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第298話 侵入者


 今から私達が向かう場所は山蜥蜴いわく、聖獣のお腹の中だという。

 

 その言葉を聞いたフーリアは当然の如く憤慨し、山蜥蜴に掴みかかる。身体が鱗に覆われているというのに爪を引っ掛けて揺らしている。

 

 フーリアも痛いはずだけど……それ以上に怒りが勝っているみたいだね……本当に怒らせると怖い子だ……本当に……。

 

 そんなフーリアの様子に山蜥蜴は観念してきちんと説明する。


 「少し言葉足らずでしたね……。聖獣様は魔法で封印されているんです。あ、手を放して出してください。治しますから……」

「封印……?まさかそれを解かないと会えないって言うの?」


 フーリアは聞き返しながら山蜥蜴から手を放し、その手を差し出す。


 すると山蜥蜴は目を閉じると魔力とは違う何かが溢れて来て、それがフーリアの傷付いた手を包み込む。


 鱗を引っ掛けて出来た傷が一瞬で治っていた。


「……治癒魔法?痛みがなくなった。まあ感謝するわ」

「いえいえ、自分で自分を封印しているのでいつでも解けますよ。近くへ行って声を掛ければ出てきてくれるはずです」


 どうやら誰かに封印されたというよりはわざわざ自分を封印してまで姿を隠しているらしい。

 

 もしかしたら本当にタイヨウの言う通りそのままそっとしておく方がいいのだろうか。


 山に登る前、聞こえたあの謎の声が言っていたことは守るべきなのかな。

 

 そんなことを考えて居ると山蜥蜴は聖獣について話し始める。


「聖獣ムジナ様は寂しそうにしています」

「寂しそう……?」

「200年程、封印されていて誰とも会っていないのです」

「どうしてそんな……」

「自分が魔王教団の手に渡らないようにとルーク様に指示を受けたらしいですよ」


 私の指示でそんな寂しい思いをさせていたという。


 もちろん今の私では無いんだけど、そういう話なら完全に無関係ではないよね……。


 今の私の事をフーリア達が知ってくれているけど、タイヨウのように長く生きて生まれ変わりで再会しても私は忘れてしまう。


 タイヨウの事もそうだけど、過去の私を知っている人達や聖獣はどこか悲しい顔をしていた。

 

 あまりそういうのは見たくない。


 だけど目を逸らすつもりもないから寂しいならやっぱり会って話をしなきゃ!


 私の責任だもんね!


「でもどうして口の中……?」

「表現ですよ……その封印されている場所の風景が口の中みたいな感じでして……」

「悪趣味ね」

「ルーク様の趣味らしいですが」

「え!?」


 私そういうグロい感じの空間苦手なんだけどな。

 

 前の私は男の子らしいし、そういう空間が好きだったってことかもしれない。、認めたくないけど厨二だったのかも……。


 心なしかサツキ達の私を見る目が痛い……。

 

 さらに奥へ進んで行くとショナ達がより寒そうに身体を震わせていた。

 

 このままだと私以外全員が凍え死ぬ。

 

 厚着をして寒さに耐性のある服を着て、山蜥蜴の熱で暖めてもらっているのにそれほど寒さを抑えられていないというのはどこか違和感を覚える。


 こんなの自然の気候じゃない。

 

 私達は本当にどこへ向かっているんだろう。


 そんなことを考えていた時だった。

 

 真上から何かゾワゾワとした気配を感じる。


 しかしここは山の中で氷の洞窟の中だ。


 天井には何も張り付いていなければ、タダ青くて冷たそうな氷の塊しかない。

 

 だけどこの気配どこかで感じ取ったものに似ている気がする。


 私はふと寒そうに凍えるサツキを見つめる。


 すると私の視線に気づいたサツキは先程まで寒そうに両手で肘を支えて寒そうにしていたのに堂々とし始めた。


 両手を前に持ってきて腕を組んでいる。

 

 しかし足がガクガクしていて寒いのは分かる。


 なんで強がってるのか分からないけど、サツキにこういう目で見られていると今天井にから感じる不気味な気配に似てるんだよね。


 これ以上見つめていると何か勘違いされそうなので、とりあえず前を向こう。

 

 真上に何か居るかもしれないけど、今のところ何もされていない。

 

 ここは少し様子を見よう。


 私がこの場で最も警戒しているのは残念だけどこの山蜥蜴だ。


 ルミナと同じ力を感じるんだから警戒して当然よ!


 そんな警戒しながら歩いていると突然、山蜥蜴は足を止める。

 

 何も無い所で止まった山蜥蜴を前にフーリアは寒さで声を震わせながら憤慨していた。


「ちょっと何してんの!寒いからとっとと歩いて!!」

「ここです。ここに聖獣様が居ります」

「はぁ!?ただの氷の壁じゃない!!あんた嘘ついたわね?」

「付いてませんよ!!短気だなぁこの子……」

「何か言ったかしら?」

「……先ほども言った通り封印魔法で封印されていますから!」

「どうすれば封印を解けるのよ」

「呼びますよ……全く怖い小娘……。コホンッ、聖獣様~!ルーク様が来ておりますよ~!!」


 陽気な声で叫ぶ山蜥蜴。


 しかし封印魔法は解かれること無く、沈黙の時間が流れる。短い時間でもこの寒さにフーリア達は限界に達している。


「ちょっと!!」

「待ってください!どういうことですか聖獣様ッ!!!!」

「……は?何と話してるの?」

「聖獣様です……会話は可能なのですが封印を解きたくないと言っておられます」

「どうしてよ!ルークに会いたいんじゃなかったの?」


 洞窟の中でフーリアと山蜥蜴の声が響き渡る。

 

 理由は分からないけど何故かここの聖獣は私に会いたくないみたい。ずっと一人で封印されていたから怒っているのだろうか。


 これから仲良くするなんて都合がよすぎるのは分かっているけど、それでも合わなくちゃいけない!!


 そんな揉めている時だった――先ほどの違和感があった天井から大きな物音が響き渡ると氷の塊が雨のように降ってきた!!

 

 同時に天井に人の影が見えて、落ちてくるの分かる。


 誰かがこの雪山に侵入していた!!

 

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