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第324話 最後の四屑


 まるで私達をあざ笑うかのようにムーンは私達が雪山へ行っている間に起きた沼地での話を終えました。


 ルーフェが死んだ。


 そんな与太話を信じる程、私は単純じゃない。これは私の精神を揺さぶるための作り話……そうに決まっている!!


 だから私は冷静を装ってムーンの精神攻撃が無意味だとアピールした。

 

「信じるとでも?」

「それならハーベスト帝国のルエリアに一番近いジャスミンの街へ行くと良い。そこで真実を知ることができる。まあ私さっきの話が真実なんだけどね」


 ジャスミンで一体何を知ることができるのか……吐き気がするほどの不安を抱く、嘘だと思っている一方で胃が掻き回されるような気持ち悪い感覚を覚える。


 しかしそこへ大きなお腹を揺らしながら、頼りがいのある背中を私に向けて、ユウリが割って入ってくる。

 

「それは……絶対にないはず……よ!!」

「ほう?お前には何か確信があるみたいだな魔体症の子」

「その話が本当ならどうして自分の魔法の正体を明かすの?話の内容に使える魔法の嘘の魔法を混ぜても魔法の概要が違えばそれが嘘だとバレる。ルークは固有魔法だろうが使えるんだから、それで使えなかったら嘘になる」

「月魔法は高難易度魔法だけど、まあその子なら使えるでしょうね」

「本当はないんでしょそんな魔法……だってここで言う必要が無いんだもん」

「……」


 自分の魔法を教えてしまったら対策される可能性がある。それはどれだけ馬鹿な人間でもわかるはず。


 ムーン程の魔導騎士(エーテルナイト)がわからないわけない。

 

 しかし彼女から伝わる自信は本物にも見える。


 ムーンはそんなユウリの指摘に不敵な笑みを浮かる。

 

「この話が終わったら使ってみればいいわ。ルーフェが解き明かした概要は月の魔力を使った魔法。異世界の神様の力を借りたものでこの世界の住人では扱えない。魔力と重力を扱う魔法。他には魔力を月の形に見立てて斬撃を飛ばすことだってできるわ」

「……な、なんでそんなことを教えるのよ!!」

「逃げた紅蓮達にどうせ聞かされるから」

「……は?」

「どうしてここで話のかですって?決まっているじゃない!!命がけで私の魔法を紅蓮に伝えたルーフェの努力を踏みにじるためよォ!!!!」


 ムーンの狙いは最初から傲慢にも私に魔法を教える事でも精神を揺さぶる事でもなく……ルーフェの努力を踏みにじる事だった。

 

 死ぬ気で魔法を探ったのにこういう形で本人から明かされる。


 私達は今からジャスミンへ向かうはずだった。きっと紅蓮達もそこに居るから話を聞かされるだろう。

 

 その時どんな顔をして話を聞けばいいんだ。


 命がけで伝えられても、私達はもう知ってしまった。


 ……これがムーンという女のやり方か!!


「きもっ」


 フーリアでさえ、悪趣味な性格のムーンに引いていた。

 

「ん?聞き捨てならないなホワイト家の当主にもなれなかった落ちこぼれのくせに」

「はぁ?まだチャンスはあるけど?」

「無いよ。ホワイト家は潰れているからね」

「何を……」

「だってホワイト家がつぶれるように仕向けたのは私。本当はフロストにあげようと思ったんだけど、二度もあなた達に負けたから要らなくなっちゃった」

「お前が……?私達が小さい頃、魔物をホワイト家とバレンタイン家の街に放ったのは……!!」

「……まあ指示をしたのは私よ」

 

 私はそんなことも知らずにいつの間にか仇に会っていた……?

 

 フーリア達を狙われて本気で怒ったことはあるけど、そういう怒りとは違う。

 

 殺意……私は初めてこの世界で本気で人を殺したいと思うようになった。


 ルーフェの死を聞いて悲しくて悔しい気持ちでいっぱいだったのに……。


 私はきっとこれでもかとムーンを睨みつけた。

 

 多分、結構怖い顔をしていると思う。


 だけどムーンはそれを見てむしろ笑っていた。さらにそれが私の怒りを刺激する。

 

 コイツに何か言ってやらないと気が済まない。


 頭の中で思い当る言葉を投げつけようとしたその時だった――ショナが私達の前に立ちはだかる。


「ルーク、フーリア!ストップだよ!!」

「ショ、ショナ?」


 話に割って入ったショナはムーンを見るわけじゃなくて、私とフーリアの目を交互に見ていた。

 

 まるで自分が話す相手はこんな奴じゃないと言わんばかりに……。


「絶対にこれ、あのムーンって嫌な人の策略だよ」

「でも……あの話が本当なら嘘を付く必要も無い……」

「そっちじゃなくて怒らせることが……だよ!!」

「え……?」

「考えても見てよ。ルーフェさんが……死んで……それをこんな形で伝えて喜んでいる人だよ!絶対、2人の精神を揺さぶるためにやってるだけだよ」

「でもそんなの意味が……」

「多分無いんだと思う。ルーフェさんが死んだことも結局知ることになるのなら同じ事だよ」

「……」


 ショナの言う通りだ。

 

 ここで私が怒って何か言葉を吐いた所で、それを見に来たであろうムーンはそれが狙い。


 少し考えれば分かる事だけど冷静さを失っていた。

 

 もちろん無理もない事を連続で伝えられたからだけど、そういう事ならここで怒りのままに言葉を使っても向こうの思う壺……。


 ここでムーンが言って欲しくない言葉……それを最後に伝えて、ジャスミンの街へ行こう。


「ルーフェ師匠(・・)の命がけの成果を無下にしたつもりだろうけど、全てを無かったことにはできないよ」

「……ほう」

「だってルーフェ師匠(・・)の想いは私の中にずっとあるんだから!!」

「……じゃあ来ればいいよ。絶望しながらエステリアの街……その学校に来い。この魔王教団最強にして教祖……四幹部、四屑(フォースレイ)の1人ムーンが相手をしてやろう!!」

 

 

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