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第317話 最悪の結果


 ルエリア王国エステリアの街には王族の住むお城が存在します。

 

 そのお城の玉座には現在、国王は座っていませんでした。


 王座に腰を下ろしているのはクレストの兄メフィスト。


 メフィストは足元の血の水溜まりと柱や壁に横たわる亡骸を見て冷たく嘆く。


「掃除を誰かにさせないとな」


 するとそんな言葉にある不気味な女性が反応します。


「あら……」


 たったその一言だけでメフィストは身体を震わせる。

 

「いいじゃない。血……とっても綺麗よ」

「あ、あなたの感性を否定するつもりはありませんが……匂いとか苦手なんです」

「なら仕方ないわ。ルミナ、お掃除しておきなさい」


 メフィストのためにムーンはルミナを使って玉座の掃除を任せました。


 ルークと全く同じ人の形を持った妖狐ルミナは血と亡骸だけを炎で焼く。


 この血は国王とメフィストの弟や妹達や側近など様々な人々のモノ。


 玉座を手に入れるためメフィストはムーンと手を組み、この悲惨な惨状を作り上げてしまった。


 先ほどまで血の水溜まりや、幼い子の腕や足などが部屋の端に落ちていましたが、それをルミナは炎で焼いてしまう。

 

 バレンタインの固有魔法で焼くモノを指定することができるのでお城を燃やさずに人の身体と血だけを焼き尽くした。

 

 ルミナはそれを無表情で行う。


 何も感じていない……何も想う事も無い。


 そんな恐ろしい程の無感情。


「良い魔法ね。魔導王様の固有魔法は」

「魔導王ではなく、女神ですが……あっ……」

「どうしたのルミナ?」

「アーミアに仕込んでいた尻尾が戻ってきました」


 ルミナはアーミアが雪山へ向かう事を知っていた。

 

 そしてそこは普通の人間は生きる事すら難しい程、寒い所だと知っていました。


 そこで自由自在に動けるようにバレンタインの魔法と尻尾をアーミアの体内に仕込んでいました。


 アーミアがバレンタインの魔法を使えたのはそれが理由。


 そして今……その尻尾が戻ってくるとルミナは不敵な笑みを浮かべました。


「眷属ムーン。尻尾が最後の聖獣の力を持ってきてくれました」

「あらら?ルークさん達は負けちゃったの?」

「アーミアの記憶を視るとルーク達は生きています。時期にタイヨウ軍と合流するはず」

「これで馬鹿女とそのガキは消えてくれたわね。それよりもタイヨウ……彼らはどうなったのかしら?ルミナ……念のためメフィストの護衛のためここに居なさい。私が様子を見てくるわ」

「はい」

「帰ってきたら……ふふ」


 ムーンもまた不敵に笑う。

 

 その笑顔はまるで恋でもした乙女のように赤い。


 しかし、そんな純粋なモノではないのはルミナもメフィストも気づいています。


 ムーンは沼地に設置しておいた転移魔法を使って瞬時に移動する。


 目的は当然……襲ってくるタイヨウ軍を退ける事。


 瞬間移動することができるムーンは軽い様子見で沼地までやってきましたが、目の前に広がる光景に驚いていました。


「あらダインスレイブ、あなた……負けてるの?」


 膝を付くダインスレイブとそれを見下すようにルーフェが立っていました。

 

 それを見ても少し驚く程度で仲間が傷を負っている事なんてあまり気にしていない様子です。


「す、すみません。俺一人でルーフェくらい倒せると思っていたましたが……」

「一応先程も見に来ましたが……あの時はもう少し余裕があったでしょう」

「で、弟子を思う心ですかね。ルーフェはそれが強いみたいで……しつこく噛みついてくるんです」

「それで負けていると……?つまらない言い訳しないで、想いで魔力は増えないわ」


 ムーンの凍えるような冷たい視線はダインスレイブに突き刺さる。


 これ以上自分を失望させるなという彼女の目の訴えにたじろいでしまう。


「仲間割れ?面倒だし、どっか適当なところでやってくれないかい?」

「これは失礼……しかし、さすがはルーフェと言ったところですか」

「1回出てきて消えて……また出てきて、一体何がしたいんだい君は?」

「所用で席を外しただけ……ようやく聖獣の力の必要最低限は揃ったので」

「は、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!?そんなわけがないだろ!!まさかルーク達が……!!」

「ふふ、時間稼ぎの必要もなくなったので……そろそろこの戦争を終焉に導きましょう!!!!」


 ーー


 その頃、雪山では……。

 

 聖獣は消える直前に固有魔法と力を私にくれたけど、一体どこへ行ったんだろう。


 この場にはもう私たちと山蜥蜴しかいない……。


「は……ハクシュッ!!」

「と思ったけど、一応まだ魔王教団が居たわね」

「ひっ……」


 魔王教団が雪山へ進行できた1番の元凶……私の魔力を追ってここまで来たという。

 

 幼い少女とはいえ面倒な魔法を持っている。


 フーリアはハマルの服の襟を掴む、しかしあまりの寒さで襟が凍っていて握った拍子に割れてしまった。


 それに驚いたハマルはとてつもなく冷たい氷の床に尻もちを付く。


「うぅ……冷たい……」

「この寒さでどうやってそんな軽装で来られたのか知らないけどね……魔王教団なら容赦しないんだから!!」

「どうして……アーミア様が居なくなってから急に寒さが増して……私は奴隷で命令を聞くように強制されてて……」

「問答無用……神秘剣のサビにしてやる!!」

「殺さないでぇぇぇぇえええええ!!」


 少女の悲痛な叫び声に私はフーリアの手を止めてしまった。

 

 こんな幼い子の命をフーリアの手に掛けたくなかったからだ。


 それにもしかしたら色々なことを聞けるんじゃないかと思っている。


 だってこの子は幹部の二人と行動を共にしたことがあるからね。


「と、話を聞く前に街に戻らないか?」


 サツキにそう提案されてハマルの状態の悪さに気づく。

 

 私の魔法で癒せばなんとかなるけど、このままだと凍え死んでしまう。アーミアが消えてからハマルの顔色は酷くなっていく一方だった。


 アーミアが何かの魔法を使っていたのかな?


 詳しい話を聞くために私たちは一度、街に戻る。

 

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