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第333話 経験の差


 ルークがダインスレイブと戦っている間、ショナ達はアリスと再会を果たしていた。


 しかしそれはあまりいい再会ではなく、敵同士という最悪なモノで、せっかく認め合う事の出来たアリスと戦う事になる。


 フーリアからすれば改心して敵対関係ではなくなっていたはずなのに、またこうして目の前に敵として現れたことに怒りを覚えていた。


「ちょっとアンタ!敵じゃないはずでしょ!!」

「……お前はフーリアだったか。風のアーティファクト使い……()の敵じゃねーな」

「何その話し方……いつもの上品な上からの態度はどうしたの?アリス」

「あ?あーそういうことか。俺はこの女の身体を手に入れた……アクアリオ様だ!!」

「あーそういうことね……まったく捕まるなんて情けない」


 魔王教団の薬で身体を乗っ取られている事に気づいたフーリアは怒りを抑えた。


 決して許したわけではない、魔王教団に捕まって自分達の敵になってしまったアリスに呆れている。


 だけど、裏切った訳じゃないのなら……助けてあげてもいい……。


 フーリアの頭の中にはそんな考えが巡っていた。

 

「助けたいのなら来いよ。この身体は女だが、ガキだから楽しくなくてな……お前は……お前も大概ガキか」

「なんですって!?」


 フーリアはスイレンのチームの中では一番身長が高いですが、胸の方は小さく、アクアリオのタイプではありませんでした。


 しかしアクアリオという男は性根が腐っていてアリスの身体を乗取ったが、悲鳴や苦しむ声を聞くには他人のモノでなければ楽しめない。


 そういった悪趣味な物を好む性格でした。


「お前らの鳴き声を聞かせてくれよ」


 アクアリオが剣を構える。


 その前に立ち塞がったのはフーリアではなく、サツキでした。


 サツキはスイレンの3人を庇うように前に立ち塞がり、アクアリオと対峙する。


 せっかく女と戦えると思っていたアクアリオは横から邪魔して来た男を鬱陶しそうに見つめていた。

 

「男に興味無いんだが」

「フーリア達はルークの大切な友達だ。一人でも泣いていたら彼女が悲しむ」

「ルーク?彼女ってことは女か?そいつはそこのガキどもと違って胸はデカイのか~?」

「……」


 サツキは混み上がる怒りを剣に込めました。


 大切な人を侮辱された事への怒り……。

 

 彼にもまた引けない理由ができました。


 しかしそこへサツキとアクアリオの間に割り込むように馬に乗った男が現れました。


 その姿を見てサツキの隣にマツバが駆け寄ります。


 そして二人は息のあったタイミングで同時にその男の名前を叫ぶ。


「「サジタリオン様……!!」」


「僕に様付けとは……あまいねサツキくん、マツバくん」


 サツキとマツバはアクアリオとの勝負を置いて、サジタリオンに狙いを定めました。


 先ほどまでの啖呵はどこかへ捨ててしまう程に、突然現れた存在との決着を望んでいます。

 

 一方で横から勝手に入ってきて勝手に他へ勝負に行ってしまったサツキをフーリアは睨んでいました。


(ふん、やっぱり男なんてこんなものよルーク!!) 


 ルークのことを想いっていると言っておきながらすぐに標的を切り替えたサツキをまるでゴミを見るような目で睨みながら、そんなことを考えていました。


 そんなフーリアの近くへショナとユウリが駆け寄ってきます。


「ちょっと不安だけどルーク無しで戦うよ!」

「きっとルークも戦っている……私達も急いでこんな悪趣味な()倒しましょう!!」

「身体は……私達よりも幼い女の子だけど」

「アリスは確か年上でしょ?気にせずぶちのめしましょ」

 

 駆け寄ってくる2人のことを全く鬱陶しいと考えることもなく、フーリアは頼もしさすら覚えていました。


 1人でも戦えるという自信はありますが、もうすっかり2人の事を認めて背中を預ける。


 それに相手は魔法と剣を使うことができるのでこの世界に元からいる3人よりも強いかもしれない。


 それでも本来なら1人で戦うところを今回は3人で協力することにしたのはルークが囚われているかもしれないから。


 この程度の相手なんてすぐに倒して助けに行くんだから……そんな強い気持ちでアクアリオを相手に戦う。


 水の魔法と剣を同時に使うアクアリオの戦闘スタイル。


 水を使って相手を寄せ付けない強力なもので3人は近づくことすら出来ませんでした。


 水の膜に剣が弾かれてしまい、魔法も通さない。


 逆に水の中からは斬撃が飛んできます。

 

 一方的に向こうからの攻撃を受けることになり、常に後手に回ってしまいます。


「さすがはアクアリオ……前に戦った時も結構強かったもんね」

「さらに強い薬の影響を受けて、あの時のリゼル並に強くなったのかもね」


 聖獣の力を使えるルークがようやく倒した相手、前よりも強くなっているとはいえ、フーリアとショナには不安が残っていました。


 しかし2人が内心で不安を覚えている中、ユウリだけはこの戦いで勝利を確信しています。


「2人とも考えがあるんだけど!!」

「お、来ましたルーク不在の時の作戦考える担当ユウリ!!」

「長いわよ……あと作戦と言えるものでも無いわ」


 ユウリは二人に耳打ちで作戦を伝えた。


 その内容を聞いた2人は驚き、ショナはあまり乗り気ではありませんでした。


 フーリアはその作戦に乗り気でした。


 彼女には合った作戦だったからです。

 

「それ上手くいくかなぁ~?」

「いいじゃない!やりましょう」


 2人がやる気満々な事でその作戦を実行せざるを得なくなったショナは渋々乗っかりました。


 不意打ちになる形であれほど嫌がっていたショナが雷で攻撃を加えます。


 当然水で弾かれます。


「この程度か?」

「ならこれは!!」

「効かねえよ。おらぁ!!」

「やばい……っ!きゃあああああああっ!?」

「クックック、いい声で鳴くじゃねーか!!」


 3人の作戦とは思えない戦い。


 常に手加減なしの全力で水の幕を壊そうとする荒々しい攻撃の嵐。


 それをアクアリオは完全に受け止め切る。


 このままでは3人の体力が切れて敗北を着する。


 そんな時だった!!


 アクアリオの水の防壁が突然割れました。


「何!?」


 それを見たフーリアは不敵に笑う。


「魔力切れよ。その身体を最近手に入れたのなら戦闘の経験が浅いわね」

「なんだと……!?」

「私達はここまで死線をくぐりぬけてきたの……だからどれだけ強くても素人なんかに負けない!!」


 フーリアの神秘剣がアクアリオの胴体を捉える。

 

「やめ……」

「アリスを返しなさい!疾風を巻き起こせ、神秘剣ツクヨミ!!!!」

 

 フーリアは神秘剣を翻し、アクアリオの胴体に風を纏った一撃を加える。

 

 ガガガがガガガガッ!!


 そんな人が吹き飛んだとは思えない音を立ててアクアリオはエステリアの街の中まで、飛ばされました。


「ちょ……殺してないよね?」

「頑丈だし大丈夫でしょ?最悪、ルークが治すから」

「あぁ……そうね」


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