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第236話 思惑と願い


 話はルーク達の修行の時期まで遡る。

 

 魔王教団の総本山があるアマノの国。

 

 ルーク達が修行のためにハーベスト帝国の中央都市ダリアへ向かっている現在、その国ではまさに戦争が起きようとしていました。

 

 戦争の内容はアマノ政府VS魔王教団の……内乱です。

 

 アマノにはこの世界のほぼすべての魔導騎士(エーテルナイト)がいる。

 

 ただでさえ最高戦力が揃う国の内乱。

 

 しかし、アマノの国の政府はとっても強力な力を有しています。

 

 なぜなら、敵である神達が寄越した異世界からの転生者が集まっています。


 魔導王と呼ばれる神が生きた人間を殺して、この世界へ生まれ変わらせたのに対して神達は異世界で死の運命を辿った善人を選んで生まれ変わらせました。


 善人を選んでいるのは裏切られないようにするため、実際のところ誰一人として魔王教団に寝返ることはありません。

 

 魔導王は既に彼をこの世界へ転生させてしまい、力をほとんど使ってしまいました。


 生きた人間を殺して無理やり別の世界へ転生させるのは許されざる行為。

 

 その禁忌を犯すのに女神としての力のほとんどを使ってしまいました。

 

 それは他の女神が邪魔をしてきたから……。この魔導王がそんなことが出来たのは魔法の神様でもあるからです。


 魔法の神はその名の通りで魔法を想像し、異世界に居た……たった一人の自分の存在を信じてくれた男の子に惚れていました。

 

 そんな理由で連れてこられた彼……いや今は彼女もまたこの戦争とは無関係ではありません。


 この戦いでアマノの国を魔王教団が手に入れるのが教祖ムーンの目的。

 

 しかし善人の転生してきた子達は凄まじい力を与えられています。

 

 一方で、魔導王を盲信する魔王教団の子達はその転生者の子供ばかり、女神の力は転生者のみに与えられるのでこの子達は転生者の燃えカスとアマノの一部の人からは言われています。

 

 それでは常に転生者を送り込まれているアマノ政府には勝てません。

 

 そこで魔導王はあの薬の製造法方を魔王教団に信託として伝えました。信者が多くなれば多くなるほど神の力は強くなる。


 これから開戦という所で教祖ムーンが団員達の前に現れました。

 

「さぁみなさん。月は満ちました。我らが主、魔導王様の復活のためにアマノの国を手に入れましょう!!」


「ムーン様ー!!」

「魔導王様万歳ー!!」


 その光景にムーンは胸を躍らせていた。

 

 自分に付いてきてくれるその燃えカス達を哀れに思いながら、不敵な笑みを浮かべます。

 

 ――


 アマノの国を導く者達は来たる災厄に備えて戦いの準備をしていた。


「ついにムーンが襲ってくるのか」

「タイヨウ様。いかがなさいますか?」

「あの馬鹿を産んだ責任は私にある。必ずこの落とし前はつけるさ」

「そんな……タイヨウ様はよくやっておられます。900年という長い時間を一人で支えて……それに今のムーン様は……」


 アマノの国を約900年間支えてきたタイヨウ王は自分の哀れな娘との全面戦争にため息を付きます。

 

 自分勝手な馬鹿女神に殺されてこの世界へ転生してきた青年、彼を女神の手に渡さないためにと最初に神達がこの世界へ送り込んだ転生者。

 

 彼には不老不死の女神の力を与えました。

 

 そのお陰で彼は現在まで行き長らえています。

 

 しかしそれも1000年間の間のみ。


 1000年後には女神は次の世界を作らなくてはいけません。そのため、神たちがこの世界へかけられる時間には限りがあります。


 この特異な体質もそれで終わります。

 

 しかしそれは彼を無理矢理転生させた悪い女神も同じ。

 

 1000年後に女神が世界へ干渉できなくなる。残り84年ですが、ついに魔王教団が動き出しました。


 そのためにはより多くの転生者をこの世界へ送らなければなりません。

 

 ”この残り100年を担当する剣の女神として最後の役目を成し遂げなければ!!”


「そういえば、風の噂で聞いたのですが」

「なんだ?」

「再びルークの名を持つ女の子が生まれてきたと」

「女の子……?」

「はい、名前は男性のものなので変ですよね」

「……」

「タイヨウ様?」


 残念ながら連れ去れた彼の転生のタイミングは悪い女神が握っています。女の子にするのも男の子にするのも勝手。

 

 どうして前の世界で神なのに愛してしまった男性を女の子に転生させたのか、タイヨウは考えました。これはフェイクなのか、あるいは狙いがあるのかを……。

 

 タイヨウは少し考えた末に彼女が今のアマノの国に必要な子だと判断しました。


「そう、その子は連れてこられるか?」

「それが現在ハーベスト帝国にいるとルーフェ殿から聞いています」

「ほう」

「さらにルーク様とその仲間の子達を鍛えるためにルーフェ様と紅蓮様の下へ向かっていると」

「あの二人に鍛えてもらえるのなら心強いが、そうなると戦争開始時に彼らの力も借りられないか」

「どうなさいますか?」

「決まっている。魔王教団の横暴を止める……できればルークの保護をしたいが……星の導きに逆らうわけにはいかない……最後は彼女の選択に任せなさい」

「タイヨウ様!後――そのルーフェ殿からの手紙を預かっております」

「置いておいてくれ、もう下がっていいぞ」

「はっ!」

 

 タイヨウは伝達役の子にそう伝えると部屋から出ていくのを確認して、部屋の窓へ近づいていく。


 空を見上げ、儚げな表情をしています。

 

 タイヨウは生前の青年の顔を何度も思い出しながら、呟く――


「また会えるのだな……ルーク……ッ!!」

 

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