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第267話 湖の聖獣


 ここまで案内してくれたおじいさんに代わって次はこの2人が案内してくれるという。

 

 ルイはともかく……ミツキまでいるとは……。


 別に嫌いじゃないし気に入らないとかそういうわけじゃないんだけど、苦手なんだよね。

 

 久しぶりに会った時のフーリアに似ていて、あの時の不安をおもいだしてしまう。

 

 そんなトラウマを呼び起こしている私の事なんて知る由もないミツキは意外にも元気な声で話しかけてきた。

 

「ということでここから案内してあげるわ!」

「湖でしたっけ……?そこに居る聖獣は一体どんなのなんですか?」

「ふん、あなたに教えることは無いわ」

「……」


 元気だったので大丈夫だと思ったら、やっぱり冷たかった。


 だけどこっちは合計で900年は生きた魂を持った転生者……らしい、記憶は無いけど、そんな私がこんな子供に怒鳴るなんて大人気ないよね。

 

 そこへサツキが入ってきて、私と同じ問いかけをする。


 するとミツキは私に対してとは全く違う反応を見せる。

 

「えぇ!きっと驚くだろうから実際見た方が良いんだけど……サツキが気になるのなら教えてもいいよ」

「事前に知っておきたいな」

「いいよ!だけどその代わり今晩デートで!」

「あー……じゃあいいや」

「なんでよ!!」


 鼻の下を伸ばしてデレデレするのかと思ったら意外にもすぐに拒否してくれた……何故か私はそのサツキの行動に安堵する。

 

 しかしそれが気に入らなかったのかミツキが噛み付いてくる。


「何笑ってんのよ!」

「わ、笑ってはいないけど……」

「心が安心してた!!」

「じゃあ笑ってはいないじゃない……」

 

 本当に笑ってはいないし、そこまで面白い話でもなかったんだけど……もしかして口角が上がっていた……?

 

 いやそんなことはないはず。


 おそらくミツキは適当にそんなことを言ったんだろう。


 そんな話の間にルイが入ってきてミツキを宥めるとそのまま湖の方へ向かう。

 

 街を出ると確かに舗装された道路はあるけど、近代技術はそれだけなんだよね。


 信号機とか標識などそういうのはない。

 

 だから異世界の風景に馬車の通り道だけ道路が敷かれている。


 それだけでも十分移動は早くて快適なので商人が街を良く出入りしているみたい……と言ってもほとんどアマノの国の商人みたいだけどね。

 

 それでもたまに外国の商人がいるのは技術面、そして魔導騎士(エーテルナイト)が多くいる大国という肩書を持っているのでそういった商売人達の目に留まる。

 

 さらにはこの技術を国へ持って帰ると考える人もいるはず。


 アマノの快適な街から一変して異世界に飛んだような感覚に陥りながらも歩きで湖へ向かう。


 歩きで30分も移動しない距離にある場所で確かに近いけど、車に乗ったらもっと短縮できたのに……。

 

 街を行き交っていた車の性能は詳しく分からなかったけど、見た感じ前の世界と同じようなものだった。


 それよりは遅くてもこの距離なら3分以内に湖まで来られたはずだ。


「あっ車は使用不可だよ」

「どうして?」

「外での使用はまだね……外国の商人さん達に見られてもこの街でしか動かないって説明してるからね」

「なんでそんな……」

「オーバーテクノロジーだからだよ。異世界のこんな自然たっぷりな場所に突如車が現れるのは変じゃない?タイヨウ様が言うにはこういうものは順序を守らないとだってさ!大昔からいるのにまだ車しか作っていない当たり、深刻な問題なのかもね」


 傍から聞いている分には独占しているみたいでずるいけど、これもこの世界で生き抜くために考えた作戦なんだろう。

 

 アマノにいる人のほとんどが転生者でこの世界に慣れていない。


 この世界の人達に騙されて知恵だけを貪られるそんな危険をタイヨウは感じ取っていたのかもしれない。


 死者をなるべく出さないために守っているんだろう。

 

 実際のところ魔法と剣を扱えても普通に過ごしている人や力不足で戦いに向かない人なんかも結構居るみたい。

 

 そんな人達は普通にこの世界に住人として過ごしているみたいね。


「それに今から会う聖獣様はそういうの嫌いだし」

「車が?」

「音が苦手かな。全体像は見たことないんだけど、大きな物音を立てると地響きを起こすんだよ!」

「車で移動しないのは敵だと思われないため?」

「そうそう」


 どうやら相当警戒心の強い聖獣みたいね。

 

 話を聞いてくれるのか少し不安だけど、そこは最悪タイヨウを頼ればいいか。

 

 問題は敵対されて戦うことなるかもしれないこと。


 リリィータートルとのすれ違いで戦うことになり、相当苦戦した。

 

 聖獣はもはやこの世界にとって最強の存在といっていいだろう。それをまた敵にはしたくない。


「大丈夫なのか、それ」

「大丈夫大丈夫!これから会う聖獣様はタイヨウ様いわく超優しいから」

「ミツキ会ったことがあるのか?」

「頑張って一部見たよ!とっても可愛……おっとこれは内緒だった」


 うっかり漏らした一言は”可愛い”か……。

 

 毎度巨大な聖獣を想像してしまうけど今回は小さいのかな?


 それなら警戒心が強いのも頷ける。

 

 どんな見た目だろう……今まで会ってきたのは狐、鰐、亀、ライオン、狼。


 湖と言うからは恐らく水に住む動物だろう。


 鮫とか……?


 そんな想像をしながら湖を眺める。

 

 とっても綺麗だし、神秘的な魔力を感じる。これは聖獣がいる場所によくある豊富な大地の魔力ね。


 しかし肝心の聖獣は見当たらない。


 いや湖の中央には陸地があるのでそこにいるのかな。だけどそこへ行くための橋やボートはない。

 

 どうやって聖獣に会うのか気になっていると痺れを切らしたフーリアがミツキに問う。


「何も無いじゃない嘘つきね」

「アンタもなかなかの物言いだけど、許してあげる。愚かなバカに免じてね」

「は?殺すわよ?」

「やれるものならやってみなさいよ!サツキの仲間に相応しいのかテストしてあげる」

「あんな水男興味無いわよ。目腐ってんの?」


 2人の恐ろしい会話は聞いていて不安になるので私は目を逸らした。


 目を逸らしつつ、周りを見渡すが本当にどこにも聖獣が居ないのでルイに確認する。

 

 するとルイは湖の内側の陸を指さす。


 やっぱりそこか、そう思った次の瞬間ルイは驚くべきことを言い出す。


「ちなみにあの陸地の()にはいない」

「どういうこと?」

「……あの陸そのモノが聖獣様なんだよ」


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