第335話 サジタリウス
この世界は10人の神によって作られた。
神の目的はサジタリオン達ですら理解できなかったものの、魔導王と繋がっていたムーンによってある真実が明かされる。
それは世界の終わり。
この世界は魔導王と呼ばれている神様の力が強く影響しています。
残り80年超で魔導王は完全にこの世界に関与が出来なくなり、世界の魔力供給がいずれ尽きる。
それを防ぐために魔導王をこの世界に光臨させて、世界に留まるように企んでいるのが魔王教団。
そしてそれを成すためにはルークという存在が必要不可欠だった。
理由はルークを魔導王が求めているから、その求めている存在が居れば魔導王は降臨した後もこの世界に留まってくれる。
ただ神達が居なくなってもしばらくはこの世界は続きます……。
ルークが居た前の世界は魔法が一斉無い状態でも維持できるものになっているので、神が居なくなったとしても短い間は形を保っていられます。
しかし、この世界はあまりに魔力の影響を受け出来たもので、魔法の神が居なければ維持できない。
さらに剣には精霊が宿り、力を有している……これに関しては魔導王と仲の悪い剣の神の嫌がらせでもありました。
その嫌がらせのおかげで2つの強大な力がこの世界を維持し、安定していますが神が消えれば失われてこの世界は消えてなくなる。
「そしてこの世界に魔力と剣の精霊は消えて、混沌の時代がやってくるだろう!!」
壮大な話で他人が口にしていれば無視するようなモノ。
しかしその話をしているのはサジタリオンであり、サツキの先生。
裏切られたとしてもそれが嘘じゃないのは何となく感じ取っていた。
そしてそこまでの話を聞いてサツキは確信した。
「……そんな理由なら仲間を売ることはできませんよ」
「どうしてだい?一人の人間を捧げればこの世界は安定する。剣の精霊はいずれ消えるだろうが、魔法の世界として永遠に続く」
「魔法の世界とか興味ないんですよ。サジタリオン」
「……へぇ」
呼び捨てされた事にサジタリオンは眉を顰める。
サツキはむしろこんな理由でルークや自分を裏切ったことに怒りを覚えていました。
世界が滅ぶとしても……サジタリオンは1つの間違えから目を背けている。
それは……。
「まずは皆が助かる道を探すべきだった!!ルークも含めて……それが出来ないのなら……好きな女のために俺は世界を捨ててもいい……それが俺の答えです!!」
「君とあの子を引き合わせたのは間違えだったみたいだね。仕方ない、君は生かしたかったんだけど……その考えを改めないのなら見逃せなくなるよ」
「何度も同じことを言わせないでください」
サツキの強い意志に変化が起きる事はない。
サジタリオンはそう確信しました。しかし、サツキのような下心もないマツバはどうだろうか。
マツバの回答を待つ。
そして彼もまた考えを述べる。
「俺もサツキと同じですよ」
「あれ?君もルークが好きなの?」
「いいえ、ルークの友達に……いや、それはとりあえず置いといて……ある人が悲しむ姿を見たくない」
「なんだ君はクールな子だと思っていたけど、君も下心か」
「人間なんてそんなものでしょう。それに神様が居なくなってもすぐ滅ぶんじゃないんですよね?その間に他に方法を見つけるとか……」
「そんな方法があれば僕もこんな教団に手を貸さなかったさ!!」
サジタリオンにとって魔王教団に協力するのは苦痛でしかなかった。
しかし自分のおじいちゃんが殺されたときの理由が世界のためだと聞いて仲間になる事を決めたという。
世界のために亡くなったおじいちゃんの死を無駄にしないために……。
「それで前学長先生を殺した教団に協力するなんて呆れました」
「君に何がわかる!!タイヨウ達に従っていては世界が滅ぶと聞かされて……それに協力していたあの人が殺されて……!!」
「ならその意志を継ぐのがあなたの役目でしょう!!!!」
「――ッ!」
「思い出させて上げます。あなたの本当の強い意志を!!」
サツキとマツバはサジタリオンへ攻撃を仕掛けます。
2人の力は紅蓮に劣るモノのこの世界ではトップレベルにまで仕上がっていました。
ムーンなら2人を相手に勝利することは容易ですが、サジタリオンは違います。
今の彼の力は魔王教団の幹部並の実力。それでは勝利するのは難しいでしょう。
サジタリオンはサツキ達と剣を交えてそう理解しました。
周りにはサジタリオンを助けてくれる人は居ない。タイヨウの連れてきた軍やジャスミンの街からの応援のおかげで魔導騎士となった一般市民を相手に抑えていました。
「魔導騎士達が普通の人間に押されているなんて……それに君達の力も徐々に増している……?」
「タイヨウ様の魔法……それが俺達に力を与えてくれています」
「このままでは僕の負け……というわけですか……。仕方ありません……僕もこの戦いに賭ける想いがある。いくら君達でもそれを踏みにじらせない!!」
サジタリオンは何を思ったのか自信の両の足を剣で斬りつけて切断しました。
「うがあぁっ⁉」
傷が両足にいくつも現れて、そこから血しぶきを吹き出す。
それに苦痛の表情を見せる。
当然そんな奇怪な行動を目にしたサツキ達は驚き戸惑っていました。
「な、何を……⁉」
そして次の瞬間……サジタリオンはサツキの水で溺死した馬を剣で突き刺した!!
「は……何をしてるんですか!サジタリオン様……!!」
「もう君達に敬称を付けてもらえるような人間じゃないよ。それに油断しているとすぐにやられるよ」
「そんな怪我でどうやって……」
斬りつけられた足の傷、そして剣は馬に刺さっている。
とてもではありませんが、動ける状態にはみえない。
しかしサジタリオンは不敵な笑みを浮かべて――空を仰ぎ見る。
まるで神にその身でも捧げるかのように、そして叫ぶ――。
「……禁忌の法。サジタリウス発動!!」