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第228話 最強魔導士の修行


 アポカリプスが襲ってきた日から修行の期間が1週間続いた。


 最高峰の修行だけあって、このルミナと一体化した身体でも相当苦労した。大地の魔力の使い方、沢山魔法を覚えさせられて、ルーフェともタイマンで戦った。

 

 結果は27戦2勝25敗という自信を無くしてしまうような結果。


 この妖狐の身体でたったの2勝……それも向こうは全力じゃないという。2勝出来た理由は最初の時にバレンタインの炎の魔法を使った。

 

 あれだけは知っていても使えないから、不意打ちのような形で勝利をもぎ取った……けれど、それ以降は魔力の差で押し切られる。もう1勝はこの妖狐の高い身体能力だけで襲ったら手も足も出なかった。


 だけど魔導士なら魔法を使えということで力でねじ伏せるのは禁止になった。

  

 これでもこの妖狐の身体は日に日に力を増している。いずれは勝てるかもしれないけど……それは私が人ではなくなるということ。


 今日もまた、ルーフェとのタイマンの試合が始まる。


「さて、そろそろ強くなってよルークちゃん」

「……」


 一切の警戒心を私に向けないルーフェ……見た感じ隙だらけでタイミングをズラして攻撃を仕掛ければ簡単に引っかかりそうなのに、まるで勝てる気がしない。

 

 詠唱無しの速攻で私はいつも通り炎の魔法を放つ!!


「焔火ッ!!」

「……焔火」


 私の得意魔法である「炎帝」それを完全に模倣されてしまい、どれだけ不意打ちをしても同じ力で返される。

 

 魔力の感知が異常に優れていて、魔法を発動する兆候に気づいて、魔力を調整して私と同じ魔法を使う。

 

 何度も同じ魔法、同じ手で来られてルーフェは飽きて居る様子。それこそが彼女の隙になる!!

 

 今日私は試してみようと考えて居たある方法をぶっつけ本番でやることにした。炎帝の魔法をバレンタインの血筋しか使えない「不死鳥の炎」へ変える。

 

 あえて「炎帝」の威力を下げて「不死鳥の炎」の威力の方が勝るように調整してある。


 ルーフェは同じ魔力量で同じ魔法を使うから、予想外の不意打ちになるはず!!


 炎が血のような赤からピンクに変化した瞬間、ルーフェは何かに気づいた様子を見せる。するとルーフェが放った炎の魔法へ魔力を注ぎ始める。

 

 私が「炎帝」から「不死鳥」へ変化させた魔力量と同じ位だ。


「これは、固有魔法だね。それも使えないんだけど……それならこれで終わるよ!」


 ルーフェは「炎帝」の魔法のまま、威力を上げた。

 

 結果、ただでさえ威力では「炎帝」に劣る「不死鳥の炎」だと勝てない。


 そしてルーフェの炎が私の炎を包み込み、そのまま直撃してくる。

 炎の魔法はどれだけ強力でも痛くもかゆくも熱くも無い……それを分かっているからか、容赦ない。


「良い身体を持ったね。炎への完全耐性と言った所か……ボクの炎に飲み込まれても平気なんて……さて、炎に食べられた後は次はボクが食べる番!文字通り直接――」


 炎で死なないと分かっているから出力だけは全力を出してくれる……それだけ期待されている。そう思う事にしよう。


 私を如何わしい意味で食べようとするルーフェの顔面を抑えて、私の身体に触れさせないようにする。

 

 古今東西全ての魔法を使える最強魔導士ルーフェ……やっぱり別格の魔力とセンス。

 しかし同時に私はある違和感を感じていた……それは――

 

「最初の頃、私の魔法はご存じではなかったんですか?」

「この修行の最初の話だね。何でも魔法なら同じ動作をする癖が付いていてね。君の固有魔法も使えるだろうと高を括っていたのは確かさ」

「全ての魔法を例外なく使えると思っていました」

「まさか、ボクが使えない魔法の種類は多いよ?先程の固有魔法を始め、巻物に魔法陣がかかれた魔法は使えないんだ」

「逆にそれ以外は?」

「全てを使える。限定的な魔法以外ならね」


 十分すぎるくらいね。固有魔法なんてあまり見ないし、物に魔法を宿したものなんてあまり使わない。戦う分にはまったくと言っていいほど手札が豊富だ。

 

 だけどなんだか引っ掛かるんだよね。


 疑問は残るけど、今は模擬戦の最中だから思考をそこまでに留める。

 

 しかしその後は普通に負けた。炎の魔法でならいい勝負をするんだけど、水や風魔法を使われてしまうともうどうしようもなかった。ようやくというか今さらだけど、やっぱり苦手な魔法を克服しないとダメね。


「あ、ありがとうございました」

「ん、可愛い女の子への稽古はやっぱりいいね。いつでもおいでよ……もちろんベッドでもいいよ」

「あはは、遠慮しておきます」

「それは残念、前の子は来てくれたのに」


 もしかして試験の時にあられもない姿になってしまった女の子のことだろうか。


 有名人で圧倒的な人気者だからこそ許される特権か……やっぱりなにかしたのかな。

 

 あまり近づかないと言うか、フーリア達には近づかせないようにしないとね。いつ手を出されるかわかったものじゃない。

 

 男だけじゃなくてこういう変態にも気を付ける……これは私の役目だからね!!


 そんなこんなで修行は続いていく。


 ちなみに修行中はみんな泊まり込みだ。

 

 広場の大自然の芝生の上にそのまま寝ている。みんなが最初、屋敷へ戻っていなかったのはこれのせい。

 

 こんなベッドもない場所で寝られるのかと聞かれたら以外にも快適だった。


 魔法で広場の天井に膜があって、それが雨や音を防ぐ。近くにある建物は倉庫だけで人目を気にすることはない。食事はその倉庫に詰められていて、トイレは別の倉庫で行う。

 

 広場なので普段は人の出入りがあるみたいだけど、今だけ制限されていて本当に人は私たちだけ。


 一日の修行を終えると毎度日が沈んでいて夜だ。


 そんな夜空を見上げながらふかふかの芝生で寝るのは最高でこれだけはこの修行唯一の娯楽だった。ルーフェは夜空に浮かぶ星々を見上げて、手を伸ばす。

 

 そしてそのまままるで星を握りつぶすかのように指を折りたたむ。

 

「この美しい夜空のようにただ輝いているだけなら……ボクも許したんだけどねムーン」


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