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第344話 本当のバレンタイン


 私の妹は母上のお腹の中に居たけど私が子供の頃に起きた魔物の大群との戦いで死んでしまったと思っていた。

 

 だけど目の前には同じバレンタインの魔法を使う……真の正統な血筋を持った女性が立ち塞がる。


 私よりも歳は下みたいだけど、見た目は20代前半の大人で妹とは思えない。


 もちろん見た目が大人っぽい妹とか居るかもしれないけど、年齢的におそらく10代も行ってないはず。


 私が7歳の頃にお腹の中に居たはず、あれから9年だから少なくとも9歳以下。


 アカツキをみてあり得ない話だと頭の中では整理してしまうのに嘘を付いているとも思えない。


 それだけアカツキの言葉や声が真実を物語っているように聞こえたから。

 

 そのことを聞いてから心臓が気持ち悪い程にバクバクと鼓動している。


 動揺しているのが自分でもわかって目の前がクラクラする……それでもやっぱり聞かずにはいられない。


「ほ、本当に……母上のお腹に居た…………」

「お前の母じゃない!!」

「――ッ!?」


 大人の落ち着いた雰囲気は突然消えて、私に対して殺気を含んだ声で怒鳴ってきた……。


 まるで親を取られてしまった子供のように……。

 

 それに私は委縮してしまう。


 だけどそれは仕方がないと思う……本当の娘はアカツキで私は赤の他人だったんだから……。


 彼女から向けられる殺意は私に突き刺さってくる。

 

 アカツキは自分の居場所を取られた思っているはず。


 ダインスレイブは魔物を召喚する魔法で街を襲わせた結果、バレンタインに居られなくなった。


 そんなダインスレイブの裏切りがあったのは元をただせば私が居たからで……アカツキはそれに巻き込まれたに過ぎない。

 

 ずっと魔王教団で育てられた彼女は幼い頃からムーンの魂から作られる薬を徐々に投与されていたという。


 見た目が大人なのは薬の影響を受けてしまったから……。


 だけど意識はアカツキ以外の誰でもない。


「薬の投与が徐々に……少量だったおかげかもね。要は私は異世界人の血を引かず、転生もしていない……この世界で完全で純粋な魔導騎士(エーテルナイト)になれた!!」

「……」

「所詮あなたも転生者……この世界の異物でしかない。なのにそんなお前が居たせいで!!!!」


 アカツキは怒りに任せて炎をぶっ放してくる。


 バレンタインの血筋ならその魔法を使うのは当たり前か。


 私も同じ魔法と体質を持っているのでお互いの魔法は通用しないと見ていい。


 私の「不死鳥の炎」を浴びてもアカツキの魔導騎士(エーテルナイト)の力は剥がれない。


 これが純粋な魔導騎士(エーテルナイト)ということなのかな。


「不死鳥の炎」それは固有魔法であり、模倣できない特別なモノ。


 あの戦いでルーフェ師匠が相性が悪いと言っていたのは固有魔法の模倣が出来ないからだったのか。


 しかも驚きなのが私よりもこの魔法を使いこなしている所。


 アカツキの炎は私のよりも赤く、触れた地面までも癒していた。


 私の炎が生物のみにしか作用しないのに対してアカツキは大自然にも及ぶ。


 いや……もしかしたらこれが本来の固有魔法「不死鳥の炎」だったのかもしれない。


 私は本当はバレンタインじゃない、ジークの「不死鳥の炎」を見て模倣しただけだった。


 そんなことに気づかず私はずっとこの魔法を我が物顔で使っていたなんて……滑稽ね。


 やっぱり私はバレンタインを名乗るのに相応しくない。


 そんなことを考えながらも、私の脳裏には仲間達の顔が浮かぶ。

 

 それでもここで負けるわけにはいかない!!


 炎魔法が通用しないのなら別の魔法を使うまで……。


 この場で私の知る一番強い魔法、名前も知らない……けれど概要は知っている!!


 この魔法を使うのは胸糞が悪いけど、後先考えていられる状況じゃない。

 

「月魔法……斬撃!!」


 私が模倣したのはムーンの月魔法。


 魔力を月の形に象って相手に放つ魔法だ。


 さらにその魔法を放った後に避けられてしまうけど、それを操作してアカツキにぶつける。


 もちろんアカツキもタダでその攻撃を受けるわけじゃない。


 魔力の壁を作るとそれを炎の魔法で覆った。


 その壁は月魔法で傷つく。


 この月魔法は魔法に傷を付ける事が出来る。


 どんな魔法も壊すことができる特殊な魔法。


 魔法なのに魔法使いを倒すための魔法。


 これを使いこなすのがおそらく後々戦う事になるムーンか。


 そんなことを考えながらも魔法の壁に傷を付けるが、次の瞬間……その魔法の壁に付けた傷が回復していた。


「まさか……フェニックスフレアの力……?」

「そんなことも知らないなんて、よくバレンタインを名乗ってたね!!これがこの魔法の真骨頂でしょうが!!」


 まるで私に言い聞かせるように怒鳴りながら叫ぶと炎はさらに大きく肥大化して爆発する。


 その爆発に私の月魔法が覆われて燃やされる……。


「これはフェニックスフレアの燃やす魔法……?まさか魔法まで燃やせるなんて……」

「これが本物よルーク=バレンタイン。あなたのような偽物では扱えない最強の魔法!!」


 どうやら一筋縄ではいかない相手みたいね。


 今のところまだバレンタインの魔法だけで剣を使っていない。


 魔導騎士(エーテルナイト)というからにはまだ剣を残している。


 だけどそれは私も同じ……だけどなんだろう。


 私は剣を抜きたくない……。


 このアカツキ……いや私の妹になるはずだったメイビスを魔法で倒したいと思っている。


 そんな無駄な事をしても意味ないのは分かっているだけど、多分向こうも同じことを考えている……と思う。


 なんとなくそれは伝わる……。


 だって私達はバレンタインだから……。


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