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第291話 最後の目的地


 誰もが想像する絵に書いたような黒長い鍔の付いた防止に黒いローブを羽織った魔女が突然話しかけてきた。

 

 ギルドの紋章を持っている事からおそらく、花園の魔導士だろう。


「私はハーベスト帝国のギルド花園……アマノにある唯一の支部キキョウのギルドマスターキキョウです」

「ギルドマスター!?」


 タイヨウからは事前に話を聞いていて、北の街にはギルド花園の支部があるからそこへ行けと言われていた。

 

 ギルドに寄るのは雪山へ入る時に許可が必要なのと、雪山へ入るための装備や危険などを教えてもらうため。


 これから行くのはこの世界で最も危険とされている雪山。


 ルエリアやハーベスト、そしてアマノの三国の真上に位置するそれは未だ開拓もされていない未開地。

 

 魔物の討伐依頼で(ふもと)付近への出入りはされているものの、その先は危険すぎて誰も通らない。


 おそらく私達はそこへ向かわなけばいけない。


 最後の聖獣が未だに見つかっていない事を考えると雪山のどこかに居る可能性が高いから……(ふもと)までではおそらく足りない。


 食料の調達を終えてからギルドマスターと話をしたかったんだけど、こっちが先になってしまったみたいね。

 

 買い物なんていつでもできるだろうし、ここはギルドマスターの話を聞く方が良いだろう。


 サツキ達には悪いけど、ギルドマスターについていくことにした。


 アマノの第二都市だけあって街並みも綺麗だし、ギルドの中に至っては広くてギルドメンバーも沢山いた。


「さて、タイヨウ様から話は聞いているので奥で詳しい事を説明します」

「よろしくお願いしま――」


 丁寧にお辞儀をして応えようとしたショナだけど、その言葉はギルドのメンバーの男性によって遮られてしまった。


「おーっキキョウ!!帰って来ていたか!俺、今日午前だけで依頼を2個こなしたぜ~!!」

「それは素晴らしいですが、お客様が来ているので、私の事はギルドマスターと呼ぶように」

「おっとそうでしたね……前ギルドマスターキョウ様は居ないんでしたね」

「ええ……あの人の分までこの街で冒険者として困っている人達を助けてくださいね」

「分かったよキー……ギルドマスター!!」


 相変わらず花園は雰囲気が良いギルドだ。


 この前、魔王教団が攻めて来たばかりだというのに皆、活気に溢れた良い笑顔をしていた。

 

 ただ、この街はあまり被害を受けていない様だった。おそらく、優秀な冒険者が多いから魔王教団を退ける事が出来たのかもしれない。

 

 そんな中でキキョウの目はどこか心ここに有らずの状態に見える。

 

 おそらく先程のギルドマスターの話が関係しているんだろう。


 キキョウの反応から見ても何かあったに違いない。

 

 私達はそのままギルドの奥の部屋に招かれて、雪山へ入る時の注意点や必要な装備などを教えてもらった。


 サツキ達にはあと教えてあげれば問題ないので2人の分の装備も貰っておこう。

 

 しかし、渡されたのは5つの装備だけ。


 6人居るのでこれじゃ足りないんだけど……。

 

 と、問いかけたらキキョウは私の足から頭までを舐めるように眺めてから首を傾げて応える。

 

「ん?いやあなたは要らないでしょ」

「わ、私何かしましたかね?」

「そうじゃなくてその服、伝説の焔王の魔力が込められた国宝でしょ?それに勝てる装備なんてこの世のどこにもないわよ」

「え、ええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇ!?」


 これそんな大層なものだったの!?

 

 ただ可愛いだけの巫女服じゃなかったんだ。


 てっきりただの趣味で着せられたものだとばかり……。

 

「たしか焔王の趣味だった気がする。タイヨウ様が言うにはね」

「ああ……趣味なのね……」

 

 前の私はどうしてこんな服が好きだったんだ……可愛いけど、なんか怖いわね。

 

 この巫女服には雪山でも難なく過ごせるだけの性能が備わっているという。水を被っても湿ることもなく、寒さや暑さも感じない。


 後半に関して体質があるので無意味かもしれないけど、普通の人でも余裕で雪山でも過ごせるなんてすごい服なのね。

 

 というか国宝とか言っていたけど、もしかしてめちゃくちゃ高い?


 これ以上の装備がないってことは即ち最強の装備、防御面でも超優秀ということか。


「ということで、説明に入りますが、雪に足を取られて崖から落ちる場合があるので気をつけてください」

「あ、はい」

「山の天気か変わりやすいので方向を見失わないようにしてください。魔導士が居るのなら魔力を使って街の方向だけでも記憶しておくように」

「はい」

「三日ほど潜って同じ景色しか見えない場合は直ぐに帰ってきてください」

「はい……ん?」

「実は……雪山への調査は何度も向かわせたことがあるのですが、全ての人たちが先へ行けなかったというのです」


 雪山が未だに開拓されていない理由は誰もが先へ行くことが出来なかったから。


 なんでもどれだけ先へ進んでも同じ景色しか見えないという。

 

 目印を付けて数時間先を歩くと何故かその目印のところに戻って、進めない。


 そんなことを繰り返しているので食糧不足に陥り、帰って来れなくなることもあるとか。

 

 一番の注意点は崖に落ちることでも、天気の悪さではぐれてしまうこともでもなく、無限ループしていることに気づかずに野垂れ死にすること。


「どうしてそんなことが……」

「さぁ……なので気づかずに餓死だけはやめてくださいね」

「こ、怖いですね」

「噂では幽霊が何かしているとか」


 幽霊……この世界だと魔法の類で説明が着くだろう。

 

 てことはどんな魔法が使われているか分かれば、どうにか攻略出来るかもしれない。


 雪山の近くだと沢山情報を得られて対策もしやすい。

 

 それでも不安があるほど危険なのは間違えない。

 

 私たちはこれからそこへ入っていく、聖獣を見つけるために!!

 

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