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第350話 紅い炎、黒い焔


 ルミナとの戦いが幕を開ける。

 

 最初から全力で、すぐにこの喧嘩を終わらせるつもりでやってやる!!

 

「全員に焔纏いをエンチャント!!」

「それならば妾は……妾1人に焔纏いを集中エンチャント」

「強化魔法は強化する対象が多くなればなるほど、その強化が薄くなる……」

「そう、妾は1人ゆえにこの強化を最大限受けられる!」


 私が1人で戦う場合や強化が不要な場合は私一人にその力が集中して使っていた。


 この魔法は体格に恵まれず、さらにか弱い女の子であるこの身体でも竜と殴り合えるほどまで身体能力を強化できる。


 ルミナは聖獣なので元から頑丈で、少女の私を押しつぶせるくらいの力の差がある。


 さらに「焔纏い」で強化することによってその差は遥かに広がってしまう。


「強化するなら自分だけして、残りは置いておけばいいのに」

「皆を置いて行くなんてできないよ。もちろんそれはルミナもだよ!!」

「……」


 私は想いを込めて叫んだ。しかしそんな言葉はルミナに届かない。


 彼女はどうでもいいと思っているのか、気にしていない澄ました顔で私の事を見ていた。


 冷たいルミナの視線が突き刺さってくる……。

 

 それでも私はまだ分かり合えると信じてるから……だってずっと一緒だったんだから……!!


 血のように赤い炎を纏った拳と黒い炎を纏った拳がぶつかり合う。


 私の赤い炎とルミナの黒い炎は一見互角に見える。


 しかし、元々の身体能力に差がありすぎた。


 拳をぶつけた振動で手が割れそうな痛みに襲われて、その痛みに耐えられなくて力が抜けてしまい、後方へ吹き飛ばされる。


 たった一撃だけで腕が使い物のならない程のダメージを負う。


 だけどバレンタインの炎で瞬時に癒してすぐにもう一度拳を叩きこむ。


 次はルミナが身体で攻撃を受け止める。

 

 受け入れ態勢のルミナに少し気圧されてしまうが躊躇わずルミナの胴体を殴る!!


 しかしルミナの身体は私と同じ見た目をしているのにとてつもなく硬くて殴っているこっちの手が壊れそう……。


「身体能力では勝てないわ」

「それじゃあ俺達の攻撃も追加だ!!」

「ん?」

 

 サツキが横から割って入ってくる。


 剣の周りに水を纏わせて振動させることで切れ味を底上げしてルミナの首を狙う。


 ルミナはサツキを退けようと魔法を使う仕草を見せる。


 腕に黒い炎を纏った瞬間、私はその腕の炎を操ってルミナの手を下げさせた。


 炎を操られるとは思っていなかったのはルミナは驚いている。このままいけばルミナを倒せる!!

 

 しかし直後でサツキは攻撃を止めてしまった……。


「うっ……」


 その隙を見逃さず、ルミナはサツキのお腹を殴ろうとする。


 何とか剣で受け止めたモノの、サツキは一番後ろのユウリの所まで吹き飛ばされてしまう。


 炎を常に纏っている状態なので、常に治癒されているからすぐに回復できる。


 それでもずっと攻撃を受け続けるのは不可能……魔力がどうしても足りない。


 6人に常に強化魔法と治癒を施すのには限界がある。


 同じことを繰り返していてはダメ、せめて別の突破口を見つけないといけない。


 サツキが攻撃を止めてしまったのはルミナの事を想っての事だろう。

 

 サツキの水でも炎は消えず、フーリアの風のようにスラッと斬ってしまう剣でも切れない。


 唯一ショナの雷は一瞬だけルミナの動きを封じた。


 しかし、尻尾を地面に突き刺して魔力で雷を尻尾に移動させて避雷針のように受け流して防がれた。


 緻密な魔力操作と私と同じ小さな身体だからこそ、雷をあまり多く帯電できないのですぐに全部取り除ける。


 次にユウリとマツバの魔法の合わせ技が炸裂するも簡単に弾かれてしまう。


 ユウリは既に魔力の大半が使えない状態でマツバの補助に徹している。二人とも大地を操る魔法が得意なので魔法の威力は上がる。


 それでも全然効いていない。


 今までやってきたこと全てがルミナに通用しないんじゃどうすればいいんだ。


 そんなことを考えていた時だった。ルミナはなんだが申し訳なさそうな表情を見せる。


「もうこれで終わりかしら?」

「……?」


 何気ない一言……フーリア達はそれを挑発と受け取って、攻撃を仕掛ける。


 当然それは伏せがれてしまったんだけど、私はその一言に妙な違和感を覚えた。


 なんというか、何かを隠しているように感じ取る。


 どうしてか分からないけど、この戦いには何かがある気がした。


 ルミナは私たちをムーンの下へ行かせないために足止めをしていたはず、でももしそれが目的ではなかったら……?


 ルミナが何を考えてこんなことをしているのか、今までの事を思い出してみるけど、当てはまるものは無い。


 あるとすれば仲間だから……とか…………?

 

 そんなことを考えていたモノのルミナの軽やかに攻撃を避ける姿を見る。


 剣で斬りかかってくるフーリア達を簡単にさばいていく。

 

 たまらずフーリアは悪態を付いた。

 

「くっ……この女狐っ!!攻撃を軽々避けたり、受け止めたりするだけ……挑発してるの!?」


 ルミナからは今まで攻撃を仕掛けてこなかった。


 一度倒れていたフーリアに攻撃していたけど、私でも受け止められる炎で……あの状況なら炎なんて使わずに殺傷能力の高い爆発の固有魔法で殺せたはず。


 魔力に圧倒的に差が出来ていて、聖獣の力を宿しているから炎でも本気を出されたら力で押し負ける。


 メイビスの時のようにね。


 ルミナは私たちを舐めているんじゃなくて本気で殺す気がないんじゃないかな。


 私の治癒の炎で治したけど、それで済む程度で済ませているわけだし。


 あの子の狙いがなんなのか分からない。


 もしかしたらまだあの子にも情が残っているのかもしれないし、ただ遊ばれているだけかもしれない……。


 だけどそこに一つの希望があったら……。

 

 これは賭けだ……圧倒的に強い敵を前に油断や賭けは自殺行為でしかない。


 だけどその賭けが当たれば……この状況をひっくり返せる!!


 私はルミナの前に立ち、その賭けを実行する……これで私の考えが違ったら、おそらく死ぬだろう。

 

 だけど私は身体を共有したルミナを信じたい!!

 

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