第274話 復讐の雷
スイレンの4人で魔王教団を魔導騎士を倒してくれというタイヨウの依頼を受けて、聖獣の居る湖に再びやってきた。
それにしてもこんな所まで魔王教団が入り込んでいるなんて、この国は大丈夫なのだろうか。
強力な三国の中でもアマノはズバ抜けて圧倒的な軍事力を持っている。
この世界に元々いる人達は魔法か剣のどちらかしか使えないのに対して、アマノは転生者が多くて皆が魔法も剣も使える状態なので戦力で言えば圧倒的にアマノが高いわけだ。
それに慢心したのか、そもそもこんな所に魔王教団が来るとは考えて居なかったのかこんな所まで入り込まれているらしい。
「それにしてもあの方って誰だろう?」
「王様が言ってた奴だね」
「その人のおかげで魔王教団の侵入に気づけたんでしょ?凄いねー!」
言われてみればそうだ。
たまたま見つけられたのだろうか、それにしてはタイヨウはほとんど焦りを見せていなかったように見えた。
力がある故の慢心にも見えるが果たしてそれだけで余裕を持てるのか、はたまた他に何か理由があるのか。
最後にタイヨウは可愛い声で助けを呼べと言っていたし、何か他に手があるのだろう。
というかここまで来て今更疑問なんだけど、タイヨウは何歳なんだろう?
自然に話していたけど過去のルーク、そして勇者ルークとも会ったことがあるというし最低でも100年は前の人だよね。
それにしてはタイヨウは20代後半のような若さを持った若い将軍だった。
あの人も転生を繰り返しているのかな。
それも含めてこれが終わったらじっくりと話を聞き出そう。
なんせ依頼を受けたんだから報酬はあってもいいよね。
「話では湖の先だね」
「そこへ行く前にもう一度聖獣に会いたいんだけど」
「多分力になってくれないよ?」
「そうじゃなくて、魔王教団が居るのなら避難してもらった方が良いかなって」
目的が聖獣なら逃げてもらう方が良い。
力を借りられるのならそれでいいんだけど、そもそも聖獣が相手の手に落ちないのが前提なので居なくなってもらったら困る。
聖獣の居る湖に寄って、名前を呼ぶと、案外普通に出てくる。
「あれ?早いですね……って前と何も変わっていないじゃないかー!!今のままだとオデは力を貸さないぞ!」
「そうではなくて……魔王教団がこの近くに居るので逃げてください!!」
「魔王教団……?まだあの連中は暴れているのか」
「なのでここから離れてくれませんか?私達が倒すので」
「ふむ、それなら……」
聖獣は素直に私のお願いを聞いてくれる。
そう思ったその時……空を見上げてどこか安心した様子を見せていた。
一体何を考えて居るのか分からないけど、早く逃げてくれるのなら逃げて欲しい!!
そんな私の願いとは裏腹に聖獣は空を見上げて動かない。
「これなら大丈夫か」
「え……?」
「ここにいるオデを守ってくれルーク様。それくらいの力すら無いのなら認められない」
「そんな事を言ってる場合では……」
「焔王様なら二つ返事で了解してくれるんだがなー」
私は焔王ではないのに……だけどこの巨体を力ずくで退けるのは無理そうだ。
全く物分りが良くて優しい声の聖獣だと思ったのにとんだ頑固ものね。
こうなったら仕方ない。聖獣のいるこの場所に魔王教団が来る前に倒すしかない。
タイヨウが言うには湖の少し先ってことだし、まだ間に合うはず。
「こっちから出向けば――」
そう口にしようとしたその時、背後からビリビリと嫌な気配を感じた。
私を含むスイレンのみんながそれに気づいて咄嗟に振り返る。
「あら?聖獣って寝てるんじゃないの?」
「さぁな。それよりとっととこんなことは終わらせて……ってなんかガキが居るぞ」
二人組の魔導騎士が近づいてくる。
初めて見るやつだ。
しかし……その中の一人をショナはまるで……いや明らかに憎しみを抱いた形相で睨みつけていた。
いつもの彼女じゃないみたいな異常な様子に不安を覚える。
恨みに似たその瞳を見てショナが憎しみを抱くような人を思い出す。
聞いた過去の話にそんな女性がいた……まさかあの魔導騎士の女性は!!
「アステリズムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
雷のような怒号の声を上げながらショナが剣を抜き放つ!!
私たちはショナの名前を呼ぶんだけど、彼女に声は届いていない様子。
凄まじい雷を纏いながら閃光となりてアステリズムに向かっていった。
アステリズムはそれに気づいて同じ属性の雷の黒い剣を抜いて受け止めてしまう。
二人の剣がぶつかり合うとまるで共鳴するかのように雷はビリビリと雷光をぶつけ合うと黄色い雷と黒い雷は爆発した。
同じ属性の力をぶつけた事で力が融合したけれど聖剣と魔剣という相反する力だったために爆発を起こしてしまったみたい。
「いきなり何……?あら、あなたは確か」
「アステリズム!!絶対に許さない!!!!あああああああああああああっ!!!!!!!」
「ちょ……急に何よ……うるさいわね。これだから子供は……」
アステリズムもショナのことは覚えているみたい。
二人が因縁の再会を果たしてしまった中、冷静に状況を確認するのはもう一人の魔王教団。
「ふむ、我ら魔導騎士に逆らうとは愚か者どもめ。神の神罰をこのアークトゥルスが与えよう」
そしてもう一人はエキナさんを苦しめ男の名を呟くのだった。
どうやら攻めてきた魔王教団の2人は最低なロクでなしだったみたい。




