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第276話 思い出したくない記憶


 こんな所まで聖獣を捕まえに来た魔王教団の正体が最悪な人達だと知った私達はそれを相手にしている。


 4体2と人数は有利だけど、如何せん敵の強さが読めない。


 剣の腕は正確に分からないモノの剣術なら私よりは上、剣の性能ではフーリアの神秘剣が勝っているので人数差も相まってこっちの方が有利に見えるんだけど、意外にも相手に隙がない。


 クズだと思っていたけど、それなりに魔王教団の戦力だけあって強いみたい。


「ルークは剣苦手なんだから、後ろで支援しててよね!」

「あ?ルーク……?お前が?」


 フーリアの事を気持ちの悪い目で見ていたアークトゥルスは途端に目の色を変えた。

 

 それは私に向けられていて、フーリアに対してしていた色目ではなく、獲物を見つけた狩人のような……嫌な予感……。


「お前を連れて帰れば俺はムーン様に認められる!!」


 やっぱり私は魔王教団に狙われているのね。

 

 (フーリア)を手に入れるよりも教祖(ムーン)に認められることの方が重要か。


 気分は良くないけど、フーリアが狙われなくなったのは個人的に良かったかな。フーリアは逆に不貞腐れて居る様子だけどね。


「こいつ……私を狙っておきながら結局またルーク……」

「ちょフーリア落ち着いて……」

「落ち着いてられないわよ!!細切れにしてやるぅぅぅぅぅぅうぅうう !!」

「ひぃぃ……!?」


 フーリアが凄く怖い顔でアークトゥルスへ向かって行く。

 

 既に神秘剣を半分以上使いこなすことができるようになっているフーリアの重い一撃をアークトゥルスは受け止めてくる。


 しかし、私のとは違って一撃の威力は低いモノの、軽やかな動きでまるで風のように連続で斬撃を加える。

 

 それにアークトゥルスは苦戦する。


「こいつ……剣術はルークって奴より遥かに上かよ……!!」

「あの子の剣術はポンコツよ……でも私のは違うんだから!!」

「だから何だよ……女のくせに勝てると思うなよ!!」


 相手の言葉を肯定するわけじゃないけど、まだフーリアは16の女の子でまだまだ成長途中だ。

 

 一方で相手は大人の男。


 素の身体能力に差が出てしまうし何より魔法も使える特別な剣士だ。

 

 フーリアの厄介な攻撃は威力が低いので決定打に欠ける。

 

 タイマンだと負けるかもしれない。


 それなら言われた通りフーリアの支援をしよう。相手が魔法を使えるのならその分を補えばいいだけだ。

 

 どれだけ早い動きで攻撃できたとしても体力的に限界が来ると動きが鈍くなる。


 フーリアにできた隙をアークトゥルスは見逃さなかった……隙を付いて剣をフーリアの左腕に振るった瞬間、炎を使って攻撃を弾く。


「ちっ……雑魚剣士のくせに魔法は一級品かよ……目障りな小娘共が!」

「その小娘にやられなさい!!」


 フーリアが神秘剣を勢いよく振り下ろすと眩い光と温かい風が吹いて、アークトゥルスの顎を押し出す。

 

 おそらくアークトゥルスは拳で殴られたような衝撃を受けただろう。


 少しだけ身体が浮いて苦痛の声を上げる。


「うぐっ!?」


 フーリアにこんな戦い方があったなんて知らなかった。

 

 神秘剣の性質は風……そして光。


 フーリアは風をメインで使っていて、光の使い方が下手であまり使ってこなかった。

 

 光で風が急激に温められて、上昇した風の勢いを利用したみたいね。


 世界最強剣士の紅蓮の教えだろうか……剣の性質を理解した。

 

 ただでさえ一瞬で暴風を起こすフーリアの剣がさらに勢いを増すと見た目以上にあの攻撃はアークトゥルスに効いたはずだ。


「血ッ!?お前……俺に顔……貴様!!逆らったことを後悔させてやるからな……!!」

「それはこっちのセリフ……この程度なら私達で充分勝てるわね」


 面倒な相手ではあるけど、私とフーリアが力を合わせれば不可能なんてないんだから!


 現に常に危ない状況を避けて、有利に戦況を運んでいる。

 

 このまま何事もなければアークトゥルスを捕らえるのも夢じゃない。


「俺様を本気にさせたなクソ小娘共が!!」

「まるで今まで本気じゃなかったみたいな言い方だけど、見苦しいわよ」

「……特にお前には思い知らせなければいけない。俺様の奴隷として飼うためにな!!」


 アークトゥルスが胸元へ手を近づけていく。

 

 その手は襟の中をまさぐり、黒い不気味な月を象ったネックレスを取り出す。

 

 嫌な感じの魔道具……さらにその魔道具からは思い出したくない魔力を感じた。


「あれは……アーミアの時の、ムーンの魔力……!!」

「お前如きがあの方呼び捨てにするなァ!!裁きを与えてやる……あああああああああああっ!!!!」


 アークトゥルスはあの時のアーミアのようにその禍々しい魔力を溜めているネックレスを砕いた。


 するとそのネックレスから黒いモヤが集まってきてアークトゥルスを覆う。


「あぁ……すみませんムーン様……あなた様より賜りましたお宝を砕いてしまいました。しかし、必ずお役目を果たします……もし出来なければどんな罰でも受けましょう!!」

「おいお前!それ以上やると戻れなくなるぞ!!」

「口調が荒いなルークとやら……そこまで怖いか今の俺が……!!ふふ、あはははは!!小娘は黙っていろ!見せてやろう我が極上の真の姿を……!!」

「これは……」


 アークトゥルスの体は魔力により肥大化、人としての形を保つことが出来ずに異形の形へ変貌を遂げた。


 魔力の質も今までとは比べ物にならない。これは少しまずいかな。

 

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