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第311話 奥の手


 ネプチューンは剣と同化してしまった。


 髪は水面のような透明感があり、左右で長さが違う。服もなくなっているけど、身体も海のように水だけになっていてそれはあまり気にならない。

 

 服がなくても身体が水でできているから、裸だけど裸には見えない。

 

 左右の違う水の髪は10本に枝分かれしていて、触手のようにうごめいている。

 

 アレが自由に動くのなら、1本の水の鞭が10本になって襲ってくるという事……。

 

 水の身体に水の髪、それらをネプチューン自信の目でゆっくりと眺めていた。

 

「……見ての通りこれをすると人ではなくなってしまう」

「それは……」

「これは魔導騎士(エーテルナイト)なら誰でもできる最終手段……身体を自分の持つ剣と同じ属性、性質に変化する。魔力も纏うことができる」


 最終手段と言うのは人を辞める事だったみたい。

 

 その代わり剣を抜かなくても身体が剣と同じ属性と性質を獲得する。


 剣の性質……それは物を斬るってことも含めれているだろう。さらにネプチューンの剣は鞭のように自由に動かせる。


 斬ると柔軟性のある剣を10本も剣を握ることなく操れるようになった。

 


 さらにあの身体は水に変わったけど、触れれば剣のように斬れてしまう程、鋭利になっている。

 

 触れる氷の壁は水の斬撃で傷ついて、氷の地面はネプチューンが歩くたびに削れていた。

 

「触れたらその身体の部分は細切れになるわぁ……あっ、でもその国宝防具はなかなか切れ無さそうね……それなら……!!」

「――ッ!!」


 その瞬間、左足首に激痛が走った。

 

 身体がよろめいて耐性を崩す……だけどギリギリで堪える事は出来た。


 足は辛うじて繋がっているけど、目にも見えない程の速さで深く斬られた!!


「治癒魔法 不死鳥の炎(フェニックスフレア)!!」


 治癒の炎魔法を使って深く斬りつけられた左足の傷を治す。


 骨まで到達していないけど、一瞬で肉を抉られた!!

 

 これでも珍しい固有魔法の1つを扱えるんだ……最悪切り離されてもくっつけることはできる。


 しかしそれでも痛みはずっと残っている。

 

 それに治癒魔法は治す傷が深ければ深い程、消費魔力も多くなってしまう。


 魔力量に自信があるけど、こんな攻撃を何度も受け続けて治していたらいずれ力尽きる。


 それに何度も斬られるなんて痛みに耐えられるとは思えない、多分魔力よりもどこかで精神的に限界が来て魔法が使えなくなる。


 するとそんな突然の攻撃に怒りを覚えたサツキが剣を握ってネプチューンに斬りかかる。

 

 ネプチューンの身体をスパスパッと斬るが、ただ水を斬っているだけでダメージを与えられない。


 身体が水になっているせいで剣では太刀打ちできない。さらにサツキの剣も水の剣だからダメージを与えられない。


「クソッ!?」

「ふふ……切り裂け魔剣ネプチューン!!」


 ネプチューンは小さく呟くと小さな傷がサツキの身体中に現れる。


 たったの一瞬でサツキの身体を浅く斬り刻んだ。


 サツキの水の剣は強力な攻撃を受けても傷一つ付かなかったけど、それを貫通してサツキに攻撃が伝わった。

 

 サツキは突然の事に驚きながらも後ろに飛んで攻撃を回避する。

 

「あぶねぇ……でも一発だけなら平気だ!!」

「それはどうかしら」


 プチューッ!!

 

 気づいたらサツキは一瞬で数百という傷を負わされてしまい、体中から血が溢れている。


 私は治癒魔法でサツキの身体を癒した。

 

 全身に付けられた傷は浅かったから治癒の炎を少し受けただけで完治する。しかし先程も言ったけど痛みは無くならない。


「痛っ……マジかよ。ありがとうルーク!!しかし軽い攻撃だが面倒だな。治癒が無ければ血を大量に流して死んでいた……」

「こちらとしては細切れにしてやろうと思ったんだが……どうやらまだこの力に慣れていないみたい」


 サツキの生死に関してはあまり興味が無い様子だから殺すことになんの躊躇もないはず。


 あの攻撃で仕留めきれなかったのはあの水の身体に慣れていないからだという。


 なら慣れてしまう前にここで仕留める。

 

 ここまで使ってこなかったけど、炎帝刀を解禁する。


 いくら異常気象の雪山でも炎の剣を使うことは避けたかった雪山が崩れたら大変だからね。


 でも今もうそんなこと言ってられない!!

 

「太陽の様に光輝けアマテラス!!」


 炎帝刀を空に翳す様に構えると光り輝き熱を放つ。

 

 ただの炎の熱ではなくて攻撃力を高める。


 後、寒さで動きが鈍くなった仲間を少しでも動きやすいようにする目的もある。


 ただ一つ驚きなのが、この熱を受けても尚……この氷の洞窟は溶けなかった。


「寒さは多少感じてるけど、これほどなんて……」

「……」


 体感温度は秋の前半のような肌寒さで私にはむしろ快適なくらい。逆に他の人とは違い常に高い温度を保つこの身体で、その寒さを感じることに驚いてしまう。


 これで少しはサツキ達も動けるようになるといいんだけど……。


「凄い熱……だけど、なんだろう。身体がさらに軽くなったわぁ!!」

「え……」


 ネプチューンはそう言うと水の斬撃を間髪入れずに放ってくる。


 水は炎帝刀に近づくと動きが少しだけ鈍くなって蒸発する。

 

 蒸発するには炎帝刀に触れさせなければいけない。

 

 鈍くなってもまだ速い動きをキープしている水の斬撃を受けて、回避出来ない所は致命傷を避けるようにして動くのがやっとだった。

 

 そして浅い傷を炎で癒す……だけど間に合わないかも……。

 

 手数が多すぎる!!

 

 また足や顔に傷を負わされてしまったけど、むしろこの程度で済んで良かった。


 治癒の炎で身体を焼いて傷を癒す。

 

 早く癒さないと傷口から出てきた血が凍りついて、傷を治すときの妨げになる。早く展開すればするほど魔力消費も激しい。


「くっ……早く終わらせないとまずいかも」

「……ルーク」

「サツキ?どうしたの?」

「いやさ……どうしてアイツは急に動きが速くなったのかなって」


 そんなことを私に聞かれても困る。

 

 炎帝刀の力を解放したら急にそうなったのは確かに変だけど、水の身体に慣れたタイミングだったと言われれば何が正しいのか分からない。


 結局炎帝刀の熱があれば水なんてすぐに蒸発するわけで、実際はこっちが有利に進めることができると考えていた。


 蓋を開けてみれば何故かむしろ向こうが強くなってたけど……。


「それってさ……炎帝刀のせいなんじゃないか?」

「何を言って……」

「あいつの動きが最初鈍かったのは慣れてないからと言っているが、水を人であるときからあんなに器用に動かせたんだ……早々変化があるとは思えない」


 確かにそれはそうだけど、サツキは何を言いたいんだろう。

 

 こっちは余裕が無いんだから何かいい案があるのなら教えて欲しい。

 

 異常気象のせいで身体を温めないと高い温度を保てなくなる。


 焦りが出てくる私に対してサツキは至極冷静だった。

 

「まさにそれだ……この異常気象、水は本来なら凍るはずだ」

「それは魔力でコーティングを……」

「だとしても高い魔力を持つルークに少しだけ寒いと思わせる程の気温だろ?」

「……何をすればいいの?」

「魔力と炎帝刀を納めてくれ」


 戦いの最中サツキは私に剣を納めろと言う。

 

 しかも魔力まで抑えてしまうと私はただのか弱い女のになり、この寒さに耐えられなくなる。


 動きが鈍くなって満足に戦えない。


 だけどサツキの真っ直ぐな目を見つめると従いたくなる。

 

 なんと言うか頼りにされている感じで嫌じゃない。


 なんだか変な気分だけど……ここはサツキを信じるわ!!!!!!


 戦場の中、私は自らか弱い女の子になる事を選んだ。


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