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第351話 ルミナの意思


 ルミナの違和感に気づいた私はある賭けに出ることにした。


 それは私がサンから貰った固有魔法を使うというモノ……この魔法は使ったら命に関わる禁忌の魔法。


 私の持つ2つの切り札の1つとして使う事を決めていた。


 命に関わる切り札だからこそ、本当にギリギリの時にしか使うわけにはいかない。


 何よりも今はルミナの真意を確認する必要がある。


 だからまずはもう一度、拳と拳を打ち合って隙を伺う必要があるわね。


 炎を纏った拳と拳がぶつかり合い、私の手にヒビが入ったような痛みに襲われる。


 それを瞬時に治癒して何度も打ち合い続けていく。


 フーリア達が私に下がるように叫んでいるのが、それを無視した。


 参戦してきそうならむしろ止めて、間に入って来られないようにあえて全力で殴り合う。


 手が壊れるくらい打ち合う事で炎が外まで拡散。


 そのせいで他の子達は簡単には近づけない。


 何度か拳の打ち合いを続けていると当然こちらが一方的に押されているので治しているとしても徐々にその痛みが苦痛になってくる。


「くっ……」

「もうやめた方が良いのではないか?仲間に頼るのが汝の戦闘スタイルのはず」

「まだまだ……!!!!」

「――ッ!!人の忠告を聞かぬとは……」

 

 決して聞いていないわけじゃないんだけど、ここは黙って攻撃を加え続ける。


 そうしないと私の試してみたいことができないから。


 ルミナの言葉を無視しながら何度も攻撃を加えて、腕が使い物にならなくなっては治癒の炎で癒す……それを繰り返す。


 するととルミナはうんざりしているのか怒りを露わにする。


「いい加減にせぬと、一生腕が動かなくなるぞ!!」

「だからなに?あなたを止めるためなら腕の一本くらい……あげるッ!!!!」

「くっ……馬鹿者めッ!!仕方がないこうなっては…………うぐっ⁉」

 

 私はその言葉に合わせて渾身の一撃をルミナに与える。


 その拳は今までとは違ってルミナの身体を振動させた。


 驚きの表情を見せているその瞬間に私は試したいことを実行する。おそらくここがチャンスだから……。


 ルミナが私達を殺すつもりが無いのなら、私が命を賭けるような魔法を使った時どうするのか。


 これが私の考えた賭け……!!

 

「固有魔法!!白炎ッ!!」

「なっ!?その魔法は……馬鹿者!!」


 ルミナはほぼ全ての聖獣の力を取り入れている。


 その中にはサンの力も入っているはずだから、当然この魔法の事は知っているはず。


 この魔法は魔体症と同じような性質を持っていて、命を燃やすことで炎を白く染めてその熱量や威力を底上げする。


 だけど今回、私はその魔法を使っていない。


 この至近距離で尚且つ今まで通じなかった攻撃が通った事で驚いている所にさらに追い打ちを掛けた事で、魔法を使っていなくてもその魔法名を聞いて騙される。


 その時のルミナの表情は先程からの冷たい空気は消え去り、焦りと困惑に満ちていた。


 ルミナは私の命を燃やす魔法を使わせまいと聖獣の力を使い、私のお腹を殴ってきた。


「うぐっ⁉」


 聖獣の力を使っているせいで動きやパワーが桁違い……避ける事すらできない。


 お腹が痛すぎて涙が出てくる。


 そんな私の様子をルミナは心配そうに見ていた。


「やりすぎてしまった……か……」

 

 それを見ていたルミナはボソッと呟いた。


 その言葉を聞いて私は確信する。

 

「や、やりすぎたってどういう意味……?うぐっ……」

「なっ……妾の全力を受けてどうして意識を保って……⁉いやまさか……」


 私は固有魔法「白炎」を使わずに別の固有魔法を使っていた。


 それは「白百合の盾」。


 ルーフェの使っていた最大防御魔法よりも防ぐ力は弱いモノの、簡単に展開できるので私にとってはこれが一番使い勝手がいい。


 服の中に「白百合の盾」を仕込むことでバレずに攻撃を防いだ。


 と言ってもお腹に激痛が走っているのでルミナの攻撃を完全には受け止めきれていないけどね……。


 食べた物が逆流してきそうな程の威力で殴られていて本当に苦しい。

 

 口で息をして呼吸を大きくすることで痛みを和らげる。

 

 そんな状態でも私は焦っているルミナに付け入る。


「やっぱり殺すつもりはないみたい……だねルミナ」

「まさか最初からあの魔法を使う気なんてなかったというの!?それで突っ込んで来るなんてもし妾が汝を殺すつもりだったら…………自殺行為……!!」

「信じてたからルミナを……」

「……」

「お願いルミナ、話をしたい。もし協力してくれるのなら私達でムーンを倒せる!!」


 ルミナの真意は分からないけど、こちらに害を及ぼすつもりが無いのは分かった。


 それならちゃんと話せば目的を教えてくれるかもしれない。


 この子が私達を裏切るなんて私には思えなかった。


 だから私はゆっくりと手を差し出した。


 どうかこの手を取ってくれることを願って……。

 

 パチーンッ!!

 

 手を差し伸べた私の手をルミナは……払らわれてしまう。

 

 それは明確な拒絶であり、否定。


 私とは手を取らないという表れだった。


「どうして!!」

「ダメ……それでは足りぬ……」

「え……?」

「全部妾に任せて、おけばいい。汝は妾が……!!」

「どういう……うっ……⁉」


 突然ルミナは魔力を暴走させた。


 言っている事とは裏腹に戦うつもりでいる……?


 だけどただの戦いじゃなくて、これ以上先へ行かせたくないという絶対の気持ちが伝わってくる。


 意地でも足止めをしたいみたい……。

 

 理由は分からないけど、まだルミナは私達と戦うみたい。


 そんなルミナの様子を見てフーリア達が近づいてきた。

 

「なんだか……こじれてるって感じね」

「なんとなくフーリアにそっくりな所あるよねルミナって」

「は?ショナ、私があんな女狐に似てるわけ無いでしょ?」

「見抜かれた事への恥ずかしそうにするところとか……ルークのための怒りがね……。そうなると話し合いは通じないかもね」

「それなら力で黙らせるしかないみたいね。ルークが望んだこととはいえ、手を何度も怪我させた事は許さないんだから!!」

「あれはルークが自分からやったけどね」

 

 先程の話を聞いていた皆はルミナが本当は敵じゃないという事が分かってフーリア達の戦いへの意欲が増した。


 敵として対峙する時、サツキは明らかに手を抜いていた。


 決められたところでルミナの事を思い出し、攻撃を止めてしまう程に……でもルミナを戦闘不能にすることが彼女のためと分かったら。


 彼もまた全力で応えてくれる。


 これでようやくルミナを全力で相手にできる!!

 

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