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第293話 雪山と温泉


 あれから何度も何度も雪山へ入っては入り口に戻されるというのを繰り返し、魔物とも戦って疲労が積み重なってしまう。


 そのおかげで数時間の間に街へ一時撤退した。

 

 そうなることを予め予想していたみたいにギルドマスターは門の側で待っていた。


「あらら、やっぱり無理でしたか」

「何なんですかあれ!ずっと歩いてるのに戻されて……魔物も一体一体が強いし……」

「あれを相手に怪我無く戻って来れるだけの強さを持っているのですね。やはりタイヨウ様に認められているというのは間違えじゃないみたいね」

「ですが、ずっと戦い続けると死にますよアレ」

「それは全ての生物がそうでしょう……やはり今まで死者こそ出なかったモノの、皆疲弊して戻ってくるというのを繰り返していた」

「何か攻略法とか無いんですかね?」」

「無いから開拓できないんですよ」


 どうやら思っていたよりもこの雪山を攻略するのは大変みたい。

 

 山の全貌は街からでも見える、私達が歩いていたのは比較的平地の所で本当なら雪山に登っているはず。


 思い返せばずっと平地を走り回っていた。

 

 急に上り坂になりそうな場所が見えるので、ずっと歩いていればいずれそこに当たるはずなのに……。

 

 行けていないってことはどこかで戻されているんだろう。

 

 せめてその移動ポイントが分かればいいんだけど……。


「ポイントなら分かるぞ」


 唐突にマツバがそう応える。


 私でも魔力感知を上手くできていなかったのに……。

 

「え、本当に?」

「ああ、魔力の残滓を追うのは得意分野だからな」

「そういえばそうだったね……」


 ストーカーの腕はマツバの方がサツキよりも上だった。

 

 私達が魔物と戦っている時に魔法を使っているから、そこからおおよその移動地点を割り出せるみたい。

 

 魔力感知のおかげで分かったのは雪山の麓、急な上り坂になっている場所の手前で私達の魔力が途切れていること。


「しかし、そこからが分からない」

「どういうこと?」

「俺が追えている魔力はルークとサツキだけ……大きな街くらいの範囲は索敵ができるんだが、あの上り坂付近で全く魔力を感じないんだよ」


 どんな魔法でも索敵できるマツバが分からないのならそれは恐らく……魔法じゃない。

 

 もっと別の何かの力を使っているとしか考えられない。


 思い当るのは剣を使った幻覚を見せられているということ。

 

 その場合周りに第三者が居て監視されている可能性が高い。ある所まで着くと街の門へ戻しているのなら絶対どこかに敵がいるはず。


 そう考えるのが自然。


 魔法じゃないと意識して見ると私の身体の奥で何かの引っ掛かりがある。

 

 この感覚が何のか思い出すことができれば、突破できる気がするんだけど、何も思い出せない。


「とりあえず今日は休んで明日から行くべきね。その様子だと数日も持たないでしょ?」

「はい、すみません……」


 お言葉に甘えさせてもらうために、私達は一度、用意してもらった宿に移動して疲れを取る。

 

 雪山や周りにもたくさんの山に覆われているせいか温泉などがそこら中の宿に付いている。


 近くに活火山があるのだろうか……。


 私達は先程の戦いを癒すために温泉へ直行した。


 前世ではあまり温泉は好きじゃなかったような記憶がある。

 

 温泉自体は好きだけど、潔癖な部分が少しだけあったせいで楽しめなかった。

 

 今の私はそこまで潔癖ではなく、むしろ女子風呂なので全然大丈夫だったり……。


 別に疚しい気持ちがあるわけじゃない。


 ただ、個人的なイメージでは女湯の方が綺麗な感じがするから……。

 

 本当にそれだけ、それだけなんだけど……人が多い!!


 既に前世が男だと仲間にはバレているので、知らない子を見過ぎると私がそんなことを考える人だと思われてしまう。


 私は必死にこらえた。


 身体の内側で熱くなるこの気持ちを……。


 ……身体の内側で熱くなる気持ち……?


 これとはまた違うけれど、その感覚に覚えがある。

 

 記憶の断片、そこから必要な部分がスルッと落ちてくるのを感じた。


「あっ!!!!!!!!!!!」

 

 あの時の違和感はルミナが私の身体の中に入っていた時と同じものだ!!


 そしてルミナの力は魔力みたいなモノだけど、魔力じゃなかった。

 

 ルミナの力を魔力に変換してもらってから私は多くの魔力を使わせてもらっていたので、気づくのが遅くなる。


 だけど今、思い出したこれは……!!

 

「え……どうしたのルーク?みんな見てるよ」

「あ……」


 つい気づいた反動で無意識に大声を上げて肌を隠していたタオルも落として一人叫んでしまった。


 傍から見たら異常者だろう……。

 

 私は恥ずかしい気持ちになりながら、そのまま温泉を後にした。


 しばらくすると温泉が気持ちよかったのか長く入っていたサツキやフーリアが出てきた。


「あれ?ルークだけ早いな。温泉嫌いか?」

「いいえ……ちょっと諸事情でね……」

「そ、そうか……それより温泉を出る時にちょうどフーリア達とばったり会って話を聞いたんだが、何かいい案でも浮かんだのか?」


 ちょうどその話をしようと考えていたの早くて助かるんだけど、同じタイミングってどういう事だろう。

 

 男女で温泉に入っている時間は恐らく違うと思うし、今までサツキのタイミングが良い事が多かったので偶然だとは思えない。


「いやいや、絶対同じタイミングはおかしいって……絶対ストーカーしてたでしょ?」

「してねーよ!!してたらルークが出てくるタイミングで出るだろ!!」

「……誰もルークのとは言ってないけど?」

「…………」


 ……そんな話をここでされても一番困るのは私だ。


 全員がこちらに何かを訴えるような眼差しを向けてくる。


 私はそれを無視して答える。


「多分、あの無限ループを突破できるかもしれない!!」

「あ!話を逸らした~!!」

「ゴホンッ!」

 

 私は咳ばらいをしてショナの余計な一言をいなす。

 

 おそらく私の考えが正しければ今度こそ行けるはずだからね!

 

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