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第256話 神の提案


 記憶を辿るための魔法を使おうとした私に気づいていたのか、サツキが夜抜け出すタイミングを見計らって出てきた。

 

 どうやら一緒に記憶を辿りたいみたいで、私の新しい魔法の概要を知っていても立ってもいられなかったという。


 この魔法は手を繋ぐことで共有ができるので最大2人までなら魂に干渉して記憶を見ることが出来る。

 

 ちょっと恥ずかしいけど、同じ前世の記憶を持ち、同じ世界から来た子なら知られても問題は無い。

 

 魔法を使うと意識がフワフワとしてき、なんだか幸福な気持ちになる。

 

 私達はその魔法を使って夢のような世界へ来た。


「不思議な魔法だな」

「毎回こんな感じだよ。神様に干渉するの」

「へぇ……なんかなんも無い寂しいところだな」


 辛辣な意見だけど、確かに辺りは雲のようなものに覆われていて他に何も無い。

 

 前は凄い陽キャオーラをガンガンに出した性格陰キャの神様が出てきて、周りも海だったんだけど、今は見る影もない。

 

 とその時だった!!


 周りの雲は晴れて夢の中の空には太陽と月が2つ出現する。

 

 陸にはまるで村みたいな複数の不思議な建物が並んでいてその隣にある海は砂浜とパラソルが設置してあり、すぐにでも遊ぶことが出来そうだけど、なんだか混沌とした空間になっていた。

 

 そこへどこからともなく声が聞こえてくる。


「これならいいか?」

「え……誰ですかこのおじいさん」

「お主が名付けた変なアレ……サンライザーウンタラカンタラの聖獣の創造主じゃよ」

「あー……私じゃなくて前のルークですね」


 見た感じ凄いおじいちゃんだからきっとボケてるのね。

 

 それにしてもライオンの聖獣の名前はなかなかいいネーミングセンスだと思うけど。

 

 そんなことを考えていた時、サツキがその神様に近づいていき、挨拶をする。


「初めまして神様。できればその詳しい話を俺にも聞かせてくれませんか」

「主は……転生者サツキか。ルークが許可をしたのなら良い、話そう。いいじゃろ月の神よ皆も良いな?」


 おじいちゃんの神様がそんなことを言うとどこからともなく、まるで月のような美しい女神様が現れる。

 

 するとそれに呼応するかのように今まで会ってきた神様達が姿を表す。4柱の神様がこの場に揃った。

 

 神様は全部で9柱……悪い女神様を抜くとようやく半数と言ったところか。

 

 冬休みあたりから探して4月にようやく4柱……このペースなら8月には全員揃いそうだけど……。


「それじゃあ遅すぎる」

「何がですか?」

「今、8月には揃いそうとか言ってただろ?」

「心の声が聞こえるんですか?」

「この世界は神々の領域じゃからのう。先程お主が凄いおじいちゃんだからボケているというのも聞こえている」

「あっすみません……あれ?分かっていたのなら……」

「サンライザーうんたらはお主の考えた名前であっている。悪しき女神に目をつけられてしまった哀れな転生者ルークよ」


 サンライザーなんて名前付けた記憶がないんだけど……。

 

 いやそもそもその話が本当ならハーベスト帝国の初代皇帝ルークが私ってことになるんだけど!?

 

 ハーベストの歴史は少し調べて分かったことがある。それは国ができたのが200年くらいという。


 今は916年なので700年頃の話だ。

 

 そこまで長生きでは無いのでありえないはずなんだけど、神様が嘘をついているようには見えない。


「それは魂に鑑賞する魔法で調べれば良いじゃろう」

「で、でもそれが本当としてどうしてそんな記憶が私の中に?」

「この説明も最後だと思うと少し感慨深いのう……」


 おじいちゃん神様は空を見上げて感傷に浸るかのように目に涙を浮かべていた。

 

 まるで大昔から続く思い出の終わりを示唆しているかのような。


「お主はもう既にこの世界で9度転生しておる」

「まさかそんな……だって私は断片的でも前世の記憶が……」

「断片的?一部思い出せないと?」

「……」

「それは魂の劣化。神とは違い、人間の魂には限界がある。本来であれば死後は完全に記憶を無に返してから、そこから再び魂を作り替え、転生する。たまにそれでも記憶を持ったものが現れるがそれはミスによるもの」

「ミスだったんですか」

「お主は少し違う、悪い女神の呪いで無理やり定着させられているだけじゃ」

「えぇ……どうしてそんなことに?」


 まさかあの女神様の勘に触るようなことをしてしまったとか?

 

 全く記憶に無いんだけど……しかし神様は首を横に振る。


 心……読まれてるんだっけ、なんだか気持ち悪いな。

 

「好きらしいぞ」

「……はい?」

「だからその悪い女神はお主のことが好きなんじゃおそらくな」


 女神に好かれるって前世……いや、この世界へ来る前の私は一体何をしたんだ……?

 

 確かにこの話が本当なら断片的な記憶にも納得がいく。ただこの神様もどうしてこんなことになったのかはよく知らないみたい。

 

 9柱で新しく作ったこの世界の始まりの99年後に突然、私の魂を連れてきて無理やり転生させたという。


 それが勇者ルークの誕生であり、140年頃に死んでそこからその60年後の200年に再び転生。


 過去の私が死んだ年数はそれぞれ違えど大体100年周期という。


 すごく壮大な話になってきたけど、今の今まで私はその女神に捕まることはなかった。

 

 それなら今回も大丈夫なんじゃないかな。


 確か神様は世界を作って1000年後には新しい世界を作るためにそこを離れなければいけないと聞いた。

 

 ようは干渉できるこの最後の年を乗り越えられればこの輪廻も終わるか。


 寂しい半面、死んでも次からはまっさらな魂で転生できるしそれでいいかと考える自分がいる。

 

 憶えて無いけど900年耐えてきている訳だし、今回だってきっと大丈夫じゃないかな。


「すごい話だけど油断しちゃいけないよルーク」

「サツキ……ごめんね。巻き込んじゃって」

「乗りかかった船だ。気にする必要は無い……それにまあ何となくここまでの話は予想していた」

「予想できるものなの?」

「少なくとも何度も輪廻を繰り返しているのは考えていた」

「凄いね……」

「今まで君から聞い話を考えればね」


 私は一切想定すらしていなかった。


「お主が鈍いだけじゃ」

「……」

「ということで出来れば後80年は魔王教団と干渉しないでくれい」


 そんなことを言われてしまうけど、今の状況を考えるとサツキと目を合わせながらおじいちゃん神様に言い放つ。

 

「「それは無理」」

 

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