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第271話 剣の精霊


 ミツキとの意地の試合は視界が白く包まれて負けた――かと思ったが私はまだ立っていた。


 立っているしまだ戦えるのにどうして視界が白に包まれたのか……その白い光は私の炎帝剣から放たれていたから。

 

 その輝き出した炎帝剣は勝手にミツキの攻撃を防いでしまう。


「何その剣……!!」


 ミツキが驚きの声を上げるが、正直私にも何が何だか分からない。

 

 剣は私の身長の3分の2を占める程大きかったのに、私の身体のサイズにピッタリの刀に代わっていた。

 

 見た事もない炎帝剣の形なのにこれが炎帝剣の本当の姿だと確信した。


『少しだけ力を貸して差し上げますわ』


 頭の中にとてつもなく綺麗な女性の声が響く……。

 

 子供の頃の記憶に炎帝剣と契約した時の事を思い出すような美しい声……久しぶりに聞いたこの声は炎帝剣の精霊だ!!


 約10年ぶりに剣の精霊の声を聞いた。


 そして炎帝剣から供給される炎は今までに感じた事のない炎で、いつもの血のような赤から白に輝き、炎への耐性がある私に熱を感じさせるほどの超高温。

 

 しかし不快な熱さはなく、むしろその炎に包まれている手が心地いいまであった。


 これが本来の炎帝剣!!


 輝きに圧倒されて一歩後ろに退くミツキ。

 

 いい感じに距離が空いたのでこの剣の力を試す。


「いくよ炎帝剣……!!」

「くっ……!!舐めないでよ!!!!私だってまだサツキとのデートあきらめてないんだからねっ!!炎神剣アメノウズメ舞い踊れ!」


 ミツキが剣の真名を叫ぶと炎が塚から渦を巻くようにして現れる。

 

 やがて渦は小さな炎の龍となり、それが3頭現れて空へ昇った。


 一瞬炎が消えたのかと思ったら次の瞬間、小さな3頭の炎の龍は巨大な龍へ昇華した。


「死ねっ!このクソビッチ!!」

「えぇっと……」

 

 どうして私がそんなことを言われなきゃいけないのか物凄く疑問だけど、そんな言葉を真に受けている時間はない。

 

 目には目を炎には……炎をだ!!


(そら)を照らせッ!!」


 炎帝剣にそう指示をしたその時、炎の龍のさらに上の(そら)を白い炎の輝きで覆う。

 

 その光の正体は炎帝剣が作った小さな炎……。しかしそれは小さいと言ってもあくまで惑星の太陽よりも小さいだけ。


 空を覆う程の膨大な炎が炎の龍を飲み込んだ。


「ちょ、ちょ……炎熱耐性あってもこれは死ぬってば!!ビッチって言ったのは謝るから!!ごめんなさい!!!!」


 どれだけの力があるのかと気になって全力でやった結果、凄まじい事になってしまった……。


 ちなみにこの炎の消し方が分からない。


 これほどの力をすぐに解除するのは難しい……というかこれを制御しているのが炎帝剣の精霊なのでやり方が分からない。

 

 ちょっとずつサイズを小さくしていくしかないんだけど、間に合わないだろうし……。


 するとまた頭の中で綺麗な女性の声が響き渡る。

 

『その必要はないわ』


「え……?」


 頭の中で響く精霊の声が聞こえた瞬間、太陽のような巨大な炎は一瞬で形を消した。

 

 あれほどの膨大な力を簡単にしかも一瞬で消せるなんて……これが炎帝剣……。


 この力があればきっと魔王教団だって倒せる!


 試合が終わって剣を仕舞おうとしたその時、いつもの大きな剣に姿が戻ってしまった。

 

 直後、どっと力が抜けてまるで貧血の時のように視界が歪む。


「うっ……」


『やはりまだ早いか』


 炎帝剣の精霊はそれだけ言うと気配を消してしまった。

 

 剣の中に戻って私の中に勝手に入ってくる。この剣に納刀という概念はなく、私の身体の中に仕舞う事で持ち運びを可能にしている。


 炎帝剣を手で持ち運ぶ必要はなく、体重も質量も変わらない。


 私が疲れて倒れてしまう瞬間、サツキが気づいて何とか地面に頭をぶつけることは無かった。


 しかしまだ視界が安定しない。

 

 これはまさか炎帝剣を使った反動だというの……?


「やはりまだ認めてもらってなかったか」

「どういうことだ?聖獣クラン殿」

「炎帝剣……そんな名前の剣はこの世に無い。おそらく今のルーク様では扱えないからあの方が仮の名前を語ったみたいだ」

「その言い方……クランは炎帝剣の本当の名を知っているのですか!?」

「知っているが教えない」

「どうして!?」

「無理やり使えば今のルーク様が死ぬから……剣が真名を教えずに力の一部を貸してくれるのはそのためだ」


 つまり完全に私の力不足という事ね。


 確かにあれだけの力をコントロールできる自分を想像できない。

 

 おそらく精霊の介入が無ければあの炎は地面に落ちていた。


 制御は遥かに難しい剣……それが炎帝剣いや、その名前は違うのか。

 

 この力を引き出せない限り、聖獣も力を貸してくれないみたい。

 

 今は聖獣を説得できないので諦めて街へ戻る。

 

 ちなみに試合の結果はドローという事でお互いに納得した。

 

 よく分からないサツキとのデートを賭けた戦いが引き分けになったことでこの話もまたなかったことになる。


 一安心したような少し残念――ってどうして残念なんて考えてしまったんだろう。

 

 私は頭を振って思考を別の方へ向ける。


 今は聖獣に認められる必要がある……そのためにはやっぱり過去のルークを知る必要があるんじゃないかな。

 

 タイヨウなら……何か知っているかもしれない!!

 

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