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第305話 異変


 どうやらフーリア達の戦いは終わりそうね。

 

 剣と剣がぶつかりパリンッという音が聞こえたのでどちらかの剣が折れてしまったのかもしれない。


 私はフーリアが勝ったと信じてネプチューンを倒す事だけに集中する。

 

 ネプチューンは向こうの戦いになんて興味が無いみたいで、ずっとこちらの様子を窺っていた。

 

「ふぅ……なかなか……やるな」

「そっちこそ二対一でこれとは……俺達もまだまだだ」

「いや、この魔王教団幹部で2番目に強い私をここまで追い詰めたのだから誇っていい」


 私達が全力で戦い続けているのに、まだそんなことを言える余裕がネプチューンにはある。

 

 こっちは気を抜いたら殺されそうで常に緊張しながら戦っているというのに……ネプチューンは一切そういう雰囲気を見せない。


 先が見えない戦いに私達は疲弊する。

 

 サツキも手ごたえのない戦いを続けていて精神的に苦しいはず。

 

 おまけにお互いに水を使うので相性の良いネプチューンの攻撃を毎回受けてくれる。


 そのせいで彼に負担が掛かりっぱなしだった。

 

 全部の攻撃を受け止めきれないわけじゃないけど、何故かサツキは一撃も私に向けさせないようにしてくれる。

 

 当然私も本気で魔法を使っているんだけど、炎なので水にかき消される。

 

 純粋な相性の悪さもあるけど相手の物量が計り知れない。


 ネプチューンの魔法で私達の空間だけ海に囲まれているように足元には水が侵食している。


 炎を使えばその足場の水が吹き荒れてかき消してくる。


 それなのに他の戦っている子達の方へは水が行っていない。


「アーミアさんは怒ると面倒だし、もう一人の子は……ふふ、水が苦手なんですよ」

「だから俺達の空間だけ水浸しにしているわけか」

「後、逃がさないためとアーミアさんの監視のために付いてきましたが、こんなにもいい獲物が居るから……。私も張り切ってしまうわ!!」


 水の空間は私にとって毒にしかならない。

 

 ずっと冷たい水に浸かっているせいで足元の寒さが伝わってくる。


 何度も言うようだけど私は熱さも寒さも感じにくい身体をしている。

 

 二人ほど動いていないのに私が一番息を切らしていた。


「寒さを感じないんじゃなくて限界が他の子より離れているだけで、こんな訳も分からない程寒い場所でずっと水に浸かっていればさすがに冷えるのね」

「実質氷水の中に居るのと変わらないからね。でも……私の炎はそんなんじゃ消えない!!」


 炎を一時的に爆発的に発生させ、それをネプチューンに放つ。

 

 先ほどまでよりはこの水の空間で炎は生きていたけど、やっぱり水の圧力に押しつぶされて消えてしまう。


「くっ……」

 

 私の炎を全て打ち消したネプチューンは不敵に笑う。


「ふふ、そんな服を着ているからでしょ?可愛い子ぶってないで温かい服を貰えばよかったのに」

「どちらにしても同じ……それにこれは国宝級の防具なんだから……!!」

「国宝?アマノに伝わる焔巫女の……?噂には聞いていたけど、可愛いのね」

「知っていたの?」

「そりゃムーン様はタイヨウ様の肉親だし」


 ムーンから話を聞いていたのならこの服について知っていてもおかしくない。

 

 情報を沢山持っている分、ムーンはアマノに対しての対抗策を用意してきているんだろう。


 しかし逆にムーンはこの装備の存在をネプチューンに伝えているということは、少なくとも驚異に感じているはずだ。

 

 実際、私はこのネプチューン戦で怪我をほとんど負っていなかった。


 何回か水の鞭を受けてしまったけど、服は破けるどころかホコリすら被っていない。水も完全に弾いていた。


 未だに綺麗な巫女服を見てネプチューンは睨んでくる。

 

「その装備……クソムカつくわね」

「降参してくれるのなら、悪いようにしないけど……」

「笑止。それにそちらもまた決めてに掛けている……時間を掛れば剣術で勝る私の方が有利」


 持久戦は望むところだ。

 

 魔力量なら誰にも負けない自身はある。


 しかしそれは一人の場合に尽きる。

 

 サツキの体力を考えると長時間この場で戦っていられないはず。


 私も魔力こそ余裕を持っているものの、肉体的な体力が限界を迎えそう。この寒さは今の私にはどうしても堪える。


 ただの水なら何も感じないのに……やはりこの場所は異常だ。

 

 早くケリを付けないと最悪足を切り落とされて、魔王教団へ連れてかれてしまう。


 それだけは嫌だ……!!


 せっかく可愛いかわいい女の子に生まれ変わったのにその一部を失うなんて……この綺麗で細い足を失いたくない。

 

 だって凄く可愛くて綺麗で……まるで自分のものじゃない……。


 ……アレ?なんだこの感情……私はルーク。

 

 ルーク=バレンタインだ。この身体は私のものだ……だけどどこかに違和感を覚える。


 先程から自分が元々男だったことをだんだん鮮明に思い出せている気がする。

 

 可愛い女の子に転生しても最初はあまり嬉しくなかった。


 この容姿は転生前に女神が私の前世の理想の女の子に面白半分でしてしまったから。それに前まで前世の記憶が少なくて元から自分は女であると意識して生きてきた。


 だから女の子の身体なんて同性のものだ。

 

 なのに何だか気持ちが悪いほどの高揚感を感じている。


 好きな人には一度はなってみたい。そんなことを考えたことは確かにある。


 それを私は徐々に思い出しつつあるということ……いつから……?


 そういえばずっとそうだったけど、私が前世を強く感じるのは決まって女神ーー。


「おいルーク!!」


 そんなことを考えていたせいでボーッとしていた……。


 隙を見逃さないネプチューンの攻撃が私に向かってきて回避できない。


 しかも丁寧に最初に狙うと宣言した足を切断するような鋭い水の刃を鞭のように操って放つ。


 せっかくかわいい女の子なのに……いや、違う。


 私はこの足で皆と一緒に歩いていくんだ。


「私はルーク=バレンタインだ!!」


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