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第347話 魔法の祝福


 この世界に自分の身体に無い魔力を操る方法は2つある。


 1つは大地から魔力を借りて使う方法。


 しかしこのエステリアは所々、大地の魔力が淀んでいて使う事が出来ません。


 ギルドと学校とルエリア城……辺りは妙な魔力に侵食されている。これは魔王教団の山で戦ったときに起きていた現象とそっくりです。


 つまり1つ目の大地から魔力を借りる事は環境的に不可能。


 ならアカツキに無い魔力を生成している理由は1つになってしまいます。


 ユウリと同じ魔体症の症状を持っている。


 人によって魔体症の重度というのは違い、同じ症状に悩まされているユウリは身体の無駄な脂肪と寿命を魔力に変換できる。


 前者のような軽いモノから後者のようなとてつもなく重いモノまで、色々あります。


 そんな中でアカツキが利用しているモノは……。


「命と記憶を魔力に変換する!!」

「ちょっとそんなことやめて!!」


 ルークはあまりに重い代償を支払っているアカツキを止めようとします。


 しかしアカツキは言う事を聞いてくれません。


 むしろ薬の影響が消え、全ての魔力が一時的にアカツキのモノに戻る事で炎の魔法のみルークを超える練度を発揮する。


 ルークは迫りくる攻撃を避けながら、月魔法やユウリの大地を操る魔法でアカツキを拘束しようと試みる。


 しかし全ての攻撃を燃やされてしまう。


「どうして魔法が……!!」

「これがフェニックスレフレアの真の能力……!!癒しの愛と破壊の怒りが込められた究極の炎よ!!」


 ルークはこの炎を戦いに使用する際、ほとんどを治癒に使っていました。


 攻撃は「炎帝」という過去のルークが独自に編み出した元々使える魔法を駆使しています。


 殺傷能力の高さで言えば「炎帝」の方に分があるので戦いの際はそれを使っていました。


 しかし今のアカツキは「炎帝」の炎を超える「不死鳥の炎」を使いこなしています。


 ルークの纏っている炎がアカツキの炎に焼かれてしまう。


「炎が炎に焼かれた!?」

「燃やす燃やす!全部……不要なモノは全部……!!記憶も望まれなかったこの命も!!!!」

「そんな……こと……うっ……あああああああああああああああああ!?」


 ルークはあまりの炎の物量に押されて吹き飛ばされてしまいます。


 ギリギリの所で「白百合の盾」を使いガードすることで身体が焼けるのを阻止しました。


 「白百合の盾」は燃えて、消えてしまう。


(このままじゃ負ける……!!)


 しかしそれは正面で戦った場合のみ、時間稼ぎをすればこの戦いは勝利できますが、それではアカツキを見殺しにしてしまう。


 だから時間稼ぎという選択肢はもう無いモノでした。


 それならこっちの魔法の物量で押し切る……それもおそらく不可能でしょう。


 ユウリと魔法で競った時に魔体症の力を使った場合、ルークはその圧倒的な物量に押されていました。


 リスクをはらむ分、魔法の威力も底上げされてしまう。


 おそらくルーフェでも時間稼ぎの勝ちを狙いに行くだろう。


 それでもルークはアカツキを止める方法を考える。


 これでも魔法は星の数ほど知っている。


 どこかにアカツキを止める方法が無いのか頭の中にある魔法を片っ端から探す。


 それでも魔体症を相手にそんな対処方法はありませんでした。


 (もう……無理なの……?)


 アカツキを諦めればこの戦いは勝てる。逆に下手を打って負ければミツキ達に被害が及ぶ。

 

「ごめんアカツキ……いいえ、メイビス!!」

「逃げるの?お姉ちゃん?」

「ううん、この一撃に全てを賭けるわ」


 ルークの選択はこれまでの自分の全てを賭けて魔法を使い、アカツキを気絶させること。


 アカツキの事を……いいえ、メイビスの事を諦めきれませんでした。

 

「へぇ……でもお姉ちゃんの炎じゃ私に届かないよ?」

「思い出したのルーフェ師匠は魔法は想いの力だと」

「つまんない力ね」

「そんなこと無い!!それをメイビスに教えてあげる!!」


 右手に炎を集中させる。


 さらに固有魔法を無理やり炎に混ぜて様々な属性を付与。


 サツキの水魔法やユウリとマツバの大地魔法。


 覚えた固有魔法の全てを炎に混ぜる。


「無茶苦茶な事を……さすが勇者ルークの転生だけはある。だけどそれ、大丈夫なの?」

「どういう意味?」

「鼻血出てるわよ」

「――ッ!!」


 一点に膨大な魔法をかけ合わせてしまったせいで身体が限界に達し始める。


 しかしもう準備は出来ていました。


 後は――。


「メイビスあなたへの想いを乗せる!!」

「今更何よ!!殺してやるお姉ちゃんっ!!!!命と記憶……ほぼ全てを魔力に変換!!死ねぇぇぇぇええええ!!これが本当に血を引く者だけが使える魔法!!想いの炎バレンタイン!!」

「止めて見せる!!禁忌超絶空間破壊魔法!炎熱地獄!!!!」


 2人の熱い炎がぶつかり合う。


 全てを燃やす炎と全てを破壊する炎がお互いを燃やし、破壊する。


 その度に魔力を注ぎ、威力を落とさない。


 それではいずれメイビスの体力が尽きてしまう。


(それは……ダメッ!!!!!!!!!!!」


「あああああああああああああああああああああああっもっと燃えろぉぉぉぉおおおおおおお!!」

「うっ……⁉何この炎……魔体症でもない1人の人間にこれほどの魔法!?身体や精神が崩壊しないの!?」


 遂にメイビスの炎が押され始めました。


 純粋な魔法の出力なら勝っているはずなのにルークの炎はそれ以上メイビスへは押させませんでした。


 どっちの魔法が強力か、そんなことはどうでもいい。


 必要なのは一刻も早くこの炎をメイビスにぶつけて魔力変換を止めさせること。


 そしてルークの炎がメイビスに届く瞬間――。


「このぉ……私だって魔導騎士(エーテルナイト)になったんだ!!聖剣……あっ…………」


 無我夢中で剣を取ろうとしてしまい、これが魔法のみでの意地の勝負という事を忘れていた。


 剣に手を乗せた瞬間にそれを思い出し、メイビスは聖剣の力を――使わなかった。


 当然そんな隙をルークが見逃すわけもなく……。


 ルークの炎はメイビスを焼き尽くす。


 バレンタインの血筋は炎への完全耐性がありますが、色々な魔法を混ぜた事で炎以外は効いている。


 やがてメイビスは地面に仰向けで倒れました……。


「ま、まだ……命がある限り私の……魔」

「メイビスッ!!」


 ルークは次の瞬間何を思ったのか、メイビスに抱き着きました。


 それ以上魔力を変換するなという想いを込めて力強く抱きしめる。


「お願い……もうやめて…………」

「な、なんで今更そんな……!!」

「知ってたら、私だってあなたを意地でも迎えに行ってた!!!!」

「――っ⁉」

「大切な人達が唯一残してくれたあなたが生きているのなら……魔王教団にだって1人で乗り込んで助けた!!」

「そんなの何とでも……」


 しかしルークのその目に嘘はありませんでした。


 真っ直ぐなその目を見てメイビスの目頭が一瞬だけ熱くなる……。

 

 だがそれは少し遅かった――メイビスは直後目を閉じる。


 魔体症の代償…………全てを記憶を失ってしまいました。

 

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