第357話 最後の戦場へ
タイヨウの尊い犠牲により、魔王教団の教祖は倒れた。
ムーンを倒して後はルミナと復活しているかもしれない魔導王を相手にするだけになった。
だけと言っても最高峰の壁が2つも立ちはだかっているわけで……簡単に終わるとは思えない。
それでも私はタイヨウの想いに応えるため、そしてルーフェの意思を継ぎ続けるためにもこの戦いに勝たないと!!
申し訳ないけど消えてしまったタイヨウ達を弔う暇はない……。
後で必ず弔おう事を誓って、私達はお城を出て最後の戦地……学校へ向かう。
エステリアに最初に尋ねた場所が最後の戦いの地になるなんて、あの頃は想像もできなかった。
でもあの時のような学校に通えるというウキウキな気分ではなく、戦争を終わらせるための戦い……。
戦争と言えばエステリア内の戦いはだいぶケリが付いていて、こちらの勝ちは目前と言った所……。
勝ちが見えているというのにとてつもなく不安で……まだ何かあるんじゃないかと不安を覚える。
タイヨウの魔法が消えた事で空が雲に覆われて、小雨が降ってきた。
湿った空気が肌に伝う感覚がその不安をより増幅させる。
身体は熱いのに寒気が止まらない……これは小雨による体温の低下だけじゃない。
そこへ敵の制圧を終えたミツキ達とたまたま合流する。
「ちょっと!戦いはどうなったの!?」
「学校に行かないとまずいことになるかもしれないの!!ミツキ達はもう終わったの?」
「ええ……あれ?紅蓮様は?」
「紅蓮……そういえばずっと居ないけど……」
「そう……あの人は結構前に向こうへ走って行ったわよ?」
その方向は今から私達が向かおうとしていた学校だった。
紅蓮は学校で何が起きているのか分かっていた……?
勘……それとも何か理由があって学校へ向かったのか……。
だとしてもルミナが向かっているので紅蓮でも相手にするのは大変なはずだ。
「急ごう!!」
「私達はどうする?今は怪我人を運んでいる最中なのだけれど……」
「ミツキ達はすぐにエステリアを出て!」
「は?怪我人を運んだら私達も向かおうと思っていたんだけど?」
ミツキの後ろには怪我をして一人では動けない人達が沢山いた。
この人達はこれ以上戦いには参加できない。
周りの敵を一掃しているけど、まだ潜んでいる可能性も拭いきれないのでどこか安全な場所に運ばなきゃいけない。
そんなことをしていたら時間が無い……。
だってもう女神が復活してしまう。
それならいっそ、皆を街の外に逃がしてこのエステリアの街を破壊するつもりで戦いに挑む。
周りを気にしなくていいのなら紅蓮や私達も相当自由に戦える。
ムーンとの戦いは結界によって外に魔力が漏れにくくなっていたからあそこまでタイヨウ達が暴れても大丈夫だったわけだしね。
そのことを伝えるとミツキは納得してくれた。意地でもサツキに付いてくると言ってくると思っていたので、意外だった。
「……さすがに魔力も体力も限界だから盾くらいにはなれると思ったけど……逆に足を引っ張りそうね」
「死んでほしくないだけだよ」
「……アンタにそんなことを言われる日が来るとはね……」
嫌いというよりは苦手なタイプというだけで、死んでほしいなんて微塵も思っていないのは事実だ。
それに今動けるミツキ達がこの街に残っている人達を逃がす役目を担ってもらわないと困る。
私の魔法でほとんどの魔王教団は薬の影響から抜け出せたはず。
まだ街のどこかに眠っている人も居るかもしれないから、その人達を非難させて欲しい。
最悪私は自分の命を使ってでもこの戦いを終わらせる。
あの女神は私を目当てにしているわけだから、この戦いも元はと言えば原因は私だし……。
どうにかして私がケリを付けなければいけないと思っていた。
あの魔法でその縁を燃やし尽くす――
ただ……限界まで魔法を使うとなると街全体を火の海にしてしまうかもしれない。
後は近くにいる仲間達だけど……それに関して1つだけ考えがある。
ある魔法を使えば私の近くに居る人達は助けられるはずだから。
一度似たような魔法を使った事があるので全ての魔法が使えるのならおそらく可能だろう。
私の魔法は想像力が強く影響する。
絶対に使えるという自信と魔法の概要を想像さえできれば必ず扱える。
そんなことを考えていると遂に目的地である学校に着いた。
「まさか……この学校にこんな形で皆で戻ってくることになるなんてね……」
「入学式は約二年前……?全く持って濃い並外れた学校生活だったわね」
「多分この戦いが終わったら、学校とか跡形も無く吹き飛ぶよね?」
「お城の時はムーンが魔法の結界を張っていたから被害は少なかった……。今回それも無いし、ムーンよりもやばいのと戦うかもしれないから、そうなるでしょうね」
「こんな時に何だけど、もしそうなったら皆でハーベストの学校に通おうよ!それか冒険者として生きていくの!」
「……それもいいかもしれないわね。分かった?ルーク」
何故かフーリアとショナの会話なのに私にそんな言葉を投げかけてくる……。
もしかしたら私の考えている事がなんとなく分かっているのかもしれない。
私は一瞬戸惑いながらも――うん、と応えた。




