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第255話 ナラク


 狼の聖獣の助けがあって、マレフィックを倒した私達はこれからどうするべきか話し合う。

 

 検問所ではおそらくサジタリオンが時間を掛けてマレフィックの到着を待って居たと考えると既にルエリアはもう駄目だろう。


 魔王教団の手に落ちたルエリアには長居はできないけど、ここを離れる手段がない!!

 

 馬はサジタリオンが持って行ってしまった……。

 

 途方に暮れていると狼の聖獣が私を見て呆れた声で呟く。


「我の背に乗れ」

「いいの?」


 この聖獣の背中は16歳の私達6人を余裕で乗せられるくらい広くて大きい。

 

 いや、何でもかんでも疑ってかかるのは簡単で裏切られる危険性を少しでも減らす。


 それはルミナに裏切られてしまったのでそういう考えを持ってしまったのは仕方がないけどそれじゃあ前には進めない。


 過去の自分を捨てて私はルークとして生きていくことを決めたんだ。

 

 ここからは可能性を貫く勢いで進んでいかなきゃ!!


「夕方までにハーベストに着ける?」

「無論だ。我より速い生き物はこの世に存在せぬ」


 サジタリオンの強化された馬のスピードを圧倒した聖獣ならその言葉にも信憑性がある。

 

 私達は6人で聖獣の背中に乗ると操られていた残りの6人を魔法で運ぶ。

 

 宙に浮く魔法が難しいのは動くものを自在に操作するのが大変というのが9割。物や動かないものを運ぶのなら案外簡単にできたりする。

 

 ……途中で目が覚めたら落っことしてしまうけど、私の治癒の炎を受けていないこの人達は襲ってくる可能性がある。

 

 せめて安全な所へ移動してから治さないと。


 そんなことを考えながら全員の確認が出来たので聖獣にハーベストへ向かうように指示する。

 

 面白いくらいに私の指示に従ってくれる聖獣のおかげでハーベスト帝国のジャスミンの街付近の川の綺麗な平原まで辿り着いた。


 日もちょうど落ちかけるようなそんな時間。


「ふむ、少し遅かったか。全力ならもう少し早かった」

「ありがとう……えっと、狼さん」

「なんだまだ記憶が無いのか……我はナラクだ」

「記憶……した覚えはありませんが、ナラクですね」

「ついでに我の力もお前に与えよう」


 聖獣は私に固有魔法を与えてくれる。

 

 いい加減聖獣に力を貰うのは慣れてきたのでどんな魔法が来ても驚かない!そう思っていた。

 

 受け取った魔法は何とも奇妙なもので魂に干渉することが出来る固有魔法。


 あまり戦闘には役に立ちそうにないけど、魂と言えば気になることがある。

 

 それは魔王教団の薬だ。

 

 この手にした魔法には死者の魂を砕く事で触れることが出来るというとんでもない能力を持っていた。


「察しの通りこの魔法は魔王教団のある女も使える」

「ど、どうして……?」

「さぁ……神にでも聞いたらどうだ?」

「知らないということね……」


 そういえばサンに力を貰った時は出てこなかったような。

 

 状況が慌ただしかったのですっかり忘れていたんだけど、まるでいつでも干渉できるような言い方だ。

 

 与えられた魔法は魂に干渉する魔法……これを使えば私の中に入ってきた聖獣の力とも対話ができるんじゃないかな。

 

 それを使って神と話せと言うことか。


 ここで重要な話をしてくれないのは周りに私以外の人が沢山いるからか。

 

 ナラクは気遣ってくれているみたい。私が何者であるかそれを皆に聞かれないために……。


「それでは我は一度ここを去る」

「え?ついてこないの?」

「この巨体で街へは入れん。だが安心するがいい、我はいつでもお前を見ている。生まれた時からずっとな」

「それってどういう……そういえばあなたは私の赤子の頃に……」

「それに関して知るべきでは無いかもしれん。いや知らずにこの戦いに勝利してくれることを願う」


 ナラクはそう言うとたちまちどこかへ消えてしまう。

 

 ナラクを警戒して皆黙ってくれていたけど、ここでようやくショナが大きなため息を着く。

 

 どうやら巨大な狼に食べられると不安だったみたい。皆にはまた聖獣から力を受け取ったことを伝えた。


 他にも聞きたいことはあったんだけど、それは自分で神に聞かないと分からない。


 本当に話せることは魔法のことだけなので話は直ぐに切り上げた。

 

 私にはやらなければいけないことがあるからねっ!


 それは一刻も早くアナを元に戻すということ。

 

 私の治癒の炎ならこの薬を打ち消せることはわかっている。

 

 治癒の炎を使うとアナはバタバタと暴れ始める。気を失っているはずなのにまるで中にいる何かが暴れるように……。

 

 それと同時にクレスト達も目を覚ます。


 生け捕りにしたけど、拘束する方法はユウリの植物でグルグル巻にしてるのみ。

 

 ルーンと受付嬢は何とかそこから動けないんだけど、残りの4人は活動を始めた。


 クレストたちはまるで自我が崩壊しているような意味のわからないことをずっと呟いている。

 

 そして私に襲いかかってくる!!


 それをサツキ達が止めてくれた。


 隙を見て、アナの治癒を終えて残りの5人も皆に抑えてもらいながら治すことに成功した。

 

 新しい魔法のおかげで治癒の炎と合わせることでこれくらいの症状なら完璧に薬を取り除くことができる。

 

 治癒の炎で体を治癒して、悪い魂を燃やす。その魂を捉えることが今回で出来るようになったのは良い収穫じゃないかな。


 全員の治療を終えて、ジャスミンの街に運び出す。


 ギルドを借りて6人を医務室で休ませるとすっかり外の日が落ちて夜になってしまった。

 

 宿を借り、皆が眠りに着いた辺りでそっと抜け出す。

 

 魔法を使うとみんなを起こしちゃうから、それに記憶を辿るから、すぐに終わるだろうと魔法を使おうとした時だった。


「待ってくれルーク!!!!」


 突然の呼び止めに驚いて振り向くとそこには暗がりの夜の月の光に照らされるサツキが立っていた。

 

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