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第252話 絶望の星


 襲って来たアナ達を返り討ちにしてほぼ無傷で無力化したので馬車へ戻ろうと近づく。

 

 だけどそこでサジタリオンの様子がおかしいと感じて身構えていた次の瞬間――彼から魔法の矢が放たれる!!


 突然の事で驚いたものの違和感に気づいていたので避ける事は出来た。

 

 だけど、その矢の落ちた所にある大きな岩山が簡単に砕け散る様子を見て思う。


 この人が本気で私達を殺そうとしたことに――!


「どうして……」

「……残念だけど、君達を逃がすわけにはいかないんだ」

「逃がす……?」

「君達はこれからエステリアへ行く……そしてあの人のために尽くすんだ」


 サジタリオンの優しい瞳が私達を睨みつける。

 

 もう私達の知るサジタリオンがその場には居なかった。

 

 居るのは私達を逃がすまいと魔法で作った弓と馬の手綱を握る狩人……!!


 戸惑っている私達を置いてサジタリオンは無慈悲に動きだす。

 

 馬を操って走り出すと荷車がドスンッ!!と低い音を立てながら地面に落ちて、破損した。

 

 これじゃあハーベストに帰れない!!


 ここまでおびき寄せるためにここで止めたのか。エステリアに近い場所で……。

 

 ルエリアには入ってしまったのでここから馬無しで国境を超えるのは大変だ。

 

 私達が安全にハーベストへ戻る方法は1つ……サジタリオンからあの馬を奪うしかない。

 

 サツキとマツバは混乱していて動けそうにない……無理もないか二人にとっては師匠みたいな存在だったはずだ。

 

 ここはいつもの4人で戦う!!

 

「フーリア!ショナ!!いつも通りによろしく……」

「……わ、分かったわ」


 2人も動揺しているけど、私の指示を聞いてくれる。

 

 いつも通り2人が先行して攻撃を仕掛けに行く……しかし馬の動きが速すぎてフーリアは置いて行かれる。

 

 ショナは最速の剣で攻撃を加える。

 

 速度を重視した動きなら何とか追いつけるが、パワーが足りない。

 

 魔法で作った弓は圧倒的に軽いが強度が一級品で簡単に受け止められてしまう。

 

 サジタリオンの力の強さもあるんだろうけど、それだけじゃない。


「なにこれ……!?」


 サジタリオンの魔法の弓に触れたショナの雷の剣に纏っていた電気が吸収されていく。

 

 あの魔法には雷を飲み込む力がある……?

 

 今のままだと何が何だか分からない……私達も戦いに参加しないと……。


 そんなことを考えていた時だった。


 サジタリオンは馬を使ってユウリの方へ向かって行く。

 

 狙いはユウリ……いや、まさか……!!


「君達の弱点は持久力の低いユウリだ」


 一撃の魔法の火力は私を遥かに超えるユウリ。

 

 それに飛び込んでいくのは危険だけど、スイレンの切り札は間違えなく彼女だ。


 ユウリの反撃を受けたらサジタリオンでも追い詰められるし、沢山旅をしてきていればそれくらい分かっている。

 

 それでもあえて狙うのは最後まで置いておくと厄介だから。


 私もユウリのことを理解しているのなら彼女を先に狙う。なぜならこれの最大のメリットはユウリを倒すことでの人質確保。

 

 あの子は魔力の消費が激しくてすぐにバテて動けなくなる。

 

 つまり1番強力な魔法を使えるけど、誰よりも人質に取りやすい子だ。


 馬の速度は当然早いので追いつけない!!


 私達が駆け寄る間、ユウリはサジタリオンの攻撃に対して、植物や大地を操る魔法で対抗する。

 

 地面を大きく揺らす後先を考えない魔法の使い方だ。このままだと直ぐに動けなくなっちゃうけど、大地を動かしているので馬もあまり自由には動けない。

 

 揺れる地面を動きづらそうに駆け巡る。


 むしろここまで地面をゆらされても耐性を崩さない方がおかしいだろう。


 このまま耐えてくれれば、魔法で助けられる!!


 とその時だった。


「そろそろいいかな。馬限定の強化魔法スレイプニル発動!!」


 サジタリオンの乗る馬は地面から離れる。

 

 ただジャンプしたわけじゃない、地面から数センチ浮いた所で留まっている。


 これは空を飛ぶ魔法?

 

 強化魔法と言っていたし、馬を強化する上位の魔法だ。

 

 まずい、これだと地面を揺らしても無意味……この魔法で浮けるのに先程まで使わなかったのはユウリの魔力を消費させるためか!!


 ユウリなら少しの間でも耐えられると思って余裕を持っていた自分を殴ってやりたい。

 

 だけどもう遅い、魔力を大量に使うことで地面を揺らしていたユウリは既に痩せていて息も荒くなっている。

 

 サジタリオンは当然その間にユウリを捕獲するために近づいていく。スレイプニルで強化された馬はこれまでの比じゃない程の速度を誇り、一瞬でユウリの目の前まで飛んだ!!


「うぅ……」

「ごめんね、でも仕方ないんだ。いずれ分かる……この世界には魔導王が必要なんだってことがね」


 穏やかな声でそんなことを言うとサジタリオンがユウリヘ手を伸ばす。


 バシッ!!


 甲高い音と共にサジタリオンの腕が弾かれて、その勢いで馬も押し返される。


「何!?」


 それにサジタリオンも驚きユウリから距離を取る。

 

 彼女の大地を操り、植物を操る魔法はまだ生きている。というか普通にユウリが操ってサジタリオンを退ける!!

 

 魔力は殆ど空だけど魔法を使えているのはおそらく、大地の魔力を使っているから。


 ユウリは修行の際、誰よりも大地の魔力を操る方法を鍛錬していた。

 

 そのおかげで自身の魔力がなくなっても魔法を使い続けられるようになったんだ。


「私はもう足でまといではないの……!!」

「やっぱり修行はまずかったか……だけどこっちも時間が欲しかった、それにエステリアに居られると面倒だった」

「そういえばサジタリオンさんは何度もエステリアへ戻って……」

「そうさ、僕達はすでにエステリアを手中に収めている!!」


 サジタリオンから明かされる衝撃の事実に私は動揺する。

 

 もうこの国がダメなんて……そんな話は全然入ってこなかった。

 

 いや、確かレインはルエリア王国は全く情報を渡さないと言っていたっけ。現状のルエリアの状況をバレないようにしていたわけね。


 過去にアナの手紙が届かなかった事があったけど、多分サジタリオンの仕業だ。

 

 予想よりも圧倒的に早く魔王教団の手が伸びていた。

 

 そしてその魔の手はさらに最悪な形で近づいてくる。サジタリオンの背後、小山の後ろからある影が現れる。

 

 それは段々近づいてきて、正体を明かす。ここへ来てサジタリオンの助っ人が現れる。


「サジタリオンよくやった。後は任せろ」

「来ましたか死星マレフィック。後は頼みます」

「小娘共が……ルーク以外は殺す!!さて蹂躙の始まりだ!!!!」

 

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