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第328話 バレンタイン


 狼の魔物や馬の魔物など毛並みが紫色主体の禍々しい魔物を大量に召喚したダインスレイブ。


 しかしその中には見た事のある大きな岩の魔物が居た!!


 私はそれを見た瞬間、ダインスレイブを睨みつける。


 これは……学校に入学する前に屋敷に突如として現れたゴーレム‼︎


 どうしてこの人が召喚できるのか……考えたくもない答えが脳裏をよぎる。

 

「だから言ったろ使いたくなかったと……」

「その岩の魔物は一体……」

「御覧の通り私の召喚獣ゴーレムだよ」

「召喚魔法が得意だったんですね」

「君には沢山の魔法を教えたけど、召喚系の魔法はあまり教えてないからね。それもこのゴーレムの存在に気づかせないためだった」

 

 あの時のゴーレムはダインスレイブの仕業だったのね……!


 本人からこんなものを見せられては疑う余地もない。


「この魔物達は昔、君達の街を襲った子達だよ」


 ダインスレイブは悪びれる様子を一切みせない。

 

「ま、まさかフーリアのご両親や私の……」

「殺したのは私と言っても過言ではないね」

「……そう、ですか」


 私はこの人を誤解していた。


 優しい人だとか、面倒見のいい人だと思っていたけど、すべて利用するための道具だったわけだ。


 何か事情があるんじゃないか、先ほどまでは頭の片隅にそんな考えが残っていたんだけど、それももうない。


 昔の優しいダインスイレブの顔を思い出すと頭がぐちゃぐちゃになる程おかしくなる。


 いや、迷っちゃダメ……!!


 私は身体に炎を包ませて、怒りを表現する。

 

「絶対に許さないから!!」

「あぁ……それでいいと思うよ」

「……」


 私の憎悪に満ちた瞳を見たダインスレイブはどこか悲し気な表情を浮かべていた。


 悲しい気持ちになっているのは私の方なのに……この人が何を考えているのか分からない。


 これがこの人の狙いかもしれない。


 私の甘さに付け込んで有利に立とうとしているのかも。


 甘さを捨てなきゃ……この人を倒して私は皆の下に戻るんだから!!


 私は迫りくる魔物達を炎で燃やす。


 もはやこのゴーレムは私の敵じゃない。


 岩を燃やすのは結構骨が折れるんだけど、ゴーレムは溶岩となって地面に溶けてしまう。


 それを見ていたダインスレイブは先程の悲しそうな表情がどこかへ行ったみたいに笑顔になった。


「やるね。さすが私の弟子、もう歴代のバレンタインを超えてるんじゃないかな?」

「だから……もう……弟子じゃないと言ってるでしょ!!」


 溶岩になり溶けたゴーレムを貫通する程の炎をダインスレイブへぶつける。


 魔法の障壁で防いでいるモノの、あまり余裕は無い様子だ。


 このまま押し切れば勝てる!!


 私はさらにバレンタインの炎魔法にダインスレイブの漆黒の炎を加えて火力を底上げした。


 皮肉だけどこの二つの炎は相性が良くて、威力が遥かに増した。


 私とダインスイレブの炎を合わせた魔法で彼を倒す!


 相手の魔法を見て盗むという師匠に唯一教わった技術を使って倒そうとした。その時、ダインスレイブは私の炎を受け入れるように目を閉じた。


 それを見た時、一瞬だけ魔法の威力を抑えてしまう。


 別に殺したいわけじゃない。ルーフェのお墓の前に持って行って土下座をさせなきゃいけない!!


 しかしダインスレイブはそうなることを分かっていたのか、攻撃の手を緩めた私へ炎の剣を突き出して来た。


 一瞬すぎて反応が少し遅れて、後ろ髪をバッサリを切られる。


 長く伸ばした髪を中途半端に切られてしまうが幸い怪我は無い。


「反応したか……すまないな。綺麗な髪を切ってしまった」

「避けなければ髪どころか首が飛んでたんだけど……」

「私の剣を避けられないのなら、ここで死んでおいた方が君のためだからね」

「何を言って……」


 そんな会話の中でもダインスレイブは剣を振りかざす。


 この人はこれでも私に魔法と剣を教えてくれた人だ。


 魔法の腕なら近いレベルまで到達できているはず。


 けれど、剣術に関しては圧倒的に劣ってしまう。


 炎帝刀を使っても実力に差が生まれない。


 一件、剣術の乏しい私でも互角に渡り合っているように見えるけど、相手の剣はおそらくアーティファクト。


 私のは聖剣や魔剣クラス……もしかしたら神秘剣に匹敵する。


 それを使って押されているなんて、情けない!!


 ダインスレイブはそんな私の考えを読んでいるかのように、言葉を紡ぐ。

 

「情けないのなら、それを乗り越えてみなよルーク」

「あなたは……まだ師匠面をするの?」

「少なくとも今の君を強くできるのは私だけじゃないかな?」


 強くしたいの……?


 いいえ、私を供物にするとか言ってる人だよ!


 そんな人がそんな考えを持っているはずがない。

 

「……少なくとも私はここで死ぬか、君を殺すかどちらかしかないと考えている」

「なっ……そんな……!!」

「そうなるよ。だって君のことは好きだけど、大切な弟子を取ったルーフェに謝りたくないからね……墓の前で謝らせるつもりだったんだろ?」

「……」


 私の考えを完全に読まれている。


 師匠として一番近くにいたせいか、私がこの戦いをどう持っていこうかしているのに気づいていた。


 だからこそダインスレイブはここで死ぬか私を倒すかの二択しか考えていない。


 力の強い方が戦いの結果を決める。

 

 そのはずなんだけど、なんだかダインスレイブの言っていることが本当になってしまう。


 そんな予感がした。


 迷っていると殺される。


 まさかそれを伝えるためにわざわざこんなことを……?


 この人が未だに何を考えているのか分からない。


 だけど、1つ言えるのは私はこの人を超えない限り、先へは進めない……それどころかここで止まってしまう。


 それはいやだ。


 その理由……私の脳裏には友達の姿が浮かんでいた。


 きっと皆はどこかへ消えてしまった私を探しているはず。


 きっとここで私が負ければ復活した魔導王にみんなやられる。


 それだけは絶対に嫌だから!!


 身体の中で炎が燃え上がるのを感じた。


「来たか……さて、見せてもらおうか。君の想いの炎がどれほどのものか」

「……分かりました。あなたに教えていただいた魔法で私なりの応えであなたを超えてみせます!!」


 

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