第229話 修行の試練
さらに修行の期間は一ヶ月ほど続き、3月へ。
ルーフェの教えでさらに私たちは強くなった。
魔力量の増加、魔法に対しての知恵、魔法を使った戦い方、スイレンの皆は全体的にレベルが上がった。
元々魔法をたくさん知っていて得意じゃない魔法でも上級程度なら使える私は、ルーフェと同じような戦いを身に付ける事が出来た。
相手の魔力を感知して、同じ魔法を同じ出力で放出する。
まさか自分にその技術が備わるとは想像もしなかった。
案外やってみるとできるものでコツを掴めばなんとか全属性の上級魔法まではカバーできる。
この戦い方は個人的に好きじゃないんだけど、相手の魔力を図ったり、戦いの最中不意打ちを食らっても反射的に同じ魔法で返すことができるようになるので習得しておいて損はない。
「やっぱり君が一番ボクに近づいたね」
「あ、ありがとうございます……でもそれはあなたが私にだけその特訓をさせたからで――」
「いいじゃないか。同じ技術を共有できる人が欲しかったし、まあさすがに魔法の知恵ではこのボクには敵わないけれど!」
「ルーフェさんの知恵は範囲が広すぎます。どうやってそこまで身に付けたんですか?」
「……」
ルーフェは見た目は幼いけれど、本当は40歳を越えているという。
まさかの前世の私と今の私の生きた年数を会わせても届かない数値だった。見た目が中学生くらいの少女だから最初に聞いたときは驚いた。
魔法で若さを保っているらしく老化を防いでいるという。ちなみにその魔法も教わった。
というかルーフェは女子生徒にだけ見た目だけ若く保つ魔法を優先的に教え、習得しないなら修行を止めると言い出した……どうしてそこまでこの魔法を私達に使わせたいのか……その理由は――
「若い子の身体はみずみずしいし触り心地抜群だからね」
「男性には教えないんですね」
「男はむしろ年を取る方が魅力的だと思うよ?それに男の身体は触るつもり無いし」
「最後の方が本音ですよね?」
最初の方は言わんとすることはわからなくもないけど、女の子にしか興味のないルーフェなら仕方ない。
「変態ね」
そんな私とルーフェの会話を剣術の稽古をしているはずのフーリアが聞いていて、割って入ってくる。
「おや?フーリアちゃん、おじさんの紅蓮の剣術教室は終わったのかな?」
「稽古よ。そんな子供っぽいものじゃない」
「子供じゃない?君はまだまだ大人の世界を知らないよね?ボクが教えてあげようか?」
「遠慮しておくわ」
「それなら……ルークちゃんも一緒ならどう?」
「それだけは絶対にやめて!!」
フーリアは私には抱かれたくないっていう遠回しの言葉?
女の子同士なので仕方ないけど、ちょっと傷ついた。前世の記憶が少しだけある私は男性も女性もどちらもそんな目で見ることができない。
なのでルーフェの誘いもお断りなので否定してくれる分にはありがたいんだけどね。
それにフーリアはどちらかというと妹みたいな存在だから特にそう言う欲望が湧かない。そのことを伝えておけば少しは安心するのだろうか?
そんなことを考えて居ると――ルーフェは不敵な笑みを浮かべてフーリアに問いかける。
「一緒は嫌かそれなら、君のあとにルークちゃんをいただくのはどう?君が最初でいいよ」
「最初……」
なぜかその言葉に対して即否定せず、むしろフーリアは私のことを舐め回すような視線を向けてくる。
やばい、少しだけ寒気がした。
もしかして私のそういうところで弱い部分を見たいとか?だとしてもなんか怖い!!
ずっとフーリアの前では強く見せていた……だからこそそんな人の弱い部分を見たいと考えるのは自然か!?
「ってダメよ!最初どころかその後も誰にもあげないわ!!」
「……君の愛は重いね。依存させるのは好みじゃないんだよね。面倒くさいし、だからまあ頑張って」
「どうしてそこでルークを見るのよ」
「なんとなくだよ。それより紅蓮の稽古は?」
なんだか下ネタの話で盛り上がってしまったんだけど、フーリアが稽古を終えたのか気になる。
こんな無駄な話し合いのために抜けてきたなんてありえないからね。
また紅蓮になにか言われたのかと心配になってしまう。
「稽古は全て終わりだルーフェ」
「おじさんの紅蓮!今日も老けてるね」
「老けない老人に言われたくない。それに俺はまだ30代前半だ」
紅蓮も貫禄のある顔をしていて、身体もゴツゴツなんだけど、それでもまだ30代だったのか!!
40は行っていると思っていた。
2人の会話は今後の私たちに関わることだった。というかこの修行の終わりを示唆している。
たくさんの教えをもらい、後半はほとんど実践しかやってこなかったんだけど、それはもう教えることがほとんどなかったわけか。
後は経験を積ませることで強くしようという魂胆だったみたい。
しかしルーフェはあまり満足が行っていない様子を見せている。どうやらもう少し鍛えたいと考えていてくれたみたい。
「もう少しこの子達と触れ合いたかったのにぃ~!!」
まともな理由で引き留めようとしてくれていた訳じゃなかった。
私達の学校が近いうちに始まるのでどちらにしても帰らないといけない。ルエリアへは度々サジタリオンが帰っているみたいで特に変化はないとレイン王子を伝って聞いている。
見学に何度も来ているレインはそういうことまで教えてくれた。案外面倒見のいい人でずっと助けられてばかりだ。
「あれー?もう今日だっけ?」
「ああ、お前達、これから最後の稽古を始める」
「試練だよ紅蓮。お稽古なんて言う可愛いモノじゃないだろう?」
その言葉を聞いて気を緩めていた私たちは意識を引き締める。
この修行の鍛練の結果、30人残ったはずなのに、最終日の今日には既に18人にまで人数を減らしていた。
それだけこの修行は大変で残ったほぼ全員は稽古を始めると言う言葉を聞いて嫌な顔をする前に身構えるようになった。
当然疲れていたりやりたくない時期もあった。女の子だと尚更1ヶ月の間に身体を動かしたくない日が続くがそれもお構い無しという。
しかしついにその修行が終わる!!
そして明かされるその試練の内容は――
「最後の稽古……いや試練の内容は……魔王教団の殲滅だ」




