第32話 街の外へ
突然街の外へ行くと言われて私達3人は拒否する暇も無く付いていくことになった。
ギルドの大広間には既に腕利きの冒険者達が揃っている。人数が多すぎるというわけでもないが、それなりに実力の伴った人達なのは見て分かる。
「お前達!これから向かう先は危険だ。先日我が冒険者の娘が意識不明の重体から未だに治らず、さらに別の被害も出た。我々はこの負の連鎖を断つために街の外へ向かう……ついてこい野郎共!ぉぉぉぉおおおおおおお!!!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
ギルドマスターはさっきよりもさらに幼く見える。
そんな容姿にも関わらず勇ましいその雄叫びに冒険者達は呼応する。
あの男の血を沢山吸ってしまったからだろう。受付嬢のアリアナさん曰く、吸う血の量で見られる記憶の量が変わるという。血を吸うと新しい記憶から巻き戻るように記憶を辿れる。
つまりあの男の重要な記憶がまあまあ奥に眠っていたという事、ギルマスの反応からしておそらくあの男が怪しい魔力に関わっているのは確かだろう。
となるとやっぱりあの怪しい男の仲間である可能性も高い……か。
ギルマスはまだ見た記憶を全てを私達に教えてくれているわけじゃない。説明しようにも時間が無かったからね。だから歩きながら教えてくれる裸身だけど……。
どうして私達まで付いていかなければいけないのか謎だ。
私達は学生だからあまり街の外へ出てはいけないと言われている。
ただそれすらも無視してギルマスは私達に付いてくるように促す。
「心配するな。私達が守るし、学校から何か言われてもお前達に責任がいかないようにする」
「お、お願いしますね……それから……」
「分かっている。何があったのか君達にのみ伝えよう」
「私達だけ……?」
「ふむ、街を出れば他の子らは魔物を警戒する。その時なら私達の話も聞かれないだろう」
その時に説明してくれるという事か。
街を出るまではギルマスが集めた人達に作戦を伝えつつ、目的地へ向かうために街の外へ続く大きな門まで来た。
ギルマスは覚悟して向かうぞ。と緊張するようなことを言う。むしろそうさせるために言ったのか。集まったギルドメンバーにより警戒させるようなことを言えばそれだけ死ぬ確率も減るだろう。
さらに私達への説明も聞かれにくい。
実は相当重要な話……?でもどうしてそれを私達なんかに……?
不安を感じつつも街の外へ出てギルマスが先導していた所から位置を下げて最後尾の私達の方へやってくる。
「一通り作戦は伝え終えた。次はこっちの説明をする」
「お、おねがいします」
小さい身体で少し早歩きになって皆に歩幅を合わせているのかとっても可愛らしいんだけど、表情や声のトーンが渋くてなんだか頭がバグりそうだ。
「あの男の記憶では魔王教団という組織があの魔力を保有していたという」
「魔王!?そんなおとぎ話の存在が居るんですか?」
突然のファンタジーな世界観に思わず驚いてしまう。というか少しテンションが上がる!!
居るんだ……魔王!!
そう思っていたんだけどギルマスはそれを否定する。
「魔王とは魔族の王の事ではなく、魔法の王と書いて魔王らしい」
「ま、魔法……?」
「ああ、分かりやすく言えば魔導士の王教団と言えばいいか。それを略して魔王教団だ」
「その存在をギルマスは?」
「知らなかった。犯罪集団がここ最近悪さをしているのは知っていたが、教団の人数が少ないのかお前達の捕まえてきた関係者程重要な人物は今まで捕まえられていなかった」
なんだ……魔王って想像しているような存在じゃないのか。
ということはボスは魔法を極めた王ってこと?
ちょっと戦ってみたいかも……。
「つまり……これは私達の手柄ということでしょうか」
「そ、そうだな」
「なるほど、それではその分の正当な評価を頂けますね!!」
「も、もちろんだ!!報酬を約束しよう」
「ありがとうございます」
フーリアはギルマス相手でも怯むこと無く、むしろ強気でそんなことを聞く。
何故か私といる時よりも楽しそうだ。
評価が上がればもう少し難しい依頼も受けられるしありがたいけど……複雑だ。
それにしても魔王教団か……正直物騒な名前だな。魔法の王と読むらしいからおそらく私の想像している魔王じゃないんだろう。
それでもその教団のやっていることは勧誘に見せかけた誘拐だからまともじゃない。
「これからする話は誰にも話すな。本来なら説明する人間は一人に絞りたかったんだが、お前たちは仲間と言う事で特別に聞くと言い」
そう言いいながら私とショナを順に視線を巡らせて……最後にフーリアに留まる。
つまり、説明する一人に絞りたかった相手は……フーリア……?




