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第299話 宿敵との再会


 氷が天井が割れて何が降ってきたと思ったらそこから人影が数人分現れる。


 咄嗟にその場から離れて距離を取るが、元々身体の動きが鈍いユウリは寒さも相まって反応が遅れてしまった。

 

 あのお腹だから氷の塊に押しつぶされたところで対してダメージは無いかもしれない……と思う。


 問題はそこが下りてきた人影と重なっているということ。


「ユウリィィィィ!!」


 ショナの叫び声は氷の洞窟に響き渡る。

 

 その声と先ほどの大きな物音によって洞窟の中が若干揺れた。


 ここで暴れたりするのは止めた方が良い……だけどそれはこの下りてきた人影が何者かによる。


 低い砂煙が晴れるとそこには4人の怪しい人達が現れた。


「ようやく見つけたわルーク!!」

「アーミア……!?」


 まさか予想外の人が現れて驚きを隠せない。

 

 こんなのポーカーフェイスが得意な人でも驚かないわけがない……これまで話を聞こうとして逃げられたりしていたわけだからね。


 戸惑ってしまう反面でようやくバレンタインで何をしていたのか聞くことが出来そうね。


 ……私の一番の悩みの種。


 しかしこんな所まで追ってくるとは思わなかった。


「なんだお前達は!!どうしてこの雪山に入れた!?」

「この子がソイツの魔力を追って来た」


 4人の内の1人は奴隷少女ハマルで私の事を指差してそんなことを言いだす。

 

 小さな身体でボロボロの服を身に纏った少女……足は氷の冷たさで赤くなっていて、とてつもなく痛そうだ。


 ハマルは表情にこそ出さないモノの足の痛みや寒さに今でも苦しんでいる。


 だけど皆が厚着で悶絶しているのに布切れ一枚で活動できているなんて……どうなっているの?

 

 そんなことを考えているとフーリアが私の事を”やらかしたわね”と言わんばかりに睨みつけてくる。

 

「どういう意味?ルークがアナタに付けられていたの?」

「私の魔法は数は限定されるけど、魔導士の魔力をどこまでも追える見通しの固有魔法」

「見通しの固有魔法……?そういえばいつかの学校の廊下でルークが外を眺めてアンタの名前を呼んでたっけ……」

「気づかれるとは思わなかった……さすが元焔王」


 そうか今まで沢山の違和感があった。


 最初はこのハマルと会った時から……そして学校……またある時は沼地で元生徒達と戦った時……。


 数々の似た気味の悪い違和感の正体はこのハマルだった。

 

 ついさっき真上に居た時の奴もそうだろう。


 見通しの固有魔法……って言っていたよね。


 それを使ってずっと私の位置を把握していたのかもしれない。

 

 あの場にアステリズム達が現れたのも偶然じゃないみたいね。


「そろそろアンタを連れて来るように言われてんのよ!!」


 アーミアは私に向けてそんなことを言い放ってきた。

 

 アステリズムと同様に聖獣の力を狙いに来たということね。


 どうやら本格的に魔導王復活の時が刻一刻と近づいている。

 

 こんな所にアーミアが来るのもそうだけど、それを確信付けるのがもう一人の存在……ネプチューンだ。


 魔王教団の4大幹部の1人がこんな所にまでやってきた。


 リリィータートルの時は突然現れて、聖獣を倒されてしまった。

 

 結果的に固有魔法を手に入れたけれど、あの時の敵わない相手に出会った絶望感を忘れられない。


 ネプチューンはこんな寒い中で際どい格好をしている。

 

 細い腰に両手をくっつけて堂々とした立ち振る舞いで応える。


「本来ならまだ後なのですよフロスト、いや……今はアーミアですか?」

「私をあのおばさんと一緒にしないで!大体あのおばさんと一緒になっちゃったのも全部ルークのせい……うっ……!!」


 アーミアがそんなことを言い出した次の瞬間、雰囲気が変わった。


 子供のように喚く小煩い小娘から冷静で大人しい女性の感じだ。

 

 おそらくフロストが出てきた。


 おまけにあの時の神秘剣も鞘から抜いている。


「全く……混ざり合うと勝手に出てくるんだ。手をかけてすまないネプチューン」

「いえいえ、そもそもアーミアについてきたのは私です。聖獣を手に入れられなかったので……その恨みをルークさんに返さなくては」

「奇遇だな……私もこの娘には借りがある」

「殺すのは聖獣様の力を奪った後なので……それまでは動けないように四肢でも切り落としますか?」

「いいわね。それ」


 この人達は人の心という物がないのだろう。

 

 なんだかとてつもなく恐ろしいことを軽く口にしている。


 これが冗談なら笑って誤魔化せるのに一切、冗談では無いそんな空気を感じる。


 本当にこの戦いは負けたくない、最悪な命の危機を感じながら私たちは戦闘態勢に入る。

 

 しかしその時だった。


「コイツ ドウ スル?」

「何そのデブ……あぁルークの仲間?」


 忘れていたけど氷の下敷きになってしまったユウリは無事だった。

 

 しかし、押しつぶされていて動けそうにないところをもう一人の怪しいヤツに捕まえられてしまう。


 髪の毛を掴まれて痛そうにユウリは嘆いている。

 

 それを見かねたのかマツバがその男へ向かって行く。


「マツバ!!」

「サツキ、そこの3人はお前たちに任せる。コイツは許せんッ!!」


 マツバとユウリの二人でもう一人の怪しい男を倒すという。

 

 二人なら心配ないかもしれないけど、あの人は何か嫌な予感がする……十分に気をつけてとマツバには念を押した。


 しかし、私達もユウリのことばかり考えている訳には行かない。


 残りの4人で魔王教団3人を相手にしないといけないからね。

 

 しかもその一人は幹部……マレフィックの時とは違い、人数でカバーするには数が足りない。


 それでもここで負ければ私の聖獣の力とこの雪山の聖獣も取られるかもしれない……まさかここで負けられられない戦いになるなんて思いもしなかった。

 


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