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第355話 絶月


 私達を倒したと思っていたムーンがタイヨウに止めを刺そうとしていた。


 しかしそこへ死んだと思っていたの私達が駆けつけてきたことによって、ムーンは焦りを見せる。


 あのルミナとの戦いでは色々あって、私達は攻撃の隙間に身を隠すことを選んだ。

 

 ルミナを信じて、あの子の行動に賭けてみる……全く博打も良い所だけど、これでタイヨウを手助けできるのなら良かったかもね。


「ルミナはあなた達を殺したと言っていたのだけれど……」

「そう見せただけ、ルミナを倒したくなかったから……それなら勝ったと思わせて思惑を潰そうと思ったの」


 考えている策とは違う事を口にすることで、相手に目的を悟られないようにする。


 それはうまくハマり、ムーンは窓の外を睨みつけた。

 

「ちっ……あの女狐め、しくじったか……」


 ここまでは予想通りだったけど、1つだけ想定外だったのはルミナが居ない事。


 あの子は一体どこへ行ったの……?


 辺りを見回して探してみてもどこにも気配を感じない。

 

 私が周りをキョロキョロしていたら、そこへムーンが焦りを拭い、笑みを浮かべながらまるで考えている事を読んでいるかのように応える。


「あの子は儀式の間へ向かったわよぉ」

「儀式……?一体何の……」

「魔導王様の復活に決まっているでしょう?もう間近に迫っていますよ」

「……ここでその儀式をするんじゃないの!?」

「ふふふ、大地の魔力の浸食が一番進んでいる場所……知っているでしょう?」

「……学校!?」


 ルミナは学校に行ったのか……!!


 あそこからは魔力の淀みだけで何の気配も感じなかったのに、本命の場所は学校だったんだ……。


 ルミナは私を助けると言っていたから、ムーンを倒してここでの魔導王復活を防ぐことで仲直りができる算段だったのに!!


 儀式自体がここで行うモノじゃなかったんだ……。


 それじゃあの子はどうして魔導王を復活させるつもりなんだろう。


 そうせざるを得ない状況なのか、正直もうあの反応から騙しているとは思えない。


 私は最後までルミナを信じたい!!


 そんなことを考えているとは夢に思わないであろうムーンは生きていた私達を見て不貞腐れながら呟く。

 

「まあいいわ。その男だけじゃ物足りなかったし、ルーク……あなた以外皆殺しにしてあげるッ!!」


 ムーンは狂気の笑みを浮かべていきなり襲い掛かってきた。


 月を象った魔法の斬撃を無差別に放つ。


 それを避けながらそれぞれの魔法や剣で襲撃する、しかし同じ魔法を何度も繰り返してくるのでこっちの攻撃が全て空中で弾かれる。


 視界を覆う程の斬撃の雨のせいで近づくことすらできない。


 しかしそこで片腕を失っていたタイヨウだけは攻撃を弾き返していた。


 魔法が使えないみたいだけど、剣だけはそのまま使える……けれど問題があって、片腕しか動かせていない。


「タイヨウ様、私の炎で腕を治してください!!私の今の炎なら欠損していても――」

「……いやいい。それより時間を稼いでくれ」

「何を……?」

「これは俺の問題だから……俺が片付ける」

「それなら片腕を治してからでも……」

「魔力を温存しておけ……お前達に魔導王を任せなければいけないかもしれない。ここで傷つくことだけは避けるようにしろ」

「それっとどういう……」

 

 魔導王の復活が今行われているのなら確かにもう間に合わない。


 戦う事は前提と考えて、ムーンとの勝負にケリを付けないといけない、それがタイヨウの役目という。


 私達はムーンの攻撃をひたすら避ける事だけ考えた。


 その上で隙を伺って何度も攻撃を加えているんだけど、攻撃を当たる直前でワープして避けられる。


 瞬間移動までできるので攻守ともに最強……これを相手にしていたタイヨウはどう戦っていたんだろう。


 そう思うくらいに突破口が見つからない。


 これが世界でも2番目に強い人間……!!


 いや、今この場に置いてタイヨウが魔法と片腕を失ったから、ムーンが1番かもしれない。


 魔法を使って覆っても弾かれ、月の斬撃の間を縫って魔法を撃っても瞬間移動で避けられる。


 そのくせ剣よりも鋭利な斬撃を絶え間なく放つ。


 正直攻略不可能と思えるほど理不尽な相手だ。


 そんな中でもタイヨウは太刀に力を込めて炎を溜めている。


 一気に爆発させてそれで斬り伏せるつもりみたい。


 しかし今のムーンを倒すにはまだ足りない。


 炎を溜めているタイヨウは無防備で私達が攻撃を食い止める必要がある。


 絶え間ない斬撃を打ち落とす。


 だけど攻撃を食い止める事に意識を向けすぎて、ムーンにはまだ余力があることを想定できなかった。


 無数に飛んでくる斬撃を打ち落としていると突然……視界からムーンが消えた!!


 どこへ消えたのか探していると後ろからタイヨウの苦痛の声が聞こえてきた。


「ぐあっ⁉」

「タイヨウ!!」


 月の斬撃を先ほどいた場所から常に放ち続けながら、身体を移動させてタイヨウの背後に周っていた。


 しかもこうしている間でも月の斬撃は続いている。


 魔法とは自分を中心に発動するモノ。


 魔力を流れる身体から魔法を放つんだから当たり前だ……。


 おそらくこれは先ほど自分の居た場所に魔法陣を残しておいて遠くから魔力を注ぐ高レベルの魔導士でも難しい技術。


 人間ではまずできない離れ業……。


 そんな事まで可能だったなんて思わなかった……。

 

 タイヨウは討たれ……地面に膝を付く……。

 

 ……これでどうやって戦えばいいの……!!

 

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