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第296話 和解


 山蜥蜴を倒した直後、拘束していて動けないと油断したら、何故かその拘束が解ける。

 

 一瞬の隙も無い間に山蜥蜴の大きな身体が私に覆いかぶさる。


 身長150の私が2人分くらいのサイズの大きなトカゲに飛び疲れたら潰れてしまう。

 

 振り返ると大きな口を開いて私に向かって来ている。もう間に合わないと覚悟を決めたその時……!!


 目を力強く閉じ続ける事2秒くらい。

 

 短いようで長く感じたその時間の間は痛みなど感じなかった。

 

 ゆっくりと目を開けて何が起こったのか確認しようとしたその時……肌をぬめぬめした何かが触れる。

 

 触手のようなモノ……なんか臭い……私は舐められたんだと気づいた。


 悪寒が走ると同時にその舐めてくる山蜥蜴を見やる。

 

 先ほどまで殺気立っていた魔物はそこには居らず、まるで懐いた犬が久しぶりに旅行から帰ってきた飼い主に再会したような勢いで抱き着いてきていた。

 

 私の顔よりも大きな舌で舐め回してくるのはちょっと怖いけど……。


「なになになになに!?きもいっ!!」

「そんな酷いっ!私ですよルーク様!!」


 見た目は大きなトカゲなんだけど、声は女性寄りだった。

 

 もしかして雌なのかな……?

 

「……というか話せるのね」

「我々妖怪は高い知能を持っていますから!」


 妖怪、やっぱりルミナと同じ種族ってことだよね。

 

 言われてみれば禍々しい雰囲気からどこかで見たことがあると思ったら、創作の作品や本に書いてあったものとそっくりだ。

 

 ルミナが妖怪の見た目をした聖獣だったのであの力を妖力と名付けたけど、あながち間違えではなかった。


 そんなことを考えている間も山蜥蜴は私の顔や腕をペロペロと舐め回している。

 

 そろそろ気持ち悪いんだけど、この子の言うことを信じるなら前のルークの仲間だろう。


 多分、この子からすればルークと再会出来て嬉しいだろうから止めるのは気が引ける。

 そんなことを考えているとフーリアが風の剣を山蜥蜴に突きつけて、目を細めた鋭い眼光で睨みながら、低く呟く。


「それ以上舐めるな爬虫類如きが……切り刻むわよ」

「ひぃ!?」


 山蜥蜴はフーリアの恐ろしい形相と言葉により萎縮してしまう。

 

 舐めるのを辞めてくれたのは個人的に助かった……頬や腕がベタベタしていて最悪な気分だったからね。


「うへぇ……ありがと、フーリア」

「……少しミスったわね…………」

「なんの話?」

「な、なんでもないわよっ!!早くタオルで顔とか腕とか拭きなよ!!」


 そこまで汚いみたいな言い方しなくてもいいのに……。

 

 実際どこからともなく現れた妖怪に舐められて唾液まみれになった人間なんて汚いけど……。


 タオルで唾液に汚れた所を拭きながら、山蜥蜴の話を聞く。


「私はルーク様に仕えている妖怪の山蜥蜴です。この雪山の守護を任されています」

「ルークって多分前世のだよね?」

「おそらくそうです。今のルーク様は確かにあの頃の気配を感じますが、見た目が違いますね」

「ちなみにその時のルークはなんて言われていたんだ?」

「特に有名な名はありませんでした。ただの冒険家として旅をしていましたから」

「冒険家か……どうしてこの雪山の守護を?」

「……それは誰にも言えません」


 守護しているんだし、言えないのは仕方ないけど、ルーク本人にも教えてくれないのかな。

 

 でも私たちも聖獣を回収しなきゃ行けないという任務がある。


 聖獣を集めることはムーンを倒すために必要だけど、聖獣を見つけなければムーンの目的を達成できない。

 

 ある意味矛盾しているけど、これ以上人が不幸になるのは嫌だから倒したい!!


 そしてそれの次くらいに大事なのがミツキとの賭けだ。

 

 負けたくないという強い意志が私にはある。


 ここは元主の私の命令を聞いてくれないだろうか。


「ねぇ、教えてくれないかな?聖獣の力が必要なんですが」

「ルーク様のお願いなら!でも1つだけ伺いたいことがあります」

「あっ……いいんだ……」

「なんで女の子になっているのですか?」

「うーん……諸事情で遊ばれた?」

「なんと!!ルーク様はかっこいい男の子の方が素敵なのに!!」


 この山蜥蜴は私が女の子であることに違和感を覚えているのかもね。

 

 私たちは話を山蜥蜴に聞きながら、雪山の中へ歩いて行く、どうやら洞窟があるみたい。


 山蜥蜴の話では雪山の奥に聖獣が眠っているという。

 

 今更だけどこの山蜥蜴は聖獣じゃないんだね。


 大地の魔力を感じなかったので聖獣だとは思わなかったけど、それでもまあまあ強かった。

 

 前までの私たちなら苦戦していたけど、既に修行をしているからリリィータートルを相手にしても余力を残して勝利できるだろう。


 だからこそ聖獣じゃない山蜥蜴には負けない。


 山蜥蜴に案内されながら過去の話を色々を聞かされる。

 

 ……この世界が出来て500年目に転生した頃、一緒にここまで旅をしたという。


 結構前からここにいる。


 そこからずっと私のことを待ってくれていたのかな。

 

 そう思っていたんだけど、山蜥蜴はそういう訳でもないみたい。


「できれば、あの聖獣様の力は使いたくないと言っていましたが……必要なら仕方ないですね」

「前の私はそんなことを言ってたの?」

「ええ、保険だと言っていました」


 保険……それって凄い魔法を持っている強力な聖獣ってことだろうか。

 

 それなら有難いんだけど、1つだけずっと気になっていることがある。


 それはどうして今までのルークがそんな強力な魔法を手に入れるためにここへ来なかったのか。

 

 山蜥蜴の言葉を聞いて何だかどこかに引っ掛かりを感じる、しかしここまで来てしまった以上、今は考えても無駄か。

 

 とりあえず今は聖獣に会おう!!

 

 

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