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第303話 今までの不安


 ルーク達が戦っている最中、その横でもフロストと因縁の対決をしているフーリアとショナ。

 

「ショナとっとと終わらせるわよ」

「フーリアは早くルークを助けに行きたいんだね……でもこの人結構強いよ!」


 ショナはフーリアにいつも通り振り回されていますが、その間にフロストの魔の手は近づいていました。

 

 フロストの神秘剣がフーリアに振り下ろされます。

 

 フーリアは振り下ろされる剣を受け止めたモノの、そのパワーに押されていました。

 

 このまま一人でフロストの攻撃を受け止めるのは不可能……しかしフーリアは分かっているのにいつもの強がりを見せる。

 

「……っ!どこがよ!!」

「……神秘剣を手にしたのにこの程度か、ホワイト家の面汚しめ!!」


 フロストの打ち込みはホワイトの街で戦った時よりも鋭く、強力なものに育っていました。


 魔王教団に本格的に加入してから幹部クラスの人達を鍛錬をしていました。

 

 6人チームの中で一番強いサツキでさえもタイマンで勝利を捥ぎ取るのは難しい程に彼女もまた力を付けています。


 さらにその力の根源となっているのはフロストとアーミアの人格が1つに混ざろうとしていたから。


 本来であれば剣士の身体に魔導士の魂を下すことで魔導騎士(エーテルナイト)と同じ力を手に入れられます。

 

 より魔導騎士(エーテルナイト)としての力を身に付ける事ができるようになって、尚且つフロストはアーミアの身体に慣れてきた。


 剣士時代の剣術をアーミアの身体で再現できるようにこれまで鍛えていました。

 

 その結果、神秘剣持ちのフーリアを簡単にいなせる程の実力を見に付けてしまう。

 

 全盛期ほどではありませんが、まだ子供のフーリアには荷が重い相手でした。


「ほらだから言ったじゃんっ!」


 ショナはたまらずフーリアのアシストに回る。

 

 しかしそこで事故が起きてしまう。


 狭い空間で雷の剣の力を使うと、電撃が宙を舞い、フロストだけではなくてフーリアにも当たってしまいます。

 

 静電気程のピリッとする程度の電撃ですが、寒い中握っている手にそれはとてつもなく響いてしまう。

 

 フーリアは神秘剣を落としてしまった。

 

 その隙を当然、フロストは見逃さない。


「ちょっと……!」

「隙ありッ!!」


 フロストの無慈悲に向かってくる剣をフーリアは受け止められない。

 

 それをショナが雷を筋肉に纏わせることで無理に動かして受け止める。


 ショナの筋肉がビリビリと音を立てています。

 

 当然痛みも想像を絶するものでしょう。


 それでもショナはフロストをその場から弾いてフーリアの剣を死守しました。

 

 フーリアはそれを拾って体制を立て直します。


「こんの……!!」

「ちょっとフーリア!一緒に戦おうよ~!」

「ショナが居たら雷のせいで剣を握れなくなるじゃない!」

「そ、そんなに言わなくても……」


 2人の仲は最初に比べればとてもよくなりましたが、フーリアは根本的に自分で全てを解決しないと気が済まない性格なのは変わりません。

 

 さらにショナのサポート向けではない剣も相まって一緒に戦ってくれない。


 フーリアが攻撃を受けて吹き飛ばされては、ショナが追撃に対して受け止める。

 

 そこまでは良いのですが、ショナが攻撃を受け止めたすぐ後にフーリアが割って入ってきます。


 ショナはフーリアにまた怒られるかもしれないと危惧してすぐにその場を引く……。

 

 そんなことを2、3回繰り返すといつもは温厚なショナでも怒りの声を上げます。


「フーリア!一緒にやってよっ!」

「うるさい!私は1人でこいつを倒さなきゃいけないの……ホワイト家、時期当主になるんだから!!」

「フーリア……」


 相手がホワイト家の歴代当主の1人でなければ多少は手を出しても文句を言う事はなかったかもしれません。

 

 そんな2人の戦いの様子をショナはじっと眺める事しかできませんでした。


 戦いの行く末は目に見えるように明らかで、魔導騎士(エーテルナイト)として覚醒したフロストを相手にフーリアだけでは成す術もありません。


 神秘剣の風はアーミアの氷魔法によって防がれてしまい、氷を纏った剣にフーリアの剣が触れると凍ってしまう。

 

 神速の剣を得意とするフーリアにとって触れられない相手は苦手でしかありません。


 それこそショナのような雷を使って相手の動きを封じられる人と組むのが良い。


 そんなことはフーリア自身がよく分かっているのにショナが動こうとするとフーリアが止めてしまう。

 

 しかしここでフーリアの身体にも限界が来てしまう。

 

 そしてその動きが鈍くなった所で再び剣を弾かれてしまい、窮地に陥る。


 フーリアの首を狙って剣は雷が轟くのと同時に攻撃を防ぎます。

 

 助けられて本当は感謝の気持ちがあるのに素直にそれをフーリアは表現できない。


「何を勝手にショナは黙って…………っ!?」

 

 しかしフーリアはショナのある光景を見て絶句する。

 

 剣を剣で受け止めたと思っていたがショナはあえて手のひらでフロストの剣を止めていた。


 そのせいで手から血が垂れていてその痛々しさに表情を歪ませています。

 

 いくら雷で筋肉を刺激して凄まじい力を一時的に得て要るっとはいえ……危険な賭けに出ていました。

 

「何して……!!」

「私にだって……フーリアと同じ赤い血が流れるんだよ……」

「え……」

「ホワイト家がそんなに大事なの?私達は同じ人間で……同じ血を流して同じ時間を学校に入学してからずっと共有してたじゃない!!」

「……で、でもこれは……」

「フーリアだけの問題じゃないッ!!ルークもそうだけど自分一人で抱え込まないでよ……少なくとも私は全部話した上に、復讐相手を手に掛けなかったからね!!!!!!!」


 ショナの怒りの籠った優しい言葉はとげとげしいフーリアの心を優しくなでる。

 

 こんなことを言えばフーリアは怒ってまた言葉という針で差してくるかもしれない。それでもショナは今までルークやフーリアに抱いていた不安をここで吐き出した。


 ずっと悪銭不当するフーリアをただ眺めているだけなのは嫌だから……あの時アステリズムとの戦いで自分を鼓舞してくれたフーリアの力になりたいから。


「……それを言われると私達は否定できないじゃない……」

 

 そんな想いは氷のように冷たいフーリアの心を少しずつ溶かしていた。

 

 フーリアは隣に立とうとするショナを拒絶せずにお互いの隣を守り合う姿勢を取る。


「ほぅ……タカだか小娘2人に私が負けるとでも?」


 フロストはようやく手を組みだした2人を前に臆することはありません。

 

 しかしその言葉に対してショナは先程の不安そうな表情とは打って変わって笑顔で応える。

 

「負けるよ!私とフーリアが組んだら……凄いんだっ!」

「まあ……そういうことよ」

 

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