第250話 絶望の再会
色々あってルエリアに戻ることになった。
馬車で移動してルエリアとハーベストの国境付近まで来ると検問を受けるための施設が見えてくる。
ルエリアへ入国するためには国境の門番に身分を明かす必要がある。
問題が無ければ通してもらえるんだけど、私達はそこで足止めを受けていた。
身分や入国には何か問題があるといい、確認をしに行ったまま戻ってこない。
なんとなく私達を入国させたくない、そんな意思を感じ取る。
サジタリオンが門番の人に事情を聞くと言って、一旦建物の中へ入って行った。
私達は馬車に残るように言われてそのまま待機している。
不機嫌そうに地面を蹴っているフーリアを見ると、そろそろ我慢の限界なのが見て分かる。
かれこれ2時間はここで足止めを受けているからね。
「あーもうっ!どうなってるの!?」
「まあ落ち着いてフーリア!確かに時間は掛かってるけど、サジタリオンさんのお馬さんが速いおかげでいつもより早くここまで辿り着けてるんだし」
「でも今回は少し遅かったじゃない」
「前の戦いで大分お馬さんを酷使したって言ってたし仕方ないよ」
魔王教団との戦いでずっと馬を走らせていたので仕方がない……とはいえ、サジタリオンなら無理やりにでも馬を強化できたはず。
しかし馬の事を大切に想っているサジタリオンなら無理やり負担を掛ける事はしたくないんだろう。
結局、そのまま私達が待ち続ける。
フーリアが剣を使って城壁を破壊しそうな勢いで怒鳴り散らかし、それを私とショナで止める。
そしてそんな様子をお菓子でも食べながら眺めるユウリ……痩せていた身体は何故かもとに戻っていた。
後の男2人は呆れている。
そんなすっかり見慣れた日常はようやく破られる。
「ふぅ~ようやく許可が下りたよ」
サジタリオンがそう言いながら門から出てくる。
話を付けて何とか通ることを許してもらえたみたい。
魔導騎士であるサジタリオンが2時間粘って入国許可が出るって一体ルエリアで何が起こっているんだろ……。
今はそれよりも国に入ってすることを頭の中でまとめる。
アナ達が最優先で助けないといけないのでエステリアへ向かった後にバレンタインまで一直線か。
まだまだ長い旅になりそうね。
馬車に乗りながら、エステリアへ向かう道中、皆に確信しながらこれからの事を説明する。
「とりあえず、エステリアの様子を見て危なそうならアナ……ついでにクレスト王子も連れてハーベストへ逃げよう!!」
「学校は良いの?」
「私の言う危ないという状況は魔王教団の脅威に晒されている場合よ。逆にそこまで何事も無ければいいんだけど」
いつも通りのルエリアなら特に気にする必要も無く、学校再開に向けてまた学生として生活していく。
でもそれでハーベストとの戦争に巻き込まれたらどうしよう……。
ここまで来て全くの無策だった事に後悔する。
せめてもう少し考えて来るべきだったか、でも時間は無かったわけだからこれしかない。
「じゃあもし、何かあった場合はハーベストで暮らす?」
「そうなると思うけど……ショナちょっと嬉しそう?」
「え……ん~不謹慎かもしれないけど、ずっと皆と居られるのならそれは凄く嬉しいよ!!」
そんなことを言われてしまうと何も言えなくなる。
実際私だってずっと一緒に居たいし……そのためにもちゃんと見定めてこれからどうするのか考えないと!
サツキ達もひとまずは付いてきてくれるという事でしばらくはこの6人で行動できそうだ。
だが魔王教団が動いているから何事も無く終わるわけがない。
そんな不安を感じながら街に着くまで馬車に揺られている……はずだった。
エステリアの街へ着く前に馬車は急停止。直後、馬車の外から怒鳴り声が聞こえてくる。
「出てこいガキ共ッ!!」
また盗賊……?
まさかまた魔王教団の手の者か……相変わらず懲りない。
いや、この馬車は外から様子が見えないようになっている。なのにどうしてガキ共って怒鳴ったんだろう。
馬車を下りるとそこには数人の魔王教団と思われる人達に囲まれていた。厄介だけど、そこら辺の有象無象なら何とかなる。
フーリアが最初に剣を構えて、横薙ぎリに振るうと暴風を纏った斬撃を放つ。
もうすっかり達人の域に達したフーリアの剣は魔王教団を一層……。
「まだ居る!!」
風に吹き飛ばされず耐えている6人の魔王教団。
なんだか嫌な感じ……。すると一人が私の方へ向かってくる。
人数はそれぞれ一人一人ずつ、連携して戦う方が良いかもしれないけど、私達は分散させられる。
早くこの1人を倒して誰かの加勢に行こう!!
「上級炎魔法!!巨炎弾!!!!」
ルミナを失ったので前まで使っていた一部の魔法が使えなくなった、それでも元に戻っただけ。
「不死鳥の炎」と上級、超級、禁忌の炎魔法はちゃんと使える。これを駆使して戦えば倒せない敵はあまりいないはず。
しかし巨大な炎の弾は直後に消え去った。
「あれっ……!?」
私の魔法が消えた事に驚いていると、突然空が強い光を放っている事に気づく。
恐る恐る見上げるとそこには……私の発動した炎の魔法が落ちて来ようとしていた!?
魔法を移動させたのか……!!
このままだと魔法に押しつぶされる……けれどそれは普通の魔導士なら。
私は炎への耐性が圧倒的に高い魔導士、これくらいの炎なら耐えられる。むしろこの炎を利用することを考えた。
炎を受け止めることなく、そのまま自分の所に落とす。
「ルークッ!!」
サツキの叫び声が聞こえてくる。
心配してくれているのはとっても嬉しいけど、これくらいで死ぬような魔導士だと思われているのは少し残念ね。
巨大な炎が地面に落ちた事で爆炎と砂煙が舞い、視界が悪くなる。
その悪くなった視界を利用して魔王教団の人の懐まで近づいた。
あの爆炎の中、自由に動けるとは思っていなかったのか、魔王教団は驚いて一歩下がる。
その隙を逃さずに近距離で炎の初級魔法「ファイヤーバレット」を放つ。
小さい炎の弾を放つ魔法だけど、素早く、そして何発も1回で打てるので便利な魔法だ。
それを近距離で放つ事で、その魔王教団の1人の被っていたフードを焼き尽くす。
これで素顔が分かる。
誰だろうと容赦しないつもりだったのに……そこにあった顔はここに居るはずもない人物だった。
「アナ……!?」




