね……ルーク。ようやくあなたを手に入れた。後はその身体を私の物にして……あなたにはふさわしい身体を与えて上げる!!」

「ふざけて女の子に転生させたわけじゃなかったの……?」

「あなたが使っていた身体欲しかったのよっ!!」

「く……狂ってる……」

 

 愛情の表現というか……それを伝える方法としては理解できないものだった。


 こんなのに好かれてしまった前世の自分は何をしたんだ……過去の自分に同情しつつも、私は魔力を練る。

 

 復活はよくないけど、ピンチはチャンスいうようにこの女神を倒せば全部終わるんだ……。


 タイヨウやルーフェの意思を無駄にしないためにもここで仕留める!!


 コイツの狙いは私……それなら私が全ての責任を取って倒せばいい……!


 ちょうどルミナの張っていた白百合の盾も消えている。


 炎を身体に……。

 

 私がとある魔法を使おうとした時、女神はさらに嬉々として楽しそうな表情を見せる。

 

「その魔法を使うのねぇ……あぁ、愛しの貴方」

「そ、その言い方はやめて欲しいというか使う魔法がわかるの……?」

「魔法の神様だからね?全ての魔法は私の支配下……だからあなたの使おうとしているその魔法も打ち消せるんだけど……使わせて上げる」

「どうして……だってこの魔法は……」

「命を燃やす太陽神の固有魔法。今の貴方が死ねばその身体も手に入り、分身のこの身体と融合すれば完璧なあなたになれる。後は魂に干渉する魔法で貴方を蘇生してカッコいい男らしい身体に戻して永遠に愛せばいい!!ふふふ……」


 むしろ今の私が死ぬことはこの女神の思う壺というわけね。


 だけどそうなる前にこの女神を倒せれば何とかなる!!


 しかしそんな状況の中、私の事を不安そうな目でフーリアが見ていた。


 当然さっきの話を聞いている。

 

「ちょっ……どういうこと……!!」

「それは……これは私の問題だから……!!」

「その魔法を今すぐやめて!!」

「ごめん……」

「ここに来てまたそれ!?今までのは何だったのよ!!……この、分からず屋!!どうして最後の最後で……ショナ、サツキ……ルークを抑えてここは引くわよ!!!!」


 命を燃やす魔法を使おうとしている私を止めるためにフーリア達が掴みかかってこようとする。


 しかしそれを良く思わなかった魔法の女神は怒気を孕んだ声を上げて、呼ぶ――。


「私のモノに触らせるな!やれルミナッ!!」


 すると突然、妖狐の姿に戻ったルミナがフーリア達に襲い掛かる。


 身体は小さいけど、聖獣の一角だから相手にすると厄介……力も少しだけ女神に与えられている。


 さらに妖狐のルミナは魔法や剣じゃなくて妖術を使う。


 今までの常識とは異なる相手を前に5人は苦戦を強いられるだろう。


 そして私の方へはルミナは襲ってこない……。


 女神は私の事を見つめて、待っているようだった。

 

「ほら、魔法を使って」

「この魔法を使った後に魔法を打ち消す……なんてしないよね?」

「できないわよ。その魔法は燃料の命を使い切らないと止まらないもの」

「……そう、あなたの思い通りなのは気に入らないけど……この力なら私一人の方が強いッ!!」

「そう、それでいいの……ふふ、男らしいっ!!」


 わざと煽っているようにしか聞こえないけど、皆がルミナに足止めを食らっている以上、戦えるのは私だけ……。


 それならもうこれしか無いんだ……。


 皆には本当に申し訳ないし、1人でやらないと決めてはいたけど……。


 相手がこの女神なら話は別だ。


 だってこれは私のせいなんだから、皆を巻き込めない。


 ルミナがどういうつもりでフーリア達を止めてくれているのかは分からないけど、私の意思を尊重してくれているのかな。


 ルミナと一緒に居たからか、皆を止めてくれているその行動に何か意味があるんじゃないかと感じている。


「ありがとうルミナ……禁忌魔法、焔王白炎纏(えんおうはくえんまと)い……ッ!!」


 白い命の炎が身体から溢れ出す。

 

 これで全ての害悪を焼き尽くす……!!

 

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