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第288話 焔王


 愛の女神様の信託により魔王教団を止めたいのなら最後の聖獣を探すために雪山へ向かえと指示を受けた。

 

 それだけ話すと満足したように私達の前から姿を消してしまう。

 

 前もそうだけど、本当に少ししか話せないんだよね……もう少し聞きたいこともあったのに……。


 おそらく時間の問題だろうけど、話したくない事でもあるのかと少し勘繰ってしまう。

 

 話を遮られることが多くてそんなことを考える。


 と言っても神様を疑うのは罰が当たりそうだけど……。

 

「魔力が持たんな。さすがは……神」

「タイヨウさんまた呼び出せたりできないんですか?」

「……できなくないんだろうが、愛の女神からはやめておけと言われた」

「どうして……?」

「最初に出てきた時、お前達は居なかったがこんなことを言われた。『もう!よかった私で……ちょっとタイヨウちゃん!その召喚方法だとランダムで神様が降臨するからもう駄目だよっ!』ってさ」


 タイヨウはわざわざ愛の女神様に言われたところだけ声を高くして再現する。

 

 タイヨウのオネェ口調を聞いた周りの人達は笑いを堪えていた。これでもこの国で偉い王様なので笑ったりしたら首が飛ぶと思っている。


 タイヨウはニコニコと悪魔的な笑みを見せているので恐らくこうなることが分かっていたんだろう。


 首を飛ばす気は無いけど我慢して怖がっている顔が見たいという性格のねじ曲がった部分が垣間見えた。


 遊び心を見せるだけの余裕はあるみたいだけど、愛の女神様の言葉を聞く限り状況はあまりよくない。

 

 これからの事をより話し合うべきだ。

 

「とりあえず、最後の聖獣を探しますか?」

「しかし、本当にそれでいいのかな」

「え?」

「だって魔王教団は聖獣を探しているわけで、それを俺たちが見つけていいのかな?」


 言いたいことは分かるけど、時間をかければきっと最後の聖獣は魔王教団に見つかってしまう。

 

 それならアマノと同じようにこの国にいてもらう方がいい、回収して保護すれば安心だ。


 そんなことは百も承知だけどどこか納得していない様子をタイヨウは見せていた。

 

「だけどなぁ~」

「タイヨウ様、私は聖獣を見つけ出すべきだと思いますわ」

「お前が横から口を出すとは意外だなヒザシ、だがなぁ~アイツはずっと、最後の1匹だけは見つけなかったんだよ」

「アイツ……?初代焔王ルーク様ですか?」

「焔王というか、勇者の方も英雄の方も……今まで再会したアイツはただの一度も最後の聖獣だけは連れてこなかった900年間だ」


 まさか最後の聖獣はもう居ないとか……だけど聖獣は私が転生すると同時に死んでいる個体は産まれてくるって聞いたような。

 

 それじゃあ居ないわけじゃないはず。


 なのに今までの私は見つけられなかった?


「いや、見つけなかった。俺はそんな気がしてるんだが」

「はぁ……。タイヨウ様の直感はよく外れますよね?」

「アイツのことは外れない自身がちょいある」

「ちょっとじゃないですか……。放置しても取られてしまう可能性の方が高いと思いますけど」

「ん……どう思う?ルーク」


 私がこれまでのルークの転生者だとしても、今は記憶がない。

 

 そんな答えを思い出せ無い疑問を前に判断を委ねようとしてくる。

 

 時間をかければいずれ見つかるというのは事実だろう。あのムーンとかいう教祖は空間移動の魔法を使っていた。

 

 移動のポイントに魔法陣を置かないと転移できないけど、もし世界中に移動用の魔法陣があればどうだろう。


 魔王教団の教会はその名前を変えて世界中に点在しているとタイヨウは言っていた。

 

 その全ての協会に転移系の魔法陣が設置してある可能性は高いんじゃないかな。


 闘技場にムーンが現れてすぐに消えてしまったのもそのせいだろう。

 

 今までの私が何を考えていたのか知らないけど、無難に聖獣を見つけて保護する方がいい。

 

 そのことをタイヨウに伝えると少し心配そうな顔をしていたけど、私の判断を尊重してくれる。


「まあ、お前が言うならいいが……何かあればその時に適切な行動を取れよ。選択肢を一個ミスるだけで魔導王復活が確定するかもしれん」

「わかりました。それでは私たちは雪山へ向かえばいいんですね」

「ああ、お前たちは聖獣の保護を優先しろ」

「タイヨウさんは?」

「俺たちはハーベストと協力してルエリアへ進軍する」


 聖獣よりも気になるワードが出て来て、そちらの方に意識が向いてしまう。


 タイヨウはまさかルエリアへ戦争を仕掛けようとしているんじゃないか……。


 確かに魔王教団の事で怒りたい気持ちは分かるけど、協力的じゃないというだけで敵対している保証はない。

 

「え!?」

「ルエリアには悪いが、もうあの国はダメだろう」


 しかしタイヨウいわく、深刻な状況だという。

 

 進軍は残念だけど魔王教団に侵食されている部分だけを討伐してくれるなら、タイヨウに任せよう。


 私たちは雪山へそしてタイヨウ達はルエリアへ向けて出発する。

 

 本殿の中から外へ出る時に来た道を確認すると土足で上がり込んだのに汚れが一切なかった。


 まだふらふらな身体で私はショナに肩を貸してもらい靴の裏を確認してみる。すると靴の裏まで綺麗になっている。これがあるからミツキは気にしなかったのだろうか。

 

 本殿を出て神社から出ようとしたその時、綺麗な巫女達が私たちの周りを囲う。


 何かしてしまったのかな。

 

 そう思って身構えていると、その巫女達は他の子達を置いて私に近づいてきて急に両手を取ってきた!!


 綺麗で細い巫女達の手が私を拘束する。結構力が強い……。


 そんな巫女達は私を捕まえるとまるで目を輝かせて叫ぶ。

 

「あなたが焔王様の生まれ変わりですね!!」

「あ、多分……はい」


 巫女の1人がそんなことを聞いてくるので咄嗟に答える。

 

 記憶が無いので曖昧な返事しかしていないと巫女はタイヨウに確認を取る。


 タイヨウはそれに頷いて答えると巫女は私をどこかへ連れていこうと引っ張る力を強くする。


 やっぱりこの人達、人は思えない程に力強い!!

 

「な、なんですか!?」

「ルーク様に必要なものを用意してあります。これからの旅に必要になるはずです」

「え、何かくれるんですか?」

「ええ!魔力や魔法を強化できる物を」

「頂きます!!」


 そういうことなら受け取っておこう。

 

 短時間ではこれ以上強くなれる気がしない。


 ムーンとの決戦は近いはずだし、このままいけばきっとそうなるだろうと何となくそんな予感をしている。

 

 少しでも力を付けられるのなら、なんでもやってやる……。


 しかしこの後すぐに私はそんなことを考えたことを後悔するのだった。


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