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第327話 師弟対決


 久しぶりにやってきたルエリアは懐かしさと不安が入り混じっていた。


 というのもルエリアの都市エステリアの近くの沼地は戦場になっていたので争いの後が残っている。


 沼地に入るのには洞窟を抜けないといけないんだけど、その洞窟は崩壊していて沼地の中が見えている状態、山が消し飛んでいて大きなクレーターが出来ていた。


 ルーフェはそこで命を落としたんだっけ……。


 たまらず私はタイヨウに聞いてしまう。

 

「い、1回沼地を見に行ってもいいですか?」


 この距離だと遠くてよく見えない。


 知りたいのとあの人の亡骸をちゃんと見つけたい。


 そんな気持ちからつい何も考えずにそんな言葉を口にしてしまった。

 

 当然タイヨウはその問いを拒絶する。

 

「……あまりこういうことを言いたくないが、今はルーフェの亡骸を弔っている暇はない」

「そう……ですよね」


 むき出しの沼地で命を落としてしまったルーフェを弔いたいという気持ちでいっぱいだった。


 あんな変な人でもまだ死ぬべき人ではない。


 まだそこに亡骸があるという事でせめて回収だけでもしたい。


 この戦いが終わったらきちんと弔おう……。


 そんなことを考えながら沼地を背にエステリアへ歩き出そうとしたその時だった。

 

「大切な人なんだろ?今あって上げなよ」


 背後から不気味な声が響き渡る。


 直後、私の身体は暗闇に包まれてしまった。


 炎を纏う魔法でその暗闇に抵抗したんだけど、そんなもので晴らせるようなモノじゃない。


 妙な魔力に包まれて魔法が使えないまま、それに身を任せるしかなかった。


 暗闇が晴れるとそこは先程まで沼地の外に居たのに別の場所に移動している。


 どこか暗い場所に連れていかれたのかと思ったら意外にも明るい……そして戦いの跡があったのか大きなクレーターが出来ていた。


 おそらく移動系の魔法を使われたはずだから、どこかに監禁されるくらいは覚悟していたんだけど……。


 辺りを見回しながら警戒していると上から声が降ってくる。

 

「やぁルーク」

「……その声は…………」


 久しぶりに聞く懐かしいその声を聞いて、嬉しさ悲しみ……そして怒りを感じさせるものだった。


 私に沢山の魔法を教えてくれて、家で居場所のなかったところを助けてくれた先生……。


「ダインスレイブ……」

「もう先生とは言ってくれないのかい?」

「どの口がそんな……ッ!!」


 私は殺されたルーフェ師匠の事を考えていた。


 確かにこの人は私にとって幼少期を支えてくれた先生だった。


 けれど、私に新しい魔法の別の使い方を教えてくれて、足りない部分を補ってくれたルーフェ師匠が殺されたのは紛れもなくこの人のせい。


 私はそれを許すわけにはいかなかった。


「先生だろうと関係ない……今敵なら、倒すまで!!」

「もう少しお話をしたかったんだけど、無駄みたいだね。でも、君にできるかな?私は君の師匠だよ!!」


 ダインスレイブは漆黒の炎をその手に纏った。


 昔とは違う不気味で気持ちの悪い魔力……。


「いやな魔力を纏うようになりましたね」

「いやいや、元からこういう魔法を使うよ?まあでも炎にこだわり始めたのは誰かさんの影響かもしれない」


 昔の私ならダインスレイブにそんなことを言われたら嬉しいと胸が躍っていたのかもしれない。


 だけど今、そんなものはない。


 だって私にはもう既に大切な仲間が居るんだから!!


「寂しいね。まあいいや……君を捕まえて魔導王様への供物にしなきゃいけないからっ!!」


 漆黒の魔力を私に向かって投げつけてくる。


 膨大な魔力を纏っているせいでとてつもなく速い一撃になって襲って来た。


 それでも暗闇から出たすぐに「焔纏い」を使っていたので身体能力は強化された状態で避ける事は出来た。


 しかし私がその攻撃を避けると予想していたのかダインスレイブはその隙を狙って襲ってくる。


 両手に漆黒の炎を纏っての殴り合い。


 この人がこんな戦い方をするのは意外だったけど、それは私の得意分野だ。


 血のように赤い炎を両手に宿して炎を纏う拳をぶつけ合う。


 私の魔法は固有魔法なので一般の強化魔法よりは強力なはずだけど、突破できない!?


 というかギリギリのラインで私が負けているのを感じる。


「くっ……」

「固有魔法使いが聞いて呆れるね。そんなんじゃ私の弟子は務まらないよ」

「だから……もう……弟子ではありませんっ!!」


 私は渾身の一撃を右手に纏ってそれをダインスレイブにぶつけた。


 これほどの力で殴られるとは思っていなかったのか、ダインスイレブが一瞬よろめく。


 私はその隙を逃さない。


 この人を倒す魔法はルーフェから教わった相手の魔法を真似する技術を使う。


 黒い炎を右手に纏ってダインスレイブと全く同じ威力でそれをお腹にぶつけた。


「うぐっ……⁉」


 ダインスレイブは後方へ思いっきり吹き飛ばされて、地面に膝を付く。


 しかしすぐに立ちあがり、不敵な笑みを浮かべる。

 

「やってくれるね。ルーク」


 この程度なら私はダインスイレブに負けることは無い。


 だけどこの人がこの程度で終わるはずがない……何故ならルーフェを相手にタイマンしていた人だからね。


 油断はしない……ちゃんとあの人のお墓の前で土下座させるまではね。


 そんな強い意志を持って、この戦いに臨んでいる私に気づいたのかダインスレイブは驚いていた。


「やる気みたいだね。仕方ない……これだけは使いたくなかったんだけど……」

「まさか先ほどまで本気じゃなかったというの?」

「これはルーフェを一度は追いつめた魔法、君に突破できるかな?」

「師匠を追い詰めた魔法…⁉︎」

「……どっちが師匠か教えてあげよう。現れろ漆黒獣達よ!!」

 

 ダインスレイブはそう呟くと大きな魔法陣が足元に現れて、そこから魔物がうじゃうじゃと出てくる。


 その中には視た事のある大きな岩の魔物が姿を現す。

 

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