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第247話 対面


 ダリアに戻ってくると街の雰囲気が可笑しい事に気づく。

 

 馬車はまだダリアの街に入っていない所で止まった……馬たちがまるで近づきたくないみたい。

 

 不気味な違和感……これはまさか……!!


「地下の濃い大地の魔力が淀んでいる……?」

「馬鹿な!!そんなことこの400年間無かったはずだよ!!」


 馬車の中から街を覗き込むルーフェは先程の陽気な雰囲気が完全に消え去っていた。これはそれだけの大事だということ。

 

 そういえば紅蓮が生徒達を率いて街のどこかに居るという魔王教団を叩いているはず。

 

 その時に何か良からぬことが起きたのかな。


 だけどあの紅蓮を相手にできる人なんてそんなに居ないはず、街の中にいる魔王教団とは一体何者なの!?


「サジタリオンくんは残るの?」

「そうですね……馬が街に入れないのならこの子達の事が心配なので……」

「馬好きだね。もし何かあれば空に魔法を放って伝えてくれたまえよ」

「ありがとうございますルーフェ様。この子達の事をよろしくお願いします」

「ボクの弟子達だから、そんなのは当たり前だよ」


 女の子には目が無い変な人だけど、基本的にはいい人なんだよね。

 

 ルーフェの事を信じて私達は街に入る。

 

 門番の人には変化はなく、ルーフェの顔を見ると「ファンです!!」と声を掛けらた後に街へ入るのを許可してくれた。

 

 街の中はというと見た感じそこまで変化はない。逆にそれが不気味。


 街に入り中央広場まで歩いて向かう途中、突然レインが頭を押さえて苦しみだす。

 

 膝を付いて前屈みになり、マツバに支えられる。

 

 心配して様子を窺っていると、頭痛が引いたのかすぐに落ち着きを取り戻していく……が、その表情には全く余裕が無かった。

 

 大量の汗を掻いて、怖い目で叫ぶ!!


「まずい!地下の聖獣様が狙われている!!」

「レイン君⁉どうしてそんなことが分かるんだい?」

「聖獣様がそう俺の頭に直接……」

「クソ紅蓮の馬鹿は何をしているんだ!早く地下へ行くよ!!」


 帰って来て早々まだ何かある。


 ダリアへ戻ってくる時間は約半日で、私達は行きの時のようなはしゃぐ体力は残っていなかったので眠っていた。

 

 体力は回復したけど、馬車の中だったので程度は知れている。


 闘技場へ着くけどやっぱりそこまで何事も無く、人々は普通に過ごしている。

 

 問題があるのは地下だけみたい。誰もまだこの気配に気づいていないんだ!!

 

 今ならパニックを起こさずに問題を解決できるかもしれない。


 地下への魔法陣を起動するがレインは体調が悪い……この人数を一気に飛ばすことはできないという。

 

 なので魔法の手伝いをするけど、この魔法陣を扱える私に対して懐疑的な目をレインが向けている。

 

 そういえばこの魔法って王族にしか使えないんだっけ……。

 

 使える理由は自分でもよくわかっていなくて、ただ普通に魔法を発動しているだけなんだよね。


 ルミナの力かと思っていたけど、どうやらそういうわけでもなさそうだ。


「君は本当に不思議な子だね」

「あはは……それよりも急ぎましょう!」

「そうだね。聖獣君が無事だといいんだけど……」


 ルーフェのその言葉の後に魔法陣は効果を発動し、私達を闘技場の地下へ導いた。

 

 その直後、前方から今まで感じたことのない不気味で強大な魔力を持った人間とそれが放ったであろう魔法の存在に気づく、それにルーフェは反応して魔法で防いでくれる。


「最大防御魔法!三柱(さんはしら)ーッ!!」


 一瞬で最高峰の防御魔法を展開してその攻撃を完璧に防ぐことに成功する。

 

 しかし、ルーフェはそのたった一度の魔法で息を切らしていた。


 魔力に余裕はある……なにもダメージを負っていない、それじゃあどうしてそんなに息を切らしているのか。

 

 その理由は至極単純だった。


 それは……動揺。


「どうしてあなたが居るの!!魔王教団教祖ムーン!!!!」


 まさかこんなところで私達が相手をしている教団のボスが出てくるなんて……。

 

 月のように白く輝く美しい肌に同じく輝く髪。まつ毛が長く、眼は血のように赤く染まっている。


 どんな人かと思ったらこの世界でもトップクラスの美女だった。

 

 その美しさに騙されてはいけない……だってこいつは敵なんだから!!


「ルーフェか……予定より少し早い帰り……」

「予定……?まさか……!!」

「ふふ、誘導されていたとも知らず、紅蓮と別れて行動してくれて助かったよ」


 その言葉を聞いた後にムーンの周りを見てみるとそこには地面に膝を付いて虫の息にまで追い詰められている紅蓮と……修行で強くなった生徒達の亡骸があった。

 

 紅蓮の後ろは血の海に覆われていて直視したくない。


「確率は二分の一。よかったなルーフェ……残っていたら死んでいたのは君だ」

「まさか聖獣くんを手に入れるために……」

「ええ、あなた達二人が揃うと勝ち目がない。あなたの魔法と紅蓮の剣……それはこの世界の何者も突破できないほどに強固だからね」

「……」

「だけど、1つずつなら少し強い程度、この私の敵ではない」

「ルークちゃんここは逃げて応援を呼んでくるんだ」


 ルーフェは自分が勝てるとは思っていないのかそんなことを言い出す。


 あの自信満々の人が勝てないと即時判断するような相手……。

 

 だけどそれはわかる気がする。ムーンの放つ魔力は底が知れず、近くにいるだけで飲み込まれてしまいそうな……。

 

 逃げたいけど逃げられるのだろうか?


 そんなことを考えていると聖獣のサンが傷つきながらも立ち上がる。


「そんなに我が力が欲しいかムーン」

「ええ、あなたが居ないと魔導王様の使いが力を発揮できないの」

「……だったらくれてやる」

「あら?言っておくけどそんなことをしてもこの子達は見逃さないわよ」

「できればこの手は使いたくなかった。しかし我が主が危険に去らされるよりはマシだ!!」


 サンが光輝くとその光はムーンに流れていく。まるでルミナが力を貸してくれた時のように……。

 

 しかしその瞬間ムーンの魔力が少し減った。

 

 そして邪悪な魔力は浄化される。


「なるほどただでは力は貸さんか……。まあいい少し引き延ばしになるだけだ」

「まさかここからボクを相手に逃げられるとでも思ってるのかい」

 

 こうなってしまうと魔力はルーフェの方が上、ここで捕えられれば全ての問題が片付く。


 それにしてもサンは一瞬だけ私にも力をほんの少しだけ分けてくれた。

 

 いつもの神様に会える奴……なんだけど、今回は意識が飛ばなかった。


 失敗したのかな……。

 

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