第281話 ショナの想い
ルークとミツキの戦いが終わってもショナはアステリズムと剣を交えていました。
ショナは綺麗な雷を纏った剣でアステリズムを捉えて、光速で斬りかかる。
しかしアステリズムもまた禍々しい邪悪な雷を纏った剣で受け止め、さらにショナの雷をより強い勢いで押しのけます。
それをもう何度も何度も続けてショナは何度もふきとばされていました。
身体への負担が重くのしかかっているのにショナは一切、躊躇わない。
「……いい加減学びなさいよ!」
「うるさい!!」
「……向こうの戦いが終わったみたいだけど、まあアークトゥルスがあんな小娘共が勝てるわけ無いし諦め――」
「聖剣ライコウッ!!」
「くっ……鬱陶しいなぁ!!私達の勝ちなのよォ!!!!」
そんなアステリズムの声はショナに届かない。
怒りで我を忘れてただ目の前の仇を殺すためだけに剣を振るっていました。
「ショナ落ち着いて!!」
その様子を見かねて、ユウリが声を掛けますが、それでも話を聞こうとしません。
いつもは元気でスレインのムードメーカーなショナとは思えない程、その目には殺意が込められています。
「死ね死ね死ね死ね!!」
「ショナ……」
魔法で助けようにも動きが荒々しく、常にアステリズムに張り付いているのでそのまま魔法を使えば間違えなく巻き添えを食らってしまう。
歯がゆい状況の中、親友が我を忘れて自分の事も見えていない。
しかしそこへショナとアステリズムの両方を巻き添えにした風が吹き荒れる。
「うぅ!?」
「風魔法……?アークトゥルスか!」
雷は風に乗って散らされて、先ほどまでバチバチと纏っていた雷が綺麗さっぱり消えている。
剣と剣のぶつかり合いはその性能の差で優劣が決まります。
聖剣と魔剣は同ランクでその場合は剣術や戦術で結果が決まる。
本来であれば聖剣と魔剣を超える剣は滅多にありませんが、それを持った人が駆けつけてきました。
「何してんのよショナ!!」
「フーリア……アークトゥルスは?」
「ルーク達が倒したわよ……勝ちとは言い切れないけど」
「どういうこと?まさかルーク達に何か……」
ショナは先程まで気が狂う程にアステリズムしか見ていませんでしたが、ルーク達に何かあったと考えると急に正気を取り戻しました。
その様子を見てユウリは安堵していました――仲間想いのショナは消えていないんだと。
深呼吸をして、ショナに今の状況を伝える。
「ルーク達はアークトゥルスを倒してたよ!2人とも無事、魔力を感じるから」
「そ、そう……でも姿が……」
「私の後ろの黒煙が上がってる所、見える?」
「黒煙…………うへあっ!?何アレ何かあったの!?」
「気づいてなかったのね……あの中にルーク達が居るわ」
「いやそれ、死んでるんじゃ……」
「あの子達は炎への耐性に熱への耐性も持ってる。息が出来ているならあの中でも死ぬことは無いわ」
「煙の中だから死んでる方が納得できるんだけどぉ!?」
ユウリはショナの戦いを見守りながらもルーク達の戦いの行く末も見守っていた。
もしピンチになれば自分がルーク達の助けになれるかもしれない。そう考えて準備はしていましたが、その必要はありませんでした。
最後のアークトゥルスの抵抗に関してはユウリでもどうにもできなかったのでクランを助けることはできませんでしたが……。
当然様子を見ていたのでルーク達が生きている事も知っています。もちろんクランの事も……。
「説明の手間が省けるわ!ショナ2人でそいつ倒すよ!」
「でも……こいつは私が……」
「知ってるわよ。だからこそ、あなたの恨みを私にも分けなさいよ!」
「フーリア……でも!!」
「いつもしつこく言ってるくせに……大事な仲間でしょ!こんな私でもあなたが苦しんでいるのは見たくないわ!!」
フーリアの意外な言葉にユウリは呆気に取られていました。
知っているフーリアが絶対言わないであろう言葉を聞いて……それと同時に親友に何一つ声が届かなかった自分の力の無さを悔いる。
しかし、フーリアだけにいい恰好はさせない。ユウリはそんなことを考えながら叫ぶ。
「ショナ!私も居るから、協力させて!!」
「ユウリ……」
「私は親友が苦しんでるのを見るのは嫌だよ……。ショナだって私が苦しんでたら嫌でしょ!!」
「そ、それは……」
「もしここで私の手を借りなかったら……私が苦しい時に手を貸させてあげないから!!」
「そ、それは困る……。はぁ、なんかユウリ達と話してると落ち着いてきた……かも。分かったみんなでやろう!!」
3人の友情はより硬く結びつき、アステリズムを倒すために動き出します。
その声を聞いていたルークは遠くから――。
「わ、私は動けないけど、居るからねー!!」
仲間外れにされて寂しい気持ちが勝ってしまい、魔力切れで動けないのに大声を上げてショナを鼓舞するルークの声が届きました。
その声を聞いたショナの口角が少しだけ上がる。
その様子をずっと見ていたアステリズムはあからさまに汗を掻いて焦っている。
「アークトゥルスがやられた?嘘よ!あんな醜い小娘共に負けるわけ……」
「醜い……?」
仲間を侮辱する言葉を聞いてしまったショナはまた怒る。
怒りのまま振るった剣はどれだけ打ちこんでもアステリズムに届かない。
しかしそれは、ショナ1人の場合だった。
ショナはひとりで突っ走るわけじゃなくてフーリアやユウリの介入する余地を与えた。
先ほどの状況とは打って変わってアステリズムは押され始めました。
小娘と言えど魔王教団幹部を倒せるチームだからこそ、統率を取ることができればアステリズム一人に負ける事はありえませんでした。
3人の猛攻はアステリズムをあと一歩というところまで追い詰める。
幹部ほどの実力を持っていないアステリズムではこの3人の連携に手も足も出ませんでした。
「調子に乗るな小娘ども!!!!」
その瞬間、アステリズムはアークトゥルスと同じく不気味で禍々しいそれでいて圧倒的な膨大な魔力を吸い込みます。




