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第235話 争いの前の静かな夜


 頭が痛い……ズキンズキンと内側からまるで針が頭蓋骨を刺しているかのような不快な感覚に襲われると私は目を覚ました。


「うっ」


 頭を抑えながら重い上半身を起こす。


 身体に力が入らないのもそうだれど、重い理由は他にあった。


 それは服が濡れて水を吸収していたから、あのとき私達はどうやら川に投げ出されたみたい。


 あの赤い髪の女性がやったんだろうけど、なにをされたのか全くわからなかった。


 ルーフェですら浮遊魔法中に妨害されるほど……川へだけ投げ出されたのは幸運だったかもね。


 そのおかげで私は星の欠片に捕まることなく、自由に行動が出来る。

 

 捕まるよりはマシだと言い聞かせて濡れて重たい服のまま立ち上がる。視界が悪くてよく見えない……立ち上がってみんなを探さないとっ!


 と、思った次の瞬間。


 すでに目を覚まし、辺りを散策していたのかサツキとばったり目が会う――と思ったら、その視線は本の少しだけ下へ向く。


「な、なななななななな!本当にごめん!!」

「何が?」

「いや、服透けてるから……」

「あー、けど回りに皆いないし、サツキは元女の子でしょ?前世はだけど……」

「そ、そうだが……」

「じゃあ私と同じで別に興奮とかもしないでしょ」

「……」


 あれ、なんだこの反応……。

 

 私はこのルークとしては男性のアレをみた記憶はない。見る予定だってない。

 

 それは99%そんなものを見ても興奮しない自身があるからだ。前世が男性だったので普通に嫌だという気持ちが大きい。


 なので逆のパターンでも似たサツキなら特になんとも思わないと鷹を括っていたんだけど……。


「ざ、残念だけど男の身体って……全然違うから……」

「……」


 と、とりあえず……炎の魔法で服を乾かそう……。私は大人なのでこんな事では焦らない……うん。

 

 服が乾くと気まずい空気が少しだけ和らいでサツキも近づいてくる。

 

 フーリア達を探すことが優先だったんだけど、これは仕方がない。


 私にだって恥じらいはある……見られても正直あまりなんともおもないけど、友達がそういう感情になるのはちょっと恥ずかしい……。

 

 私がこんなとこで動じているとは思われないように澄ました表情を絶えさないように意識した。


 てかどうして私はそんなことを意識しなきゃいけないんだろ……。


 そんな馬鹿馬鹿しい事を考えているとサツキは安心した様子を見せる。

 

「それにしても無事でよかった」

「え……?」

「川へ投げ出されたときにすごい水の勢いで君しか助けられなかったんだ」

「え……じゃあフーリア達は!?」

「わからない……だけどあの子達は強い。そう簡単に捕まらないだろう」

「それは……」

「だけど早く探しにいくべきだ。君が目を覚ますまでずっと待ってたんだ」

「なるほど……うん?」


 ずっと待っていたって言うことは私がずぶ濡れの状態だと知っていたわけだよね?

 

 そもそも助けたのなら直にそれを見られている可能性が高く……。

 

 これ以上考えるのはやめておこう……最悪ルーフェに記憶を消す魔法を教えてもらおう。


 それよりももっと重要な事が気になっていた。

 

「さっきどこへ行っていたの?」

「あー水を飲んじゃったからかな……ト、トイレに……ね」

「そう……」


 うん、これ以上は聞かないでおこう。


 やろうと思えば臭いも追えるけれど、それは前世が男だった私の心がやめろと訴えてくる。

 

 なので自制してまずはフーリア達を探さないと。

 

 ……はぁ、お馬鹿な事に気を張りすぎてしまった。


 無駄な事は後回し!!考えを整理しないと……辺りを見回し、私はあることをに気づく。それはここがハーベストではないということ。

 

 若干国の雰囲気が違う気がする。


「ここどこ……?」

「ここはアマノの国だよ」

「なんでサツキがそんなことを……?」

「なんでって俺がこの世界へ転生したのがこの場所だからだよ」


 そっか、サツキも私と同じで前世の記憶持ちの転生者。

 

 どこがで絶対に生まれているわけだもんね。

 

 不思議な話ではない……これはむしろ運がいいよね!

 

 だってこの国の地理をある程度理解している人がいれば探し物も少しは楽になる。


 ハーベストに近いのに景色が全然違う。


 綺麗な風景、恐らく私たちが流されて行き着いたんだろう。川の綺麗な音、それ以外は冬なので動物がほとんどいなくて、恐ろしいほどに静か。

 

 そして何より溢れんばかりの大地の魔力……!!


 すぐとなりのハーベストの山は魔王教団のせいで最悪なことになっているというのにここはその影響を全く受けていない。

 

 これはこの土地ならではの影響なのか、はたまた他になにか理由があるか……あるとすれば間違えなく聖獣だろう。


「とりあえず川を下ろう」

「下ったらハーベストだよ?」

「……俺たちがここへ来た目的は身体を休めて万全な状態でアポカリプスへ挑むことだが」

「皆いないなら意味ないよね?」

「だけど確かにルークも大分疲れているな?悠長かもしれないがここは一旦、野宿にもでするか」

「フーリア達は……?」

「さっきも言ったけどあの子達が簡単にやられるとは思えない。それに万全の状態じゃないから、このまま迂闊に動くのは危険。周りを見た感じ魔物も盗賊も居なかったここは安全だよ」


 特に今の私は水を飲みすぎてしまったのか身体がだるい。


 綺麗な川の水だけど、気絶している間にたくさん摂取してしまったはず、その影響かちょっと気分が悪い。

 

 ここはサツキの言葉に甘える事にした。

 

 私とサツキは短い夜を共に過ごした……もちろん変な事は何もなく……!!!


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