表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
325/380

第326話 一つの可能性


 タイヨウが怒っている理由はやっぱり、あの戦いを引き起こした張本人であるムーンが自分の娘だからだろう。


 一番自分が解決しなければいけない問題なのに、それを解決するどころか偉大な魔導士を1人失ってしまった。


 ルーフェの事はタイヨウも過去に自分の護衛として付けていた時期があり、それなりに親しい仲だったという。

 

 それを失った事による怒り、そして自分の身内がやった重大な罪に対しての悲しみ。


 タイヨウがこの場で一番複雑な気持ちを抱いているは間違えない。


 そんなタイヨウは私の方を見るなり、少し表情が明るくなる。


 それは過去の記憶を持つ私に再会した喜びか、はたまた何かいい案が浮かんだか……。

 

「ルークが来たのなら、まだこの戦争に勝つ方法はあるかもしれない」


 どうやら後者みたいね。


 タイヨウ何かいい案を提供してくれようとした時、そこへミツキが割って入ってくる。


 いつもの高圧的な感じじゃなくて落ち込んでいる様子だ。

 

「い、急ぎ過ぎではないでしょうかタイヨウ様……」

「ミツキ……君はルークと賭けをしていて、早く終わらせたいはずだったんだがな」

「そ、それに関しては見ての通り……負け……ですし」


 ミツキは悔しそうに拳を握っていた。


 しかしいつものような強気な態度はそこにはなく、俯いて私と目を合わせようとしない。


 賭けに関しては今の状況でそんなことは気にしていない。


 それに賭けの内容的にミツキの手に渡らなければいいという考えなので、正直そこまで重要なモノじゃないと思ってる。


 一瞬だけサツキの顔色を窺う。

 

 ……なので今は賭けなんかよりもやらなければいけない事を片付ける事が優先。


「タイヨウ様!……私は今すぐムーンを倒しに行くべきだと思います」

「自信があるのかルークよ」

「自信も何も……聖獣の力がほぼ全て、魔王教団へ渡りました……戦わないといけないんです!!」

「残りはアマノ様だけ……確かにムーンがアマノ様の羽を持っていれば最悪な結果をもたらすかもしれない。どうやら俺達に考える時間は無いようだ」


 このままじっとしていたら魔導王が復活するかもしれない。

 

 タイヨウでもアマノの羽や魔力をムーンが持っている可能性は捨てきれないみたい。


 もしそうなったら、悪い女神の目的が果たされる。


 そうなったら世界はどうなるのか分からないけど、あまりいいモノじゃない!!


 少なくとも魔王教団のやってきたことを考えると良い結果にはならない。

 

「動ける者のみで再びエステリアへ進軍する」

「タイヨウ様は何か作戦とかは……」

「あったがルーフェが必要だった……。でもお前達がその代わりをしてくれるのなら……まだ何とかなるはずだ」

「何かあるんですね……分かりましたでは行きながら教えてください!!」


 戦いを終えた後にまた戦場へ向かわなければいけない。


 そんなことを強いる事になるけど、再びルエリアのエステリア街へ向かう。


 しかし、先ほどの戦争で疲弊した兵士や負傷した人達はジャスミンの街に置いて行くことになった。

 

 なので人数は私達が追加されても最初の半分になってしまう。


 人数差はむしろ不利になったと考えていい、そんな状況下でもタイヨウはある1つの希望を持っていた。


 それは私の魔法だという。


「不死鳥の炎」なら薬で別の人格に操られている人達を元に戻せる。


「お前が居れば、人数差を簡単に埋める事が出来る」

「そ、そう……うまく行くでしょうか……?魔力量には自信がありましたけど、ルミナに取られたので」


 おそらくルエリア国民のほとんどが薬を飲まされているはず。


 ムーンの話だと一般人を何人も薬で操っている……。


 エステリアの街だけでも50万人はいるとして、さすがにそれら全員を治癒の炎で癒すことはできない。


 魔力がすぐに尽きる。

 

「そこで俺が持ってきたアイデアなんだが俺の魔法は炎の増大なんだ。それを使って治癒の炎を増やせないか?」

「タイヨウ様はそういう魔法を使うんですね」

「名前の通り太陽のようなシンプルな魔法だろ?」


 炎を増やすという意味はよく分からないけど、太陽が昇っている時に炎の魔法を使うと夜や曇りなどの天気の日よりも炎の量も温度も高い。


 微々たる程度ではなく、明確にそれを感じる事はある。


 太陽という自然から発せられるものにも魔力が含まれていて、それが同じ属性の魔法に追加される。


 大地の魔力と同じもの……それをタイヨウは魔法として使う事が出来るという。


「太陽から与えられる魔力を大きくする。お前の魔法とこの魔法を合わせれば、太陽の下に居る人間全てに治癒の炎を与えられる。ただしエステリアの街の住民全てに治癒を施すとなると……俺はその魔法を街の中央で発動しなければならない。範囲を限定してその強度を上げるためにな」

「そ、そんなこと……さすがに無理じゃ……」

「いや、やったことがあるから分かる」

「え……?」

「治癒の炎は今まで会ってきたお前全員が得意な魔法だったからな」

「へぇ……」


 この世界の前世の私って魔法に一貫性しかないのかな。


 多分炎帝刀アマテラスも最初から持っている剣だろうし、タイヨウの魔法で強化される事は分かった。


 強化どころか太陽の下に居る人達なら癒せるようになるんだし、別魔法とも言える。


 これがあれば多くの人達を助ける事が出来て、向こうの戦力の9割は潰せる。


 先ほどまでの無理をしてでも突破するしかない……そう思っていたけど、まだ一筋の希望が見えてきた。


 ルーフェ師匠の仇を取るために私達は再びルエリアの地へ足を踏み入れる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ