第295話 雪山の守護獣
ギルドマスターが見守る中、リベンジのために再び雪山に入る。
襲い来る魔物を避けながら、進んでいくとある同じような平地でルミナと同じ気配を感じた。
これがおそらく妖力だろう。
また私達を街の門へ戻そうとする力だと思うし、これをどうにかしないといけない。
妖力は私達が立っている場所から少し行った先にある雪が他よりも多く積もった所から感じ取れる。
そこには何も見えないんだけど、何かの気配を感じる。おそらくだけど何かに見られている。
私達から見たその場所は何も無いけど、ルミナと同じ妖力の気配を辿るとやっぱりそこに何か居る……ただ誰かそこに居るのかは分からない。
わかるのは動物や魔物のようなモノから溢れる妖力の形が見える。
ワニとかトカゲみたいな4足歩行の魔物。
……とりあえず魔法を撃ってみるか。
私は何も考えずにとりあえずその場所へ攻撃を仕掛けた。
「焔!!」
炎の魔法を魔物が居ると思わる場所へ向かって放つと当然だけど炎が燃え上がる。
ただその炎は雪の上にあるはず炎が何かを燃やして立ち込めている異様な光景を見て瞬時にそこに何か居る事を察する。
手ごたえありだった。
「皆!あそこに魔物が居るから、構えてッ!!」
すぐに戦えるように5人に指示を出す。
剣士は剣を構えて、魔導士は魔法を使う準備をして魔導騎士は剣と魔法の両方を使う準備をする。
それぞれが速い判断の下、既に学生とは思えないほど戦いに慣れた完璧な動きを見せる。
ここに居るのはこの世界でも屈指の実力を持った人達だろう。
年齢ならまさに全盛期だしね……そう考えるととても頼りがいがある。
皆の動きに感心していると炎が消えて、魔物の姿が見えてくる。
妖力の形を捉えた通りの見た目をしているが、おそらくこれは蜥蜴だ!!
不気味な妖怪のトケゲは急に炎をぶつけられて怒っていた。
それと同時に先ほどまで見えていた景色が違う事に気づく。
平地がずっと続いていたように見えていたはずなのに、気づいたら山の麓に移動していた。
移動したんじゃなくて、元々ここまで来ていたんだけど、惑わされていたというのが正しいのかもしれない。
後ろを振り返るとあの小さくて厄介な魔物達すら消えていた。
あの魔物達もどうやらこのトカゲの作った幻だったみたい。
幻を作って惑わす能力を持ったのがこの魔物というわけか。
それなら……!!
「能力を使われる前に倒すよ!」
「オッケー!いつも通り私から行くね~!!雷鳴斬り!!」
光の速さでトカゲに斬りかかるショナ。
しかし鱗が硬くて刃が通っていない……だけど剣はそんな硬い鱗を斬っても刃こぼれしていない。
鱗は貫けないけど、決して負けているわけじゃない。
さらに言えばショナの速度についていけていないみたい。少なくとも無傷で剣激を浴びせる事が出来る。
それに続いてユウリが植物の魔法でトカゲの足を拘束する。
しかしそこで怒ったトカゲは耳を覆う程の巨大な叫び声に似た鳴き声を放つ。
するとまたしてもあの魔物達が現れた。
これがおそらく幻惑で作り出されたモノ……。だけど確かに一度戦った時は受けた攻撃の痕跡が残っていた。
放置することはできないか、さらに言えばその魔物達はユウリを狙っていた。
すぐに助けようとした時、それが不要だという事に気づく。
私よりも早くユウリの周りに陣取ってマツバが守っていたから。
だけど魔物の数は多くて、マツバだけでは負担が大きすぎる。
あのトカゲは私の炎ではビクともしなかったし、もしかしたら耐性があるのかもしれない。
私は周りの魔物を炎で倒しながらフーリア達のサポートに回る。
圧倒的な速度でショナが翻弄して、鱗の間に風を送りながら斬る事でフーリアが防御力を減らし、その間に空気の入った鱗に超火力の水圧で剥ぐとそこを一点に狙う。
完璧な連携を見せて呆気なく戦いは終わった。
なんだか思っていたより拍子抜けだったけど、むしろこの程度で苦戦するようではムーンに勝つのは不可能なんだろう。
いや、今気にするべきはこの魔物についてだ。
余裕があったみたいで丁寧に捕獲していた。
植物の根でぐるぐる巻きにされているのでどれだけもがいても動かない。
「これがあれば雪山でも過ごせそうね……食料は大事」
「食べないよ?魔物はまずいからね」
「それでも男?雪山攻略をするのならそれくらいやりなさいよ!あぁ……サツキは本当は女だっけ」
「……なんか、前世を知ってからフーリアの態度が変わった気がするんだが」
前まで厳しい目を向けられていたのが少しだけ柔らかくなったように見える。
ただし、言葉や態度はそこまで変わらない。
なんでだろう……そんなことを考えているとどこからともなく声が聞こえてくる。
「貴様らぁ!!この山蜥蜴様にこんなことをしてタダで済むと思うなよ!!」
「え……トカゲが喋った!!」
魔物は捕まった状態で憤慨していた。
突然話した蜥蜴を前にショナが驚いて腰を抜かす。
話せるとは思わなかった……捕獲したのも偶然とはいえ話を聞くことが出来る。
このトカゲには聞きたいことが沢山あるし、捕まえて正解だった。
「ちょっと、聞きたいことがあるんですが」
「赤髪の小娘……我を解放しろ。そうすれば初代国王ルーク様の怒りを買わなくて済むぞ」
「……私もルークですが」
「は……?嘘を付くなその名は……あの方だけの……あれ、この魔力……というかその服……まさか!!!!」
山蜥蜴と名乗った魔物は先程まで拘束されていたのにそれをどういうわけか解いて、私に覆い被さるように襲いかかってきた!!
やばい!!このままだと殺される!!!!
 




