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第294話 ユウリとマツバ


 温泉に入っている時に思い出した感覚を辿り、雪山の攻略法に光が見えてきた。


 その日はもう夕暮れ時で外も暗くなっていたので宿に戻って疲れを癒してから次の日にまたあの門の前で皆と待ち合わせしてその時に伝える。

 

 私は朝早くにご飯だけ済ませてから、誰よりも早く待ち合わせの場所へ到着した。

 

 翌日にずらしたのは一応念のために昨日感じた違和感を探るために雪山へ入るための門の前で確認するため。


 ルミナが身体の中に入っている時の魔力とは違う……あの時、操る事が出来ずに魔力へ変換することで使用していた。


 もしかしたら魔法に紛れてルミナが手を貸してくれていたかもしれないけど、ほとんど魔法しか使えなかった。

 

 ルミナのその力を仮に妖力と考える。

 

 雪山を魔力ではなくて、ルミナの妖力を探るように、見つめる。そして妖力が満ちているのがようやくわかった。

 

 おそらくそれが私達の道を遮っているものの正体。


 私は目を閉じてその妖力を感じる事に意識を向ける。

 

 懐かしいような温かい気配を感じ、それと同時にどこからともなく声が聞こえる。


――願いが届くなら、この場所が誰にも見つからない事を祈るよ――


 聞いたことのない男性の声が耳の中に響く。

 

 知らない男性の声だけど、聞いたことのない声じゃない……?そんな不気味な違和感を覚える……なんだか奇妙な感覚だ。


 私が聞いたことのない声、しかし私はその声をよく知っている気がする。


 おそらく沢山転生して記憶がごちゃごちゃしているせいではっきりと思い出せない。

 

 だけどもしかしたらこの雪山へ来た今までの転生した私の内どれかだろうか……絶対にどこかで知っている。


 おそらくこの山を登った先にその謎が分かるだろう。

 

 だけど1つ気になるのがその声が言っていた言葉、誰にも見つからない事を祈る――

 

 その言葉の真意は分からないけど、なんだか不安な気持ちが流れてくる。

 

 私は雪山へ向かうべきが悩んでいた。

 

 しかしそこへいち早く待ち合わせ場所に一人の男の子が現れる。

 

「やる気満々みたいだな」

「マツバ……まさかあなたが一番早いなんてね」

「待ち合わせには30分前行動をするんだ。それに俺よりも早いルークに言われてもな」


 ここで普段から旅をしている仲間の新しい部分が見えてくる。

 

 マツバは誰よりも早く30分前行動をする時間を厳守する性格みたい。


 あまりたくさん話したことは無いけど、なぜがユウリとはとても仲が良い。

 

 ハーベストで何かあって以来、私達が話し合っている間に談話しているのを何度も見かけていた。

 

 ユウリとマツバはあまり話す方ではないので、会話に入ってこないのも仕方が無い。


 2人はいつも何を話しているのか……せっかくなのでそのことを聞いてみる。


「あ、あぁ……まあ色々とな」

「もしかしてだけど、ユウリの事を助けてくれてる?」

「……分かるのか」


 ユウリは魔体症という特殊な体質を持った魔導士で間違えた力の使い方をすると死んでしまう。

 

 そのリスクを軽減するためには極力魔力を使わない方が良い。


 一度魔力を自分の中に溜める事を覚えたユウリは前ほど燃費が悪いわけじゃなかったけど、マツバが居る事でさらにその容量が増えた気がしていたんだけど。

 

 どうやら間違えではなかった。

 

「まあ……魔力を渡してるんだ。魔体症は命に関わるだろ?」

「そんなこともできるんだね」

「これでも魔導騎士(エーテルナイト)だからな……。まあ転生前に神様に力を与えてもらったのが大きいが……」


 ユウリがマツバと親しくしているのは必要な魔力をマツバが補ってくれていたから。

 

 湖でアステリズムと戦った際に爆発する寸前で強力な魔法を使わなかったのもマツバが居なかったからだろう。


 おそらくユウリの燃費は悪いけど相当な威力を誇る魔法があればアステリズム達が爆発する前に吹き飛ばせたかもしれない。

 

 しかしそれをするにはマツバの力が必要だった。


「正確にはやろうと思えばできるだろうが、俺の魔力を使う事に慣れたせいで脂肪か寿命を魔力に変換することを忘れていたんだろう」

「なるほどね……最近痩せたユウリを見ないのはそれのせいだったんだ」

「一応、何があったのか聞いた時に死ぬくらいなら多少の寿命を使う事を忘れるなとは言っておいた」

「そう……」

「一応な。できれば使わせないように心がけるさ」


 それは本人の心がけもそうだけど、私達が補う事も忘れてはいけない。

 

 魔体症はどうなるか実例が少なく、魔力を使い過ぎると死んでしまうのが分かっているだけだ。

 

 これから行くところは過酷だけど、それをユウリに使わせないようにしないとね。


「そういえば……雪山の攻略の目途がたったのか?」


 少し早いしまだ皆はここにいないからその話は後で……と思ったらサツキ達とついでにギルドマスターも合流してきた。


「あ、うんそれはね……。ちょうどみんなが来たみたいだよ」

「あれ……サツキは時間にルーズなはずだが……ルークのために早く来たのかもな」

「ユウリも居るよ?あの子こそ超ルーズなんだけど……マツバのために早く来たんじゃない?」

「やり返されるとは……まあそれなら嬉しいが……」

「素直ね……」

 

 ちょっとくらい照れると思ったんだけど……こういう所はマツバの方が大人みたい。

 

「何の話をしてたんだ?」

「雪山だな。でもそこまで長く話していないからまだあんまり聞いてない」

「そうか」

「サツキの思っていることは無いから」

「……おう」


 何の話をしているのか知らないけど、皆の準備が整ったのなら少し早いけど山に入ろう。

 

 何せいつ帰って来れるか分からない未開地だからね。


 少しでも早く帰ってこられるように急ごう。

 

 そして早く帰ってきたらルエリアとの戦争がどうなったのか見にいかないといけない。


 そんなことを考えながら私達は再び雪山へ足を踏み入れる。


「あ、それはそうとルークさん」

「はい?」

「お風呂で騒ぐのはやめてね。次やったら出禁だから」

「はい……」

 

 ……今度こそ突破してやるんだから!!

 

 目の前が少しだけ潤っている気がするけど、私達はそれを無視して、雪山へ入って行くのだった。


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