第329話 恨みの果てに
ダインスレイブとの戦いは刻一刻と終焉に近づいていく、炎帝刀と焔纏いのダブルコンボで私の身体能力は遥かに高い次元まで到達していた。
一方のダインスレイブは魔物を召喚する魔法を駆使して、漆黒の炎と黒い炎の剣で対抗してくる。
剣のランクに差がある一方、ダインスレイブの召喚した魔物達が襲ってくるのでそれを捌きながら戦う必要がある。
私も同じように魔物を呼べればどうにかなるんだけど……。
ルーフェに教わった人の魔法を真似る技術には限度があった。
召喚魔法には契約など事前にやっておかなければいけない事があり、すぐにそれが出来ないので魔物を召喚することはできない。
そもそも召喚魔法は私とは相性が悪かった。
さらにルーフェから教わった魔法では、魔法の再現までしかできないから、無から生物を作り出すなんて芸当は不可能だ。
私ができるのは魔力を魔法に変換することのみ。
沢山の聖獣の力を得た事で莫大な魔力と高火力の一撃を叩きこむことができるようになったんだけど、魔物に邪魔をされることで思うように戦えない。
剣を力強く握ってダインスレイブの剣ごと一気に斬り下ろすが、そこへ狼の魔物が突っ込んできて攻撃を阻まれ、避けようとすれば動きの読みにくい蛇のような魔物に追われる。
ダインスレイブは私の先生だったわけだけど、まさかこんな戦い方をするなんて……。
「呆れましたよ……!!」
不意に出てしまったそんな言葉にダインスレイブは何とも言えない悲し気な表情をしていた。
「むしろ魔力も魔法も剣も圧倒的に上の君を相手にするんだから、これくらいは許して欲しいけどね」
単体で強くてもやはり一人では限界がある。
私の戦い方は既に仲間ありのモノになっていて、1人で戦うと本来の力を発揮できない。
こんな時、ダインスレイブのように魔物を召喚出来たら良かったのに!!
生きた魔物の生成は不可能、無い物ねだりをしても仕方がない。
炎を使って迫りくる魔物達を焼き払う。
魔物達は炎に包まれてやがて灰へ……。
魔物は動物とは違い、邪悪な生き物という認識なので罪悪感は無い。
ただせめて燃やした魔物を使えたらいいのにな……ゲームならたまに魔物が仲間になりたそうに見てくるのに……!!
そんなあり得ない期待を膨らませる。
すると炎に焼かれる魔物を見て、1つのアイデアが浮かんだ。
生物は作れないけど、炎で魔物みたいな形を作って操ればそれなりのモノができるんじゃないかな。
ルーフェは言っていた魔法は想像力で作り出すことができると……。
彼女もまた相手の魔法の概要を深く知る事で同じ魔法を習得している。
それにはイメージが大事。
私は想像する……それは炎の魔物……いや、そんな禍々しいものじゃなくて魔法の私だけの聖獣……!!。
イメージした物を魔法にして発動する。
「来て……!炎帝獣達ッ!!」
炎で狐のような形の魔法や亀などの今まで出会った聖獣と同じ種類の生き物を想像した。
カラス、亀、ワニ、ライオン、狐、狼、熊……そしてバレンタインの魔法を使える不死鳥。
それらを炎で再現した。
私の後ろには巨大な炎の聖獣達が守ってくれている。
もちろん意思があるわけじゃないけど、これなら魔物に邪魔されること無く、心おきなく戦える!!
「召喚魔法を応用したわけか……その想像力を私は教えていないんだけどな」
「これはルーフェの教えです」
「……そうか」
「でも」
「ん?」
「再現したのはあなたに教わった知恵と見せてくれている魔物達です」
「……」
恨みや悲しい感情があるのは確かだし、こんな戦いはしたくなかった。
だけどもう仕方がない、この人は私を裏切って、皆を危険な目に合わせた。そして大切な2人目の師匠を殺した。
それだけはどうしても許せない。
「私はあなたにたくさんの魔法を教えてもらいました。そこでよく言ってましたね……私は器用貧乏になるかもしれないから、得意で好きな魔法を使えと」
「……」
「芸がない、いつもの見飽きた炎の魔法……それをあなたにぶつけます!!」
ダインスレイブは次の一撃を最後にするつもりなのか、剣に意識を集中している。
魔物達はダインスレイブの魔力で動いているので、その供給が途絶えることで自然と消滅していく。
私の炎の聖獣には勝てないと判断して、無駄な魔力消費を抑えた。
それなら私はこの聖獣を象った炎を束ねる。
この炎には聖獣達の魔力が入っていたので、炎の中で合わさることでその威力を爆発的に増幅させる。
さらに爆裂魔法を付与する固有魔法を使い、威力を最大まで引き上げる!!
「忠告です。流石のあなたでもこれは耐えられない。諦めてくれませんか?」
「凄い魔力だ……私では到底敵わない……そう、このままではね」
「どういう意味ですか?」
「私は魔導騎士と成った!!使えるんだよ女神魔法がね!!」
「……」
「やはりこの力は最高だ。これこそが正しい人の姿……魔導王様の力の片鱗だけだが、これほどのモノを頂いた。だからルーク魔導王様への供物になってくれ!!」
ダインスレイブは手を緩めない。
それどころか女神魔法を使うと言い出す。
確かにそれなら、この結果がどうなるか分からない。
だけどひとつ確信を持てるのは……これだとどちらかが必ず死ぬ。
供物にしたいのにそんなことを平気でするなんてどうかしている。
何か考えがあるのかもしれない。そんな思考を巡らせているとダインスレイブの女神魔法詠唱を終える。
時間は……無いみたい……。
巨大な漆黒の爆炎の塊をダインスレイブは放とうとしている。
「いくよルーク……女神魔法在るべき世界!!」
「女神魔法焔獣!!」
