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第292話 禁忌の山

 

 ギルドを出て、4人で街を探索しているとサツキとマツバに合流した。

 

 2人にはギルドで聞いた話と全く同じ内容を伝える。

 

「へーもうギルドマスターにあったんだな」

「先に話を聞いちゃってごめんなさい。後サツキ達の装備もあるよ!」

「ありがとうショナ、おぉ……雪山に入るための装備というだけあって暖かいな」


 魔法が付与された装備はどんな人でも寒さを感じにくい物みたい。

 

 それでいて薄いので戦いの邪魔にもならない。


 さすがに異世界の技術を持ってきているだけあって、物の良さはずば抜けている。

 

「というかこういう冬に着る服は前の世界にもあったような?」

「ウィンドブレーカーね……まさかこの世界でそんな言葉を使う時が来るとは思わなかったけど」

「そうそれ!部活の時はお世話になったような……」

「私は着てないんだけどね」

「……ルークだけ場違いだな」

「元々寒さも熱さも感じにくいから水着でも雪山に入れるくらいだし」

「水着!?行った事あるのか!?」

「例えだから……」


 温度の変化を感じにくいのでそれくらい余裕という意味なんだけど、何を想像しているんだこの人は……。

 

 でも確かに私だけミニスカの巫女服って仲間外れな気がして嫌なんだけど、私も前の世界みたいにウィンドブレーカーを着たかった。


 どちらでも戦いやすいから装備の性能が高いこの服でいいんだろうけど……。

 

 これ以上の装備は無いとキキョウは装備を貸してくれないし、もうこのまま雪山へ向かう事にした。


 一人だけ場違いな装備を身に付けて街の北の方へ歩いて行くと、近畿の門と呼ばれる大きな扉が見えてくる。

 

 なぜ禁忌と呼ばれているのか、それは進んでも進んでも前へ行けない魔の山への入り口だからだ。

 

 帰ってくることはできてもずっと先へ進めないので呪われているとも言われていて、政府も許可がでないと誰も出入りできないようにした。

 

 さらに強力な魔物が何匹も居るので並の冒険者ではすぐに命を落とす。


 門番の人は厳重に守っていて、私達が近づいていくと離れた所で止められる。


「お前達何をしている!!」

「俺達はタイヨウ様の命令でこの雪山へ向かうように言われているんだが……」

「タイヨウ様……そうか、名前は?」

「サツキです。後……」


 サツキが応えている最中、門番の人は私を見て目を丸くしていた。


 惚れたとかではなく、私の服を見て驚いている様子だ。

 

「っ!その服は伝説の……!!すみませんでしたルーク様!!」

「え……」


 サツキのことよりも私を……いやこの巫女服を見て、判断したみたいね。

 

 それだけこの服が認められているということか。国宝と言うだけあって誰もが知っているんだろう。


 よくそんなものを私に持たせたな。


 これで雪山へ入る許可は得たんだけど、馬を使う事は出来ない。

 

 馬車での移動なんて不可能な道なので歩いて目的地がどこなのかも分からない所まで行かなきゃいけない。

 

 先の見えない地獄かもしれないし、魔物に襲われて最悪な結果になってしまう場合もある。

 

 広い冒険者ギルドに人があまりいないのは戦争に駆り出されていて、私達を手伝ってくれる人は居ないから遭難したらアウトだろう……。


 それでも私達は未だ開拓されていない雪山へ足を踏み入れるのだった。


 歩いて数百メートルは特に変哲もない雪の積もった道。

 

 しかしそこからは魔物の気配を感じるようになる。


 私を含めて6人全員がその気配に緊張しているのが伝わってくる。


 一斉に魔物がいる方を見るとそこには白いキツネが居た。

 

 白くて綺麗な毛並みなのに不気味に光る赤い目がこちらを睨みつけている。


 警戒しているとそのキツネの背後から更に同じようなキツネがうじゃうじゃ出てくる。


 見た目はとてつもなく可愛いんだけど、これは歓迎されていない。


 当然魔物は私たちを獲物と考えて追いかけてくる。

 

 最初は倒していたんだけど、あまりの数の多さと単体でもすぐに退治することが出来ないくらいには強くて逃げる選択肢しかなかった。

 

「あれやばすぎでしょ!!死ぬって!!!!」

「俺達には早かったのか……いやでもムーンを倒すには時間が無い。無理にでも先へ進もう」

「誰も死なないように帰るのを忘れちゃダメだからねぇ~!!!!!!」


 一応万が一があれば私が全力を出せばいい。


 というのもあのキツネがなんだか愛らしくて殺したくない。

 

 ……キツネが死んでしまうのを見たくない、そんな気持ちが強く出てくる。ルミナと同化していたせいだろうか。


 まさかこれが……愛……!!


 いや違う……そんな綺麗なものじゃない気がする。

 

 元々そこまで可愛いものに目が無い性格では無いんだ、この可愛いモノへ感じるものは一体なんなんだろう。


 理由は分からないけど、なるべく殺したくないんだ!!!!


 そんなことを考えながら無我夢中で走っていると……。


「ありゃりゃ……これはどういうこと!?」

「どうしたのショナ?」

「ここ……私達が門を通った所だよ!」


 そんなことを言われて後ろを振り返ると確かに私達がこの山へはいる時に入った門が見えてきた。


 来た道を振り返ったのにそこには遠くにあるはずの街の門。


 気づけば先程のキツネは居なくなっていた。


「まさか……これが……」

「ギルドマスターが言っていた通りね。多分何度進んでも同じじゃない?」


 実際に体験してみないとループすると分かっていてもどんな風にするのか。魔法を使うような痕跡や違和感があればそれを攻略すればいいと思っていたんだけど、一切分からない。


 無我夢中で逃げていたのはあるけど、それを差し引いても周囲数百メートルまで魔力感知を置いていた。

 

 そこに何も引っかからなかったのだから、魔法じゃないはず。


 こんな所で蜃気楼を見たのかな。


 でも動いていたはずなのに、魔物と戦って付けられた跡だって残っている。

 

 そんな類じゃない……もっと高度な何かの力が働いているのだろうか。


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