第273話 魔王教団の襲撃
あの方と呼ばれる眷属の手紙を読み終えて、再びタイヨウは話を続けてくれる。
聖獣に認めてもらうための方法をタイヨウに聞きに来たんだけど、笑われてしまった所で眷属のカラスが来た。
初対面なので個人的には不愉快な気持ちになるが、タイヨウは前世の私を相手にしているような振舞いだったから仕方が無いのかもしれない。
先ほどまで元気に笑っていたタイヨウだったけど、何かを思い出して悲し気な表情を浮かべていた。
過去の私を知るからこそ、その記憶を持っていないせいでこんな想いをさせてしまっている。
「まあもうそんなことはいいさ!」
「……」
強がっているようにも見えるけど、あまり気にしていないようにも見える。
この国で焔王と呼ばれていたルーク、そして勇者と呼ばれていたルークに会ったタイヨウ……今まで出会った私との死別を経験しているからこそ感覚が可笑しくなったのかもしれない。
憐れみとはまた違うけれど、可哀そうな人……。
しかしそんなことを感じさせないほどタイヨウの声は明るい。
眷属の手紙を机に置いて、話の続きをしてくれる。
「で、聖獣に認めてもらうんだったか?それはもう強くなるしかないだろ!!」
「そこを何とかならないんですか?早く認めてもらうための力……とか」
「60年前、勇者ルークが訪れた時は聖獣の力を使いこなしていたんだが……」
「それほど強い人だったのですか?」
「それもあるが……あの魔法は実力が伴わなければ最悪死ぬようなものだからなぁ」
「なっ!?今のルークそんな危ない魔法なのですか!?」
聞いた魔法は術者の実力が足りなければ死ぬような魔法なんだけど、どうしてそれにサツキが驚いているのか。
使うのは私だから気にしなくてもいいのに。
そんな私の気持ちとは裏腹にサツキはタイヨウに噛みつく勢いで立ち上がる。
「危ない魔法なら必要ありません!!」
「聖獣の力を取り入れないと悪い女神の復活は防げなくなるから、それはダメだ」
「そんなことはどうでもいいんです……大切な仲間に死んでほしくない……」
「本当にいい仲間を持ったみたいだが……女神が復活すれば狙われているルークがどうなるか俺にもわからねぇぞ?」
サツキが危ない魔法を使う事を心配してくれているのはとっても嬉しいけど、私は魔王教団を止めたい!!
そのために必要な事なら何でもやる。
どんな危険にも身を投じる覚悟を私は決めているんだ。
「まあさすがに本人はやる気みたいだな」
「ショートカットみたいで何かいい方法があるのなら知りたいんですが」
「良いかどうかは分からないが、あの方からの連絡で近くに魔王教団の魔導騎士が来ているらしい」
「あの方……?」
さっきの手紙のことを言っているんだろう。
「そいつを倒して来てくれないか?」
「どうして私達に……?」
「だって今内乱中だし、戦力の大体をアマノの街を守るために使ってる。あんま余裕ねーんだよ」
そんな状況だからこそ私達が来たからお願いしたいってことだよね。
いいように利用されている気がするけど、ここまで来るともう実戦でもしない限り強くなれないかもしれない。
修行はやった……ならその成果を示すためにも魔王教団を倒すしかない。
場所は本当に街の近く……というか聖獣の居る湖に近い所。
「まさか魔王教団の狙いは……」
「聖獣だ。てことで頼んだ!」
タイヨウはそう言うと立ち上がって部屋を出て行こうとする。
今から用事でもあるのだろうか……もう少し詳しく話を聞いておきたいかったんだけど……。
特にあの方とはだれなのか。
タイヨウはそれ以上何も教えてくれず、むしろ慌ただしく部屋の外で待機していたヒザシを呼ぶ。
「準備してくれすぐに発つ」
「ちょっと!」
「何でもかんでも危険を恐れるなよルーク」
「……え?」
「大丈夫だ。もし何かあった時は……あ~……超かわいい声で叫べ!!」
「まさか助けに来てくれるんですか?」
「ああ」
なんだかちょっと気持ち悪いんだけど、世界一強いと言われている男が助けに来てくれるのならこれ以上のことはない。
しかし今から用事があるみたいなのにどうやって助けに来てくれるのか分からないけど、嘘を付いているようには見えない。
それを信じて私達は再び城を出て、皆と合流してタイヨウと話したことを教える。
するとショナは元気な声で叫ぶ。
「今から魔王教団を倒しに行くんだね!」
それを聞いていたルーフェは面倒くさそうな顔をしていた。
「なるほど……ボクは付いていけないけど、大丈夫かい?」
「あれ?ルーフェさんは来ないの?」
「タイヨウにお願いされていてね。これからボクも魔王教団対策にいかないといけないんだ」
用事があるみたいだったけどまさかこれのことだろうか。
それならまたいつもの6人で行くしかないか。
そう思っていたらルーフェはサツキとマツバを名指しで呼ぶ。
「君達もボクに付いてきてくれ」
「どうして俺達が……?」
「魔導騎士の力が必要なんだ」
「それならルークは……」
「ルークちゃんは今から魔王教団退治でしょ」
「で、でも……」
「サツキくん!君はルークちゃんの心配をし過ぎだよ!大切な人を信じる事も仲間じゃないかな?」
「うぐっ……」
サツキはルーフェに諭されて諦める事に。
久しぶりのスイレンの4人での依頼、しかもこれは陽王タイヨウの依頼だ!!




